バンドは続くよこの先も。今、歌った感謝の気持ちは今回限りで勘弁。恥ずかしいから。
バラエティに飛んだ曲の中で、色んな表情のクリープハイプを感じる事が出来る『世界観』。
実はこのアルバムが出来る前に、クリープハイプは解散の危機があり、尾崎世界観が、自ら作ったバンドを手放そうとしました。
そんな渦中、クリープハイプがキュレーターを務めたフェスや、小説「祐介」を経て、もう一度自分と向き合いクリープハイプと向き合い、バンドを続ける決心がついたそうです。
こういったサイドストーリーの中で出来た、メンバー渾身のアルバムのラストを飾るのが「バンド」です。
タイトルのシンプルさのまま、バンドの事を歌ってます。
普段、自他共に”捻くれ者”と言われている尾崎世界観ですが、この曲は、メンバーに対する感謝の気持ちを素直に綴っています。
作った本人でさえ恥ずかしくて、歌入れの時は、メンバーをブースから追い出したそうです。
でもその甲斐あってなのか、他のメンバーが内緒で創り出した素敵なアレンジが生まれました。
解説でも少し触れますが、聴いて頂ければ感じて貰えると思います。
トゲトゲしさをすべて取り除いて歌った尾崎世界観の、優しい一面も垣間見れる「バンド」を紐解いて、 クリープハイプの歴史を辿っていきましょう!
バンドっていいなあと思うはず!
【バンド史〜第一章〜】自分自身と話す。歌にして逃げてしまう前に。
今から少し話をしよう
言葉はいつも頼りないけど
それでも少し話をしよう
歌にして逃げてしまう前に
バンドなんかやめてしまえよ
伝えたいなんて買い被るなよ
誰かに頭を下げてまで
自分の価値を上げるなよ
だけど愛してたのは自分自身だけで馬鹿だな
だから愛されなくても当り前だな糞だな
出典: バンド/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
「歌にして逃げてしまう前に」と”歌っている”ところが、なんともクリープハイプらしいところです。
歌にしてるじゃん!と言いたくなってしまいます。(笑)
ですが、このフレーズを歌う時には演奏が中断され、尾崎世界観の歌声のみとなり、次のフレーズから、アコギの伴奏が再開されるのです。
バンド活動をしている自分と、それを傍観する自分。客観視したもう一人の自分の声。
それに耳を傾けながらも、辞められなかったバンド。
この1番の歌詞は今のメンバーになるまでの自分と向き合っていて、クリープハイプのバンドの歴史の中では、独りよがりのバンドだった時代を歌ったパートだと思います。
クリープハイプを愛していたのは、自分だけだったと気づいてしまったきっかけとなった、メンバーの度重なる脱退。
その度に、愛されたいけど愛されなくても仕方ないと、当時の自分を奮起させていたのかもしれませんね。
【バンド史〜第ニ章〜】自ら答える。「2009年11月16日」のアンコール。
今までバンドをやってきて
思い出に残る出来事は
腐る程された質問に
今更正直に答える
2009年11月16日
アンコールでの長い拍手
思えばあれから今に至るまで
ずっと聞こえているような気がする
だけど愛してたのは自分自身だけで馬鹿だな
だから愛されなくても当たり前だな糞だな
出典: バンド/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
「2009年11月16日 アンコールでの長い拍手」この日というのは、尾崎世界観をサポートしていた3人がクリープハイプの正式メンバーになったという事をお客さんに報告した日の事です。
思いもよらない温かい長い拍手を、鮮明に覚えているらしいです。
その日を選び、曲にするという事は、自身にとって人生を変える大きな出来事だったという事でしょう。
2番から、アコギ一本だった伴奏に、リードギターとベースとドラムが加わり、バンド演奏に変わります。
歌詞であっても、サウンドであっても、現メンバーでのクリープハイプがここから始まります。
【バンド史〜第三章〜】消せる事。また鳴る事。いつでもすぐにバンドになる。
ギターもベースもドラムも全部
うるさいから消してくれないか
今はひとりで歌いたいから
少し静かにしてくれないか
こんな事を言える幸せ
消せるということはあるということ
そしてまた鳴るということ
いつでもすぐにバンドになる
出典: バンド/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
冒頭でもお伝えしたエピソードの部分です。新たな道を歩みだしたバンド。その経歴がアルバムのように、一枚一枚重ね合わせていくような間奏を経て、 ここで音がパタリと消える。
歌詞で言っていることが、音でも再現されたアレンジ。
これは、歌っている本人の口から出たものでは無く、 3人がこうして欲しいんだろなと汲み取って出来たもので、 本人が思わず驚いたところです。
「うるさいから消してくれないか」 という歌詞に合わせたかのように尾崎世界観の声だけが鳴り響く。
こんなわがままが言えるのも、今ならいつでもバンドになる、確かなものがそこにあるから。
頼もしい愛するメンバーがいつでも居るから。ということなのでしょう。
【バンド史〜第四章〜】愛しているよ。付かず離れずでこれからも。
だから愛しているよ都合のいい言葉だけど
結局これも全部歌にして誤魔化すんだけど
だけど愛してたのは自分自身だけで馬鹿だな
だから愛されなくても当たり前だな糞だな
そうだなそうだなそうだなそうだよな
嘘だな嘘だな嘘だよな
疑いは晴れずでも歌は枯れず
付かず離れずでこれからも
そうだなそうだなそうだよな
嘘だな嘘だな嘘だよな
疑いは晴れずでも歌は枯れず
付かず離れずでこれからも
出典: バンド/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
この曲を通して、愛していると伝える。普段こんなこと言えないから。だから歌にして誤魔化す。
独りよがりだった自分も、自分勝手な自分も愛されなくてもしかたなかったから。
でもそれを嘘だと言えるメンバーと出会う事ができた。「疑いは晴れず声は枯れず」というのも尾崎世界観らしさを感じます。
恥ずかしくなるとすぐに嘘をつく姿をよく見るので(笑)。だから、歌では本当の気持ちを歌えるのかもしれません。
いや、歌でしか言えないのかも…。それを分かりきっているメンバーだからこそ、同じブースに居なくても、グルーブ感を作りだせるのだと思います。
私自身も凄く好きな曲なので、いつもより長くなってしまいました。
読んで頂きありがとうございます。
これからも、個性バラバラ年齢バラバラなのに、相性抜群という、ある種奇跡的なバンド、クリープハイプを応援していきましょう!
最後に、アルバム全曲解説に少しでも興味を持って頂きありがとうございました!