つまり、有志たちが帰ってきたのは、彼らが出発した年ではなかったのです。

恐らくは出発してから百年後の「'39年」

地球で待っていたはずの相手は、とうに亡くなってしまっていたのです。

遠くからの呼び声

Don't you hear my call though you're many years away
Don't you hear me calling you
Write your letters in the sand
For the day I take your hand
In the land that our grandchildren knew

出典: '39/作詞:Brian May 作曲:Brian May

「私の声が聞こえる?遠い時間の中にいても

あなたを呼ぶ私の声は届いてる?

砂にメッセージを残して

またあなたの手を取る日までのために

私達の子孫が知る大地に」

有志たちが勇敢な思いを胸に出発する時、高らかに歌われたサビ。

地球に残る「愛しい人」が、旅立つ人を送り出すかのように、切なくも明るく響きます。

けれど、百年後の世界に到着したこの時にも繰り返されると、違った響きをもって聴こえてきます。

愛しい人にもう会えないと悟った彼の頭の中で響くこだまのように。

届かない声

曲の終わりにもう一度繰り返されるサビのフレーズは、最後の歌詞が少しだけ違っています。

Don't you hear my call though you're many years away
Don't you hear me calling you
All your letters in the sand cannot heal me like your hand

出典: '39/作詞:Brian May 作曲:Brian May

「僕の声が聞こえる?遠い時間の中にいても

あなたを呼ぶ僕の声は届いてる?

砂に残された言葉も、君の手ほど僕を癒してはくれない」

同じフレーズですが、今度は彼から相手へ呼びかける言葉になっています。

相手は約束通り、砂地にメッセージを残してくれていました。

けれど書いた本人はもういない。

その事実に彼は愕然とします。

何せ、元々メッセージを残してもらいたかったのは、次に二人が対面する日のためでした。

もう二度と彼女と会うことができないとは、彼も思っていなかったのです。

物語の結末と、その先

最後にこぼされる言葉

最初のサビと同じく、コーラスも含めて高らかに歌われた最後のサビ。

けれど曲のラストは、ぽつりとこぼされた独り言のようなフレーズで終わります。

For my life
Still ahead
Pity me

出典: '39/作詞:Brian May 作曲:Brian May

「僕の人生は

これからも続く

哀れだろう」

地球では百年経っていても、彼の時間は一年しか進んでいない。

ボロボロになった地球より住みやすい場所も見つかりました。

その功績者である有志たちはきっと手厚く保護されるでしょう。

そう、つまり彼の人生は続きます。

というより、よほどでない限りは「続いてしまう」のです。

愛する相手を失ったという事実を抱えたまま。

今に語り継がれる曲

QUEEN【'39】歌詞を和訳して意味を徹底解釈!呼ぶ声は何を伝える?有志たちを待ち受ける結末とはの画像

この曲の作者ブライアン・メイは、ミュージシャンでありながら天体物理学者という顔も持っています。

科学的な理論の楽曲への応用は、彼だからこそできた芸当でしょう。

この切なくも美しい曲はファンの間でも人気が高く、ベストアルバムにも何度も収録されています。

そして2020年1月に来日した際も、ブライアンの弾き語りで披露されました。

演奏の前、彼はMCでこんなことを語っていました。

初めて日本に来た時、たくさんの人に囲まれ歓迎された。

今この会場にいるのは、その人たちの子供か、孫かもしれない。

けれど同じように歓迎してくれている。

何とも不思議な気持ちだ、と。

バンドという物語