3つの社会の窓の中の自分
”社会の窓開いてるよー”って言葉を聞いたことはありますか?
若い世代ではあまり耳にしないかもしれませんね。 これは”ズボンのファスナーが開いてるよー”というのを面白がって言った言葉なのです。
この「社会の窓」という表現を使って、 "会社の中”、”ベッドの中”、”音楽業界の中” といった3つの感情を 掛け合わせた歌詞が面白い作品になっています。
皮肉ってはいるけど、全てを愛している。 そんな感情が大爆発している歌詞を少しずつ紐解いて行きましょう!
【1番の歌詞構成】一段落目はバンドへの気持ち、二段落目はあたしの気持ち。
バンドに対して思うこと
感情の波を掻き分けて愛憎の海を泳いでる
凄く大好きだったのにあのバンドのメジャーデビューシングルが
オリコン初登場7位その瞬間にあのバンドは終わった
だってあたしのこの気持ちは絶対シングルカット出来ないし
出典: 社会の窓/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
Aメロ一段落目の部分です。 インディーズから応援していたバンドがメジャーデビュー。
有名になるのは嬉しい事なのに、 どこか遠くに行ってしまったような寂しい気持ち。
誰しもが一度は経験したことがある気持ちに感情移入してしまいます。
"オリコン初登場7位"という、凄い快挙だけどどこかモヤモヤ感が漂う結果に、 バンドの悔しさが込められているように思います。
その一方で、昔だったら言えたことも今はもう言えない。
世間体を気にした着飾った歌詞に変わってしまったバンドに 嫌気がさしてしまっている女性の気持ちが見え隠れしている気がします。
特に歌詞1行目の表現は秀逸。
好きなバンドのメジャーデビューに対して抱いた様々な感情は、当然ポジティブでもありネガティブでもあるでしょう。
1行目前半ではあふれ出して止まらない様々な感情を整理したいと願っている様子が感じられます。
しかし続く後半では、それらの複雑な感情がつまるところ「愛憎」であると結論づけているのです。
この表現がまさに「女性らしい感情の揺れ動き」を描き出しているように感じられますね。
あたしの心は
誰にでも出来る昼の仕事と誰にも言えない夜の事
どこにも行かない悲しみとどこにも行けないあたしの事は
アルバムの7曲目位で歌われる位がちょうど良い
だからあたしのこの気持ちは絶対シングルカットさせないし
出典: 社会の窓/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
二段落目の部分です。
つまらないデスクワークの毎日に刺激が欲しくて持ってしまった秘密の関係。
行きていくために仕事をしているのに会社には溶け込めない。
そんなありがちな環境で掴んだ女としての幸せなのに、 社会的には悪るい女になってしまった悲しみ、憤りが滲み出ているように思います。
(…あたしみたいな女の気持ちなんて誰にもわからないんだから。 わかってもらってたまるか。シングルレベルにもならないんだから。 アルバムレベルでも7曲めくらいがちょうどいい、、、。) と、女性が心に秘めているようです。
愛しているものは何?
愛してる 今を愛してる 今を愛してる 今を愛してる
愛してる 今を愛してる 今を愛しているのよ ベイビー
出典: 社会の窓/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
一番のサビ部分です。
ボロクソに言っている私のことも、会社のことも、上司のことも、バンドのことも総てを愛してるんだよー!
と訴えかけているような、女性の心の叫びに聞こえます。
バンドに対しては憎しみを抱いてしまい、自分自身の生活では虚しさを感じてしまう。
「愛」とはかけ離れているような感情も確かに抱いていたはずなのに、総合的にみればとても前向きな感情です。
女性の難しい心理状態がとてもわかりやすく表現されていますね。
【2番の歌詞構成】一段落目はあたしへの気持ち。二段落目はバンドの気持ち。
モヤモヤしたあたしの気持ち
年上の彼氏が欲しかった年下の女でいたかった
そんなのわかっていたけれどやっぱりちょっと痛かった
オリコン7位は運が良かった離婚しないのは運が悪かった
そんなの今更絶対にカミングアウト出来ないし
出典: 社会の窓/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
Aメロ一段落目の部分です。
1番と違い、ここでは女性の素直な気持ちが出てきます。
この関係性を綺麗事を並べながら分析し、
自分の過ちに少し後悔してしまった心境をバンドのオリコンランキングと掛けて、
気持ちを落ち着かせているように思えます。