あなたにとって、二つとないもの、一つしかないものは何でしょう。
それはきっと、あなたの世界です。
一人一人が持つ、自分自身の世界。
それは誰にも伝わらず誰も見ることのできない、その人だけのものです。
同時に、誰かとの関係性の中で築かれる世界も、唯一無二のものです。
人の数だけ、関係の数だけ、世界があります。
「%」とは割合。
あなたの世界は、この世界のどれくらいを占めているのでしょうか。
自分の物語として聴ける
彼らの楽曲には、物語があります。だからといって歌詞が説明的なわけでありません。
説明的でない分、リスナー自身が自分の気持ちを重ねて聞くことができるのですね。
ベースとなるストーリーがあり、そのストーリーの世界を曲と歌詞で表現する。
それはまるで、役者がいてセリフがあって映像がある、映画のようです。
繰り返しの力強さ~2番~
パッとしないこの世界を変えよう
紙とペンでは物足りぬような
素晴らしい世界があるはず
何もないことを分かっているのに
何もないことを嘆いでいるのに
つまらないものが邪魔をする
出典: %/作詞:武市和希 作曲:mol-74
2番の歌詞には、1番の歌詞とおなじフレーズが繰り返されています。
軽快なメロディと力強い歌詞がリスナーの記憶に残ります。
ふとした瞬間につい口ずさんでしまいそう。
「何もないこと」こそが平穏であるはず。
なのに「嘆いて」しまうのは、言葉にすることももどかしいような何かへの強い憧れがあるから。
自分にとっての「素晴らしい世界」って何だろう…と思いをはせてしまいます。
そして一歩踏み出す~エンディング~
二つとない
一つしかない
僕らが描き始めたもの
二つとない
一つしかない
君にしか見えない、聞こえないもの
パッとしないこの世界を変えよう
紙とペンでは描けないような
素晴らしい世界が待っている
出典: %/作詞:武市和希 作曲:mol-74
ここからの歌詞は、1番やサビの繰り返しになります。
しかし、少しだけ、でも大きく違う箇所があります。
それは、一番最後のワンフレーズ「素晴らしい世界が待っている」。
これまでは、「素晴らしい世界が待っているはず」だったのに、「はず」がなくなっています。
ここに、一歩踏み出す決意を感じることができます。
実際、この楽曲を作るにあたってこれまでの曲調と雰囲気が違うので本人にもメンバーにも戸惑いがありました。
でも、変わっていくことも大切だ、ということでできたのがこの歌だそう。
これによって聞く人にも、勇気を与えてくれるような楽曲になっていますね。
『%』にみるmol-74の世界観
「脆くて儚くて美しい」世界観
人の欲求部分に焦点を当てた歌詞や生々しくも力強いサウンド。
またはナルシシズムを追求した耽美的なビジュアル。
ロックという音楽ジャンルには、そんなイメージがあります。
しかし、mol-74の音楽は確かにロックではあるのに、熱い力強さもナルシズムも感じさせません。
一見、ロックの特徴と相反するように見える「繊細さ」「儚い美しさ」「脆さ」といった要素が上手に融合されているのですね。
アメリカのロックも聞くけれど、デンマークやノルウェー、アイスランドなどの北欧系の洋楽が好き。
そうメンバーたちは言います。
『%』を聞き終わった後に感じる清涼感や優しい余韻は、たしかに北欧っぽいイメージかもしれません。
歌詞も決して押しつけがましくなく、静かに励まされる感じがあります。
視覚的な音楽
mol-74の奏でる世界には、似合う色があります。
黒よりも白、青よりも水色、赤よりも薄紅色、といったように、原色よりもどこかくすんで見える優しい色。
鮮やかな色彩でも、霧の奥にちら、と見えて初めてハッと気づくような、そんな見え方が良く似合います。
MVの中でメンバーが着ているTシャツも、柔らかな白で楽曲のイメージにピッタリですね。
『%』を聞いていると、まるで目の前に映像が浮かんでくるような錯覚に陥ることがあります。
これは彼らの曲作りの方法が反映されているからなのかもしれません。
武市和希が作った曲を聴いて、ほかのメンバーが「どんな風景が浮かぶか」ということを話し合います。
そして、作った時と同じ景色を、聞くメンバーが連想してくれたら、「さあ作ろう」ということになるのだそうです。
例えば、ほかの国の言葉で歌詞の意味が分からなくても、聞くものに同じ風景が見える、そんな歌。
『%』を聞くリスナーの脳内には、それぞれどんな風景が広がるのでしょうか。