歌詞の主人公は「君」との会話を思い出しています。

どうやらとても若かった頃の話のようです。

未来へ漠然と不安を抱いている自分に対して、「君」は「自分で道を切り開いていくんだよ」とでも言いたげ。

主人公はまっすぐな「君」に対して劣等感を抱いているような印象を受けます。

もうピアノを弾かなくなってもついつい弾く真似をしてしまう主人公。

音楽と距離を置いたはずなのですが…

「君」から「音楽が嫌いなんでしょ。」という意味合いの言葉を投げかけられると、何も返せずに黙り込んでしまいます。

音楽に対しての気持ちは、愛憎半ばする複雑なものを抱いているようです。

自分のせいじゃないはず

心の中に一つ線を引いても
どうしても消えなかった 今更なんだから
なぁ、もう思い出すな

間違ってるんだよ
わかってないよ、あんたら人間も
本当も愛も世界も苦しさも人生もどうでもいいよ
正しいかどうか知りたいのだって防衛本能だ
考えたんだ あんたのせいだ

出典: だから僕は音楽を辞めた/作詞:n-buna 作曲:n-buna

「君」から痛いところを突かれた過去を辛い思い出として記憶している主人公。

思い出してしまうと古傷が痛むようで、苦しんでいるような歌詞が続きます。

苦しみの果てに彼がたどり着いたのは「責任転換」という、とても褒められない手段です。

音楽を辞めてしまったことを後悔している彼は、そうなってしまったのは自分のせいではないと主張するのです。

音楽を続けることが果たして良いことかどうか悩んでいたのでしょう。

「やめなければよかったのに」と言う無神経な言葉を言う人もいたのかもしれません。

それに対して「何も知らないくせに」と腹を立てている様子です。

ここで責めている「あんた」とはおそらく冒頭の歌詞に出てきた「君」のこと。

自分とは違い、音楽を辞めなかったことに対して理不尽な怒りをぶつけています。

きっと君のことを意識するあまり、音楽を止めてしまった部分も主人公にはあるのでしょう。

何もしていない現実

考えたってわからないが、本当に年老いたくないんだ
いつか死んだらって思うだけで胸が空っぽになるんだ
将来何してるだろうって
大人になったらわかったよ
何もしてないさ

幸せな顔した人が憎いのはどう割り切ったらいいんだ
満たされない頭の奥の化け物みたいな劣等感

出典: だから僕は音楽を辞めた/作詞:n-buna 作曲:n-buna

この部分では主人公の現在の状況や気持ちが克明にうたわれています。

将来のことを話した過去を回想すると、苦しくなるほど今の状態には満足していません。

はっきりと「自分は不幸である」と思っているようです。

さらに未来への希望も失っており、先のことを考えると暗い想像ばかり。

何の罪もないただ楽しそうにしているだけの人が憎らしく思える…

そんなどうしようもないドロドロとした気持ちを抱えて鬱屈しています。

読むだけでこちらも胸が苦しくなってくる歌詞ですね。

自問自答を繰り返す

音楽を辞めたことの理由を並べている

間違ってないよ
なぁ、何だかんだあんたら人間だ
愛も救いも優しさも根拠がないなんて気味が悪いよ
ラブソングなんかが痛いのだって防衛本能だ
どうでもいいか あんたのせいだ

考えたってわからないし
生きてるだけでも苦しいし
音楽とか儲からないし
歌詞とか適当でもいいよ
どうでもいいんだ

間違ってないだろ
間違ってないよな

出典: だから僕は音楽を辞めた/作詞:n-buna 作曲:n-buna

もはや、ただ日々を過ごしているだけで鬱々とした状態の主人公 。

人から受け取る無条件の好意に対しても、素直に受け取ることができなくなっているようです。

「自分に優しくするのは何か理由があるんだろう」と疑う心をもつようになってしまったのでしょうか。

ここで改めて音楽を辞めた理由を並べています。

「音楽なんて所詮、娯楽だし」と身も蓋もないことを言い出しそうですね(笑)

きっと辞めてしまったことへの後悔があるから、こういった言葉が出てくるのでしょう。

自問自答してなんとか自分を納得させようとしている苦し紛れなのが伺えます。

最後にやっと本当の理由が…

間違ってるんだよ わかってるんだ
あんたら人間も
本当も愛も救いも優しさも人生もどうでもいいんだ
正しい答えが言えないのだって防衛本能だ
どうでもいいや あんたのせいだ

僕だって信念があった
今じゃ塵みたいな想いだ
何度でも君を書いた
売れることこそがどうでもよかったんだ
本当だ 本当なんだ 昔はそうだった

だから僕は音楽を辞めた

出典: だから僕は音楽を辞めた/作詞:n-buna 作曲:n-buna

これまで人のせいにして、自分の気持ちをごまかしていた主人公ですが、ここで本音を漏らします。

私の彼は利益のために音楽を作っていたわけではないようです。

しかし何も利益を生まずに音楽を作り続けることは難しかったのではないでしょうか。

自分のポリシーを貫けなかったことに対して絶望し、「だから僕は音楽を辞めた」と言っているのです。

なんとも切ない理由ですね。

この経験は、彼が他人に対して不信感を抱く原因にもなったのではないでしょうか。

最後に

音楽を愛するがゆえに挫折してしまった主人公