新しい生活と孤独の影

浜崎あゆみ【Together When…】歌詞の意味を徹底解説!「ありがとう」と言えなかった理由とはの画像

ある日ふとした瞬間に
自分で選んだはずの
新しくて見慣れぬ景色に
少し戸惑っていたら
まるで君のような優しい
風が吹き抜けました

出典: Together When…/作詞:ayumi hamasaki 作曲:Kunio Tago

僕と君にはそれぞれの新生活が待っていました。

新しい生活の中には当然ながら元パートナーの姿はありません。

この新生活は僕と君がそれぞれ主体的に選び取ったものです。

別れというものにふたりは等分で責任を負っています。

新生活もまたそれぞれの責任のもとにあるのです。

ただ、新しく始まったこの生活に僕はまだまだ慣れていません。

君がいない生活というものは僕にしてみるとまだ不思議なところがあるのです。

別れたばかりの頃、私たちはパートナーのいない光景に違和感を覚えます。

一緒にいることが普通だった相手がいない生活の中で大きな戸惑いを感じるのです。

欠落感・喪失感の中で傷心しながら新しい生活を始めなければいけません。

まずは大丈夫であること。

新生活を無事に乗り切ってゆくことが大事でしょう。

それでも否応なく感じてしまう孤独の影に震えることがあります。

この先の人生には君がいないという事実の重さ。

この事実に改めて気が付いて酷く落ち込むこともあるでしょう。

僕はこうした局面で何を想うのでしょうか。

人生は繋がっているもの

浜崎あゆみ【Together When…】歌詞の意味を徹底解説!「ありがとう」と言えなかった理由とはの画像

僕は新しい生活の中で君の幻影を見ます。

風のように吹き抜けた空気。

そこに君の姿を見ます。

僕がどれほど君のことを考え続けているのかがこのラインで浮き彫りにされるのです。

新しく始めた生活でも君の幻影を見てしまうこと。

これは新生活といえども過去の自分とは断絶できないものであることの証明になります。

人生の節々に別れというものがありますが、その度に私たちの生活は切断される訳ではないでしょう。

人生というものはどこまでも繋がっているものです。

過去との決別というものは意志の中だけで実現できるものでしょう。

実際の人生というものは断絶を許さずに一本線として振り返られるものなのかもしれません。

新しい暮らしを始めても過去の自分の人生を支えた人々が亡霊のように立ち現れる。

その亡霊は決して怖ろしい存在ではなく懐かしい人の似姿です。

僕にとって新生活に現れた君の幻影は柔らかな風として表現されています。

傷心して落ち込む僕の気分を優しく撫でてくれる風です。

「愛している」という言葉の軽さ

浜崎あゆみ【Together When…】歌詞の意味を徹底解説!「ありがとう」と言えなかった理由とはの画像

愛してると言いたかった
愛してると言えなかった
だけどそれは僕の最大の
嘘であり真実だった様な気がする
いつかまた僕は僕に生まれ変わって
君を探す旅に出るんだろう

