楽曲「ゆめうつつ」
「ゆめうつつ」は2021年1月4日に発表されました。
米津玄師が「news zero」のエンディングテーマとして書き下ろしたオリジナル曲です。
ゆめうつつとは夢とも現実とも区別がつかない状態のことをいいます。
様々なニュースが飛び交う世の中で何が本当なのかわからない現状を嘆いているようにも感じる楽曲です。
米津玄師はこの曲にどんな気持ちを込めたのでしょうか。
歌詞の意味を紐解いてみたいと思います。
「ゆめうつつ」歌詞解釈
迷える羊
間抜けな惑星に住み着いた羊の群れ
出典: ゆめうつつ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
冒頭の歌詞にモチーフの羊が出てきます。
序盤では情報や現実を知らないということを表現しているようです。
羊のモチーフは米津玄師の大ヒットアルバム「STRAY SHEEP」にも出てきます。
STRAY SHEEPとは新約聖書の語句で迷える羊のことです。
現実を知らずにこの世界をただ生きているだけの人間たちのことを羊に喩えて歌っているのかもしれません。
羊は現実社会の中で迷い傷つき声を上げることもできない人々の象徴です。
夢と現実のギャップに苦しむ姿が最初のフレーズからも伝わってきます。
キラキラしたメディア
風と花と鳥に開かれた 瀟洒な宇宙船
何かを探し何かを 見捨てるアドバルーン
わたしは何処にいるんだろう
出典: ゆめうつつ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
1行目の最初のフレーズは花鳥風月のことを表現しています。
花鳥風月は民衆を表し、垢抜けた宇宙船は煌びやかなメディアの姿を象徴しているのでしょう。
メディアは時に誰かを救う代わりに誰かを残酷に切り捨てていきます。
光と影があるように誰かが輝く為には誰かが犠牲になってしまうのです。
そういった現実社会の歪みとキラキラしたメディア、それに惑わされる人々を対比させています。
そんな現実を見て、羊はいったい夢と現実のどこにいるんだろうと迷ってしまうのです。
ここは不安定な現実の世界にいる現代人の心の不安が表現されています。
また華やかなメディアに翻弄される人間の姿も垣間見えますね。
夢の中で
暗い現実の中での微かな希望
眩い光に絶えず 誘われている
零れ落ちた羊は まだ夢を見る
どうせわたしも 風になり消える
ならば 今夜くらいは
出典: ゆめうつつ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
夜、家にいると窓から月の光が差し込み、外の世界へと誘われます。
暗闇でもがく現代人の象徴である迷える羊は現実の辛さを忘れて夢を見たいと願うのです。
悩みを抱えている羊は、自分もいつかは死んでしまうのだろうと考えています。
それならば今夜だけは、声を自由に出せるような幸せな夢の中で過ごしたいと思うのです。
暗い現実から抜け出せるのは夢の中だけ…。
悲しく切ない気持ちが浮かびながらも、どうにもならない世の中の現状は繰り返していきます。
そのまま眠っていたいと願う羊の心情はこの世に生きる全ての人々の気持ちを代弁しているかのようにも感じました。
夢の中での解放感
声が出せるような喜びが
君に宿り続けますように
革命家の野次も届きはしない
夜の淵で踊りましょ
出典: ゆめうつつ/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師