悲しい夜の中で蹲り泣いていたのは、山口一郎自身なのかもしれません。
忙しそうに働き、街を歩く同年代の人間を見て当時の山口一郎は何を思っていたのでしょう。
「何も知らないくせに笑うんだ」と、まだ何者でもない自分自身への情けなさや焦りみたいなものが見えてきます。
若いときは自意識過剰になることもあります。
みんなが自分を見て笑っているんじゃないか、変な目で見ているんじゃないかと気になってしまったり。
そんな、青春の自意識過剰な若者の歌にも思えます。
釣りがモチーフ?
スパンコールな波際で
浮かび続けるんだフローター
上の空で漂う
誘惑 罠全てが
ぐるぐる回り続けてるんだ
悲しい夜が明ける
出典: 白波トップウォーター/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
山口一郎が釣り好きなことはファンの間ではよく知られています。
バンド名も「サカナ」ですし、曲名やアルバムにも釣りを連想させるものが多くあります。
このサビの歌詞も、釣りの風景がモチーフになっています。
フローターとは釣りで使ういわゆる「浮き」のことです。
まだ人生の目標もなくさまよっている自分自身と、波に漂う浮きを重ね合わせたのかもしれません。
悩み、考えているうちに悲しい夜が明けてまた一日が過ぎていく。
そんな、モラトリアム的な若者の心象風景が見えてくる気がします。
押さえてた僕の
儚い想いは水際
曇りガラスの
先はいつも悲しいんだ
スパンコールな波際で
浮かび続けるんだフローター
上の空で漂う
誘惑 罠全てが
ぐるぐる回り続けてるんだ
悲しい夜が明ける
出典: 白波トップウォーター/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎
山口一郎はセルフライナーノーツでこの曲について「ちょっと青臭い時間を思い出す曲。」と書いたことがあります。
先の不安や焦りみたいなものを感じる若いときの自分を描いたものなのでしょう。
彼にとって青春の置き土産のような曲なのかもしれません。
ただ、誰にも若いときはあります。
自分自身の若い時と照らし合わせてこの曲に思い入れを持つ人もいると思います。
今まさに青春の中で過ごしている若者にもこの曲は自分の曲として届くでしょう。
今も「白波トップウォーター」は多くのファンに愛されています。
それは、この中で描かれる心象風景が聞く人にとって「自分のもの」だからではないでしょうか。
最後に
サカナクション初期の名曲「白波トップウォーター」をご紹介しました。
現在のサカナクションから見ると若い感じがしますが、今でも変わらないエッセンスが確実にこの中にあると思います。
サカナクションは2018年3月28日にベストアルバム『魚図鑑』をリリースしました。
「白波トップウォーター」ももちろん収録されています。
他の名曲と合わせて、ぜひ聞いてみてください!
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