出典: Together When…/作詞:ayumi hamasaki 作曲:Kunio Tago

2度目のサビになります。

僕は君との交際中に「愛している」ともいえなかったのです。

それが嘘であり真実であるとはどういうことでしょうか。

僕が君に「愛している」といえなかったのは最大の嘘というのは分かります。

僕は実際に君のことを深く愛していました。

それなのに「愛している」の一言をいえなかったのは僕にとっては嘘に間違いないです。

一方で「愛している」といえなかったのが最大の真実という僕の告白は分かりづらいでしょう。

僕は自分の想いを言葉というもので表すことに躊躇させられたのかもしれません。

言葉というものは想いの結晶でしょう。

しかしその想いと言葉は厳密には別物なのです。

僕は自分の想いを別物である言葉に置き換えてしまうことが嫌だったのかもしれません。

一方で段々と離れてゆく君をもう愛せなくなって破綻したという経緯も忘れ難いです。

僕が「愛している」といわなかったことを最大の真実とする理由はどちらであるのか。

愛しすぎていたからいえなかったのか。

愛するというには君が遠ざかっていたからいえないのでしょうか。

どちらか見極めるのが難しい問題です。

それでも僕は来世も君を求めるといいます。

この強い決意を考えるならば「愛している」という言葉の軽さを危惧したと考える方が自然でしょう。

「Together When…」という希望

気持ちと言葉の間の距離

浜崎あゆみ【Together When…】歌詞の意味を徹底解説!「ありがとう」と言えなかった理由とはの画像

ありがとうって言いたかった
ありがとうって言えなかった
だってそれじゃまるで永遠の
サヨナラみたいで悲しすぎる

愛してると言いたかった
愛してると言えなかった
だけどそれは僕の最大の
嘘であり真実だった様な気がする
もしも別の誰かに生まれ変わっても
君を探す旅に出るから

出典: Together When…/作詞:ayumi hamasaki 作曲:Kunio Tago

いよいよクライマックスになります。

サビの連続になっているのが分かるはず。

ご覧のように一部リフレインを含む歌詞になりますが最後ですので改めて見ていきましょう。

浜崎あゆみが最後に伝えたかったことがまとめて提出されます。

やはり僕は心のどこかで君を求めているのです。

これまで付き合ってくれたことへの感謝の言葉「ありがとう」。

この言葉を君に伝えてしまうと、もうこの先に君と出会うことは永久に失くなってしまう気がする。

これまで付き合っていた中で温めていた言葉「愛している」。

この言葉を伝えられなかったのは僕なりの理由があることを君に伝えたいのです。

言葉というものには言霊が宿ります。

人を結ぶ力を持つ大切なツールです。

しかし僕はこの言葉というものと絶えず葛藤を続けます。

想いというものとその表出の言葉との間で悩み続けてしまうのです。

おそらくこれは浜崎あゆみが持つ気持ちと言葉との関係への疑問のようなものが結晶しているはず。

浜崎あゆみは長年、言葉に携わるうちに心というものと言葉というものの相互関係に悩みだしたのです。

感謝の思いは日本語圏では「ありがとう」という言葉に結晶します。

相手への恋慕の情は「愛している」という言葉で表現されるでしょう。

浜崎あゆみはこうして言葉にしてしまった後の実際の効果について心配するのです。

「ありがとう」はさようならという意味にならないか。

「愛している」で僕の気持ちは本当に伝えられたのか。

言葉を専門職とする浜崎あゆみならではの葛藤がこの「Together When…」でドラマとなりました。

今とこれまでの縁を大切にしたい

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僕は君を探し続けます。

追い掛けているのは君の幻影かもしれません。

新しい生活の中でも風として立ち現れる君の存在に心を洗われました。

Together When…

次にこのふたりが一緒になれるのはいつのことでしょうか。

僕は来世ならそのチャンスがあると考えています。

一方でこの人生の中でも最後にしたくないからこそ「ありがとう」とはいえないとも歌うのです。

僕の君への執着は非常に強いものでしょう。

肝心の君の反応は明示されないブラックボックスの中でリスナーが想像するしかありません。

ただ雪解けの季節になったらこのふたりがもう一度会えることをリスナーとして望んでしまいます。

元カレ・元カノとどのような関係を築いてゆくかは人それぞれです。

ただ人生で一度でもめぐりあったこと、それは奇跡的な確率のことでしょう。

運命と呼ばれるこうした出会いと別れは貴重なものですからできるだけ壊さずに大切にしたいです。

僕も出会ったことを大切にしたいと願います。

ただ、若すぎたふたりにはこの出会いを守り抜くのが難しかったようです。

どんどん遠くなる距離を再度縮める力さえなかったのですから。

しかし僕は君との奇跡の出会いに執着します。

別れた事実が相当胸に応えたのでしょう。

失くしてから気付いたパートナーの大切さとその喪失感の中で、もう一度会えることを切望しました。

もし「次」や来世というものがあるのだとしたら君を離しはしないだろうと思うのです。

過去には戻れない分、「次」にチャンスを求めるしかありません。

そして浜崎あゆみはこのふたりの結末というものを書かないのです。

リスナーはもしかしたら「次」にふたりはうまくゆくかもしれないと願うでしょう。

それは未来へ希望を繋ぐ想いです。

浜崎あゆみは僕に対してもリスナーに対しても希望を残しています。

僕の切実な願いが叶う未来。

そこで今度こそ僕は君に「愛している」といえるのではないでしょうか。

今、パートナーがいる幸福な人はその縁を大切にしてください。

かつてのパートナーを思い出した方はその出会いの瞬間が奇跡であったことを思い出しましょう。

私たちはこわれものですから明日にはどうなっているか確信が持てません。

今とこれまでの縁の大切さ。

その縁をこわしてしまったことの後悔を噛み締めながら「Together When…」をリピートしましょう。

その結果、もう少しだけ人に優しくして縁というものを大切にしようと思えるはずです。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

OTOKAKEと浜崎あゆみの軌跡