少年との約束
どこにだって行ける 僕らはここにいたままで
心は死なないから あの雲のように遠くまで
何にだってなれる 今からだって気分次第
退屈なシナリオも 力ずくで書き直せる
出典: ディアマン/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
憧れのボーカリストは少年の気持ちを歌詞の中で代弁しています。
彼らの想いが正解であるかどうかはさておき、こうして歌ってくれることで癒やされる人もいるでしょう。
自分自身の進路は自前の羅針盤だけに頼りたい。
これは少年の願いであります。
一方で大人になった私たちは社会の厳しさに辟易しているでしょう。
少年のようにこうした新鮮な気持ちをもう一度胸にしたいものです。
日々は判で押したように同じに思えます。
もっと夢というものを大事に抱いて生きていたはずなのに、大人になるにつれて荒んできました。
夢よりも生活の安定を優先することは決して間違いではないはず。
しかし夢なき生活の寂しさも同時に味わうしかない。
憧れたボーカリストは諦める必要はないのではと少年に提案します。
勇気を出せば自分の夢を人生の羅針盤に替えることだってできるじゃないかと歌うのです。
日々の窮屈な生活に疲弊しているのならばなおさら夢にチャンスをあげていいのかもしれません。
どのような未来があるのかを待ち続けているだけでは駄目なのでしょう。
クリエイトするということの大切さをもう一度学び直すことができるかもしれません。
とても大切な歌詞
何度もリフレインされる
何も知らないんだ 多分 全然足りないんだ まだ
出典: ディアマン/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
この曲で一番大事な歌詞ですから何度もリピートされます。
成長というものには終わりがないのかもしれません。
世界の有り様について私たちはすべて解明できず、知識も持てずに人生を終えます。
ならば一生涯では成長しきれないのかもしれないです。
本当に一人前になるというのはそれだけ大変なことなのでしょう。
いつも「足りていない」と確認する気持ちも大切です。
こうした気持ちがなければ人は成長することをやめてしまうでしょう。
音楽というものも究極には完成がないものです。
藤原基央自身が成長するために