強烈なインパクトを与えたデビュー曲

PUFFY「アジアの純真」井上陽水が歌詞に込めた意味とは?の画像

1996年に奥田民生のプロデュースで鮮烈なデビューを果たし、2000年代には放送されたアニメの影響でアメリカでも人気を博したPUFFY

彼女たちのデビュー曲「アジアの純真」は井上陽水による作詞です。

彼の作品によく見られるように韻を踏んだ言葉の並べられた歌詞は不思議なテイストを醸し、PUFFYのデビューを強烈に印象づけた要因のひとつとも言えるでしょう。

軽快な曲調も相まって、意味はよくわからなくとも口ずさみたくなる、そんな歌ではないでしょうか。

音楽性はもちろん、ゆるく親しみやすいキャラクターで、デビューから20年が経過した今もなお多くのファンに愛される彼女たちのデビュー曲に今一度、注目してみたいと思います。

語感の良い歌詞、その意味

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語感の良さの真相?

北京 ベルリン ダブリン リベリア
束になって 輪になって
イラン アフガン 聴かせて バラライカ

出典: アジアの純真/作詞:井上陽水 作曲:奥田民生

歌の出だしには地名がずらりと並んでいます。

北京、ベルリン、ダブリン、リベリア、次にイラン、アフガンと、いずれも歴史的に重大な事件、紛争の起きている場所です。

なので、なにか重要な意味があるのでは? と考えてしまってもおかしくはありません。

ですが、2016年のラジオ番組で、奥田民生のデモテープでの鼻歌を井上陽水が聴いてみると「北京ベルリン……」に聞こえたと作詞の井上陽水本人が語っていた、と同番組の水曜パートナーである博多大吉が語ったそうです。

6月1日に放送されたTBSラジオ『たまむすび』で水曜パートナーの博多大吉が、井上陽水から聞いたあるヒット曲にまつわるエピソードについて語り、話題を呼んでいる。 井上陽水と博多大吉、さらに赤江珠緒も参加し陽水の知っている店に行った3人。大吉はその席で「ここはもう、陽水先輩にいろいろ訊いても失礼にならないん

言われてみると、北京、ベルリン、リベリア、イラン、アフガンという5つの都市や地域はいずれも1970年代以降に事件・紛争が起きているのに対し、ダブリンは1920年代に植民地から自治領となり、1940年代には独立を果たしますが、この頃にはずいぶんと情勢は落ち着いているようです。

自治領となる以前には激しい紛争・蜂起が起きていましたが、並べられた他の都市・地域に比べるとやや年代をさかのぼることとなります。

鼻歌がそう聞こえたから採用したという言葉のとおり、これらの地名が使われたことに深い意味はないのでしょう。

歌詞に意味はないのか

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とはいえ、完全に語感のみで歌詞に意味はないのでしょうか。

後付け、とまでは言いませんが、他の部分を作っていく中で何かしらの意味を含め、繋いでいったという可能性がゼロだとは言い切れません。

語感のみで偶然に導かれた都市名・国名ですが、そこにあえて意味を持たせた可能性は十分にあるでしょう。

歌詞の冒頭、地名の部分以外には「束になって 輪になって」、そして「聴かせてバラライカ」とありました。

バラライカとはロシアの弦楽器です。

結束して、輪になって、そしてバラライカの音を聴かせてとなると、踊りでも踊るのでしょうか。

つらい過去のあったひとたちもみんな手を取り合い、音楽に乗って踊りだそうと誘っているように思えませんか。

国民のひとりひとりが世界と繋がっていく時代の幕開け

美人 アリラン ガムラン ラザニア
マウスだって キーになって
気分 イレブン アクセス 試そうか

出典: アジアの純真/作詞:井上陽水 作曲:奥田民生

アリランとは朝鮮民謡のひとつ、ガムランはインドネシアの民族音楽の総称です。

そしてラザニアはイタリアのパスタ料理です。

マウスは「パソコンの」ということでしょう。

キーも同じく「パソコンの」という意味ととることができますが、そのまま「カギ」として考えることができるかもしれません。

イレブンとその次の「アクセス試そうか」が繋がるとするなら、夜11時。

「アジアの純真」発売当時は夜11時以降に通信料金が月極の一定料金となるサービスがあったというので、そのサービスを利用してパソコンでインターネットにアクセスしてみようという意味なのでしょう。

朝鮮のアリランも、インドネシアのガムランも、イタリアのラザニアだってインターネットによって身近に感じられる世の中です。

音楽だけでなく「美人」「ラザニア」が並んでいるのは前述したように語感から来たものでしょうが、「ラザニア」は異国の文化、「美人」は少し遠い存在として考えてみてもいいかもしれません。

そうして世界と繋がる「キー(カギ)」となるのがパソコンのマウスです。

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開けドアー
今はもう
流れでたら アジア

出典: アジアの純真/作詞:井上陽水 作曲:奥田民生

カギを使って扉を開けてしまえば、もうそこにはアジアが広がっています。

情報の世界ではほんの少し踏み出すだけで、日本という国を出ることができますよね。

その外にはアジアが、そしてそのアジアは世界に繋がっています。

目の前の機械を少しいじるだけで世界を感じることができる、そんな時代を象徴する詩です。

白のパンダを どれでも 全部並べて
ピュアなハートが 夜空で
弾け飛びそうに 輝いている
火花のように

出典: アジアの純真/作詞:井上陽水 作曲:奥田民生