悔いのない生き方を
後悔したり、やり直したいと思ったり、ついつい立ち止まってしまう、ということは、きっと誰にだってあることでしょう。
それでも自分の生きてきた半生を初めからやり直す、なんてことは出来ません。
だからせめて未来の自分が後悔することのないように、なんとなく生きてきたこれまでの自分と決別し、今この瞬間を大切にして前へと踏み出す気持ちを力強く歌うのがこの歌です。
自分自身の大切な一秒を、自分の手から取りこぼしてしまうことのないように。
一瞬一瞬をたいせつに
そっと 吐き出す ため息を吸い込んだ 後悔は苦い味残して
いつも なんで? 肝心なこと言えないまま 次の朝日が顔だしてる
出典: Catch the Moment/作詞:LiSA 作曲:田淵智也
吐き出した『ため息』を吸い込むと、『後悔』の『苦い味』が残る、やるせない思いが自分の中に積もっていくという表現です。
言いたいことも言えない、したいことができないまま、気がつけば夜が明け、無情に日々が過ぎていくことを歌っています。
嫌になった運命を ナイフで切り刻んで
もう一度やり直したら キミに出会えないかも
出典: Catch the Moment/作詞:LiSA 作曲:田淵智也
今まで歩んできた道を『運命』と呼んでいますが、そこには自分の意思はなかったのでしょうか。
流されるままに進んでいる道を嫌ってやり直すことができたら、いわゆるリセットすることができればという思いは、けれどそうすることはある一つの可能性を呼び出します。
ここにいたるすべてをなかったことにして初めからやり直したら、また違う生き方ができるかもしれないけれど、『キミ』と出会う道からは外れてしまうかもしれないという可能性。
一からやり直したいけれど、『キミ』と出会えないのは嫌だという思いがあります。
僕の声が響いた瞬間に始まる 命のリミット 心臓がカウントしてる
叶えても叶えても 終わらない願い
汗をかいて走った 世界の秒針は いつか止まった僕を置いていく
あと何回キミと笑えるの?
試してるんだ 僕を Catch the Moment
出典: Catch the Moment/作詞:LiSA 作曲:田淵智也
ここでの『僕の声』とは産声のことでしょう。産声を上げて生まれた瞬間から人は死に向かって進んでいきます。
命の灯を燃やしていく、前へ前へと進むしかない中で、願いを一つ叶えてもすぐに新たな願いが生まれる、限られた時間の中で願いは無限に続いていくのです。
『汗をかいて走った』とはがんばって生きたこと、『止まった僕』とは僕の命が尽きたということ。
そう考えると、どんなに『僕』ががんばって生きたとしても、命が尽きても世界は変わらず続き、時を刻んでいくことの空しさを歌っていると考えられます。
それとも『止まった僕』とは後悔を抱えて立ち止まった『僕』ということでしょうか。
過ぎた過去を振り返り立ち止まってしまった『僕』のことなんて気にも留めず、世界は変わらず時を刻んでいく、とも考えられます。
いずれにしても、永久に続いていく時の流れの中で、『僕』の刻む時は、そして『僕』と『キミ』との刻む時が重なっている時間は限られたものでしかありません。
それこそ、またたきの間と呼べるほど短い時間です。
そんな限られた時の中で、あと何回、『僕』は『キミ』と笑うことができるか、過ごすことができるか、それこそが『僕』にとっての試練であると言っているのでしょう。
今のこの大切な瞬間を、どれだけこの手につかんでいられるか、それを試されているのです。
前へと迷いなく進むために
一個幸せを数えるたびに 変わっていく未来に怯えてしまうけど
愛情の種を大切に育てよう
分厚い雲も やがて突き破るかな
出典: Catch the Moment/作詞:LiSA 作曲:田淵智也
幸せと思う瞬間に出会うたび、未来に恐ろしいことが起きてしまうんじゃないかと不安になることはきっと珍しくありません。
『分厚い雲』は暗雲、いずれ起きる良くないことを示していると考えられます。
『愛情』とは恋愛だけではなく、友愛や親愛、色んな形のひとを思う気持ち、真心、思いやり、そういうものを表しているのでしょうか。
そんな気持ちを自分の心の中で育てていくことで、未来に待ち受ける不幸もどこかへ消えてなくなるだろうかという期待が描かれています。
生きている以上、未来へ向かって、前へと進むしかないのですから、どうすれば未来の不安を少しでも取り除けるだろうかと考えるのでしょう。
キミの声が響いた 僕の全身を通って 心臓のドアをノックしてる
「臆病」 でも開けちゃうんだよ 信じたいから
何にもないと思ったはずの足元に いつか深く確かな根を生やす
嵐の夜が来たとしても 揺らいだりはしない
出典: Catch the Moment/作詞:LiSA 作曲:田淵智也
『キミの声』は血液が巡るように全身に染み渡り、『僕』の心の奥にまで届いてきます。
『僕』は『臆病』かもしれないけれど、ひとを信用しないという選択肢を選びたくないという思いで心を開いてみるのです。
全身をまわる、という表現は『キミの声』が薬湯か何かのようにも感じられますね。
『僕』が心の扉を開いてみたのは、そういう理由もあってのことかもしれません。
『信じたい』という願いは勇気に通じ、自分の中に閉じこもらずにひとを受け入れることで、不安定だと思っていた足元には、地に根が張るように地盤が出来ていきます。
それは嵐とも言えるようなどんな出来事が起きても、心を揺り動かされることのないほどのものになっているのでしょう。
未来を見据え前へ歩いていこうという気持ちが誰かを受け入れる強さを生み、それが心の礎となるのです。
何度でも
追いついたり 追い越したり キミがふいに分かんなくなって
息をしたタイミングが合うだけで 嬉しくなったりして
集めた一秒を 永遠にして行けるかな
出典: Catch the Moment/作詞:LiSA 作曲:田淵智也