好きな相手を抱きしめる為に2本の足で歩くことができるようになった「僕」。
彼は次に、言葉や名前を話せるようになりました。
自分を愛する母や父、大好きな生き物たちやぬいぐるみ。
言葉を話せるようになった彼に対して、今すぐ駆けつけるよ、と声をかける誰か。
先ほどの引用括弧は彼の母親の言葉のようにも思えましたが、どうやら違うようですね。
この言葉はもしかしたら、未来の「僕」の好きな人からのものかもしれません。
彼の相手に関しては、便宜上「彼女」と呼ぶことにしましょう。
そう考えると、先ほどの好きな人ができたと話す彼への祝福の言葉。
あの言葉ももしかしたら、彼女からの言葉だったのかもしれませんね。
そうして遠くない未来で、彼女との念願の邂逅を果たした「僕」。
「僕」にとって、それはどれほど待ちわびた出会いだったことでしょう。
しかし、事態は想定外の方へ向かい始めました。
彼女を抱きしめる為に浮かせた手で、彼女の名前を呼ぶために覚えた言葉で。
「僕」はなぜか、彼女を傷つけてしまうのです。
あなたがわたしを傷つけるのなら…
覚えたての言葉だって 君に突き刺すナイフ
切り裂く人生(ライフ)
「じゃあアタシがナイフ放つ前のその口を
この口で塞いであげましょう」
出典: 二息歩行/作詞:DECO*27 作曲:DECO*27
会える日を待ちわびて、やっと叶った念願の好きな人との日々。
しかしその日々は、彼が期待していたとおりのものではありませんでした。
自分が愛しているはずの相手を、傷つけてしまう「僕」。
こんなはずじゃなかったのに。
自らの振る舞いで、きっと彼は自分自身の心や身体も傷つけているのではないでしょうか。
しかし彼女は自らを傷つける彼の前で、傷を受けながらもこう言い放ったのです。
あなたの口を、私の口で塞ぎましょう。
もう二度と、あなたが私を傷つける事のないように。
もう二度と、あなたが自分を傷つける事のないように。
彼女には、きっと「僕」のすべてがわかっていたのかもしれません。
傷を受ける自分と同じように、彼自身も傷ついているということが。
「僕」が望んでいた、好きな人と一緒の未来は…
相対のチュー
キミは今からアタシの息を吸って生きてくの
言葉はもう唾液で錆びついた
出典: 二息歩行/作詞:DECO*27 作曲:DECO*27
2人のキスで、「僕」の言葉のナイフは動きを止めました。
彼は彼女を、そして自分自身を傷つける事を止めるのに成功したようです。
彼女のおかげで、人や自分を傷つけなくなった彼。
しかし一方で、それは彼女の存在があったからこそ。
もし彼女が彼の元からいなくなると、どうなってしまうのでしょう。
彼はきっとまた他の誰かを、そして自分自身を傷つけてしまうに違いありません。
こうして、「僕」は念願であった自分の好きな人である彼女と、一緒に生きてゆくことになりました。
「僕」は彼女と、一緒でないと生きてゆけなくなりました。
彼が望んでいたはずの、「僕」の好きな人との未来。
果たして彼が想像していたのは、こんな2人の姿だったのでしょうか。
2人のこれからの未来は?
ねえ君は今さら僕の息を吸って
「大好き」だなんて言ってみせるけど
それならもういっそ ボンベのように一生
僕が吐く言葉吸って息絶えて
出典: 二息歩行/作詞:DECO*27 作曲:DECO*27
彼は彼女にとって、彼女は彼にとって。
お互いになくてはならない存在となりました。
しかし、果たして本当にこの未来でよかったのでしょうか?
好きな人と共に過ごす未来とは、好きな人とじゃないと共に過ごせない未来だったのでしょうか。
今となっては、それを確かめる術はきっと2人にはもうありません。
だって離れてしまったが最後、彼らはお互いに生きてゆくことはできないのですから。
まるで水中で抱えた、ずっしりと重たい酸素ボンベのように。
その重さが自分の身体を押しつぶそうとも、手放すことはできないのです。
彼女はこれからも、彼に息を吹き込み続けます。
彼はこれからも、彼女に息を吹き込み続けます。
そうしないと、2人は生きてゆくことができませんから。
最後に
いかがでしたか?
本日はDECO*27【二息歩行】の歌詞について解説致しました。
愛する人と一緒にいたい。
この思いは、往々にしてシンプルにお互いのことが好きだという気持ちで済むものではありません。
その難しさを、今まさに身に染みて実感している人もきっと多いことでしょう。
そんなあなたに、この2人のように互いの存在が重くのしかかることがありませんように。
出来る事は、そう願うことだけです。
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OTOKAKEには、まだまだみなさんに読んで頂きたい解説記事がたくさん。
最後に、本記事と併せてチェックして頂きたい記事を2つご紹介して終わりたいと思います。
今回ピックアップしたのは、【二息歩行】とほぼ同時期に発表された人気VOCALOIDソングです。