昭和を代表する1曲
多くの歌姫に歌い継がれ
1974年にポリドールレコードからリリースされた【昭和枯れすゝき】。
山田孝雄さんが作詞を、むつひろしさんが作曲を担当しました。
ホームドラマの挿入歌に起用されたことがきっかけで、注目度が急上昇。
有線放送で何度も流れ、売り上げ枚数が150万枚に到達しているヒット作です。
さくらと一郎がコンビを解消した後も、それぞれがリバイバル版を出して歌い継いでいます。
また、ちあきなおみさんや美空ひばりさんなど、錚々たる面々がカバー。
時代が移り変わっても、口ずさみたくなる名曲なのです。
悲壮感が大きな魅力
数あるデュエット曲の中で特に有名な【昭和枯れすゝき】。
世間の風当たりの強さに耐え凌ぎながら生きようとする男女の姿をイメージしています。
悲壮感たっぷりの歌詞、力強い歌声。
この2つの要素がマッチし、多くのリスナーの心を揺さぶっているようです。
ネット上では、「日本歌謡の神髄」「いつ聴いても涙腺が崩壊する」と絶賛されています。
人生に絶望し
逃れられない運命
貧しさに負けたいえ世間に負けた
この街も追われた
いっそきれいに死のうか
出典: 昭和枯れすゝき/作詞:山田孝雄 作曲:むつひろし
歌い出しは、悲劇を彷彿とさせる言葉が並びます。
歌詞に登場する男女は、なぜ“負けた”と言っているのでしょうか。
“貧しさ”という言葉を踏まえて考えると、いくら働いても裕福にならない状況を推測できます。
しかし、真面目に勤続していれば、経済的な余裕が出てくるはず。
“世間~”と“~追われ”から察するに、両親の借金を背負わされて厳しい取り立てから逃げているのでしょう。
頼りになるはずの近親者がおらず、周囲の視線の冷たさを実感する日々。
逃げることに憔悴しきった男性は、ふと“死”を望んだのかもしれません。
気持ちが吹っ切れた瞬間
力の限り生きたから
未練などないわ
出典: 昭和枯れすゝき/作詞:山田孝雄 作曲:むつひろし
“死”という言葉を口にした瞬間、走馬灯のように思い浮かぶ今までの人生…。
男女は、天涯孤独ながらも、気高く生きてきたことを誇りに感じているのではないでしょうか。
同時に、ようやく借金地獄から解放される喜びを味わっているのかもしれません。
今まで精いっぱい生きてきた。何の後悔もない。
歌詞の“~生きた”と“未練~”は、男女の気持ちが吹っ切れたことを示しています。
花さえも咲かぬ二人は枯れすすき
出典: 昭和枯れすゝき/作詞:山田孝雄 作曲:むつひろし
しばしば“花”という言葉は、比喩表現に用いられています。
例えば、才能が開花するという具合に。
成功や勝利と縁遠い男女は、“枯れすすき”に自分たちの姿を重ね合わせているようです。
確かに、褐色の花穂が枯れ落ちたすすきには、魅力がないかもしれません。
しかしながら、葉や茎は、茅葺屋根の材料に活用できるのです。
男女にも何かしらの希望が残っているものの、過酷な現状にとらわれて見えなくなっているのでしょう。
生きる活力も希望も失ってしまった男女。
その姿は、薄茶色の葉が散り散りになった枯れすすきと瓜二つなのです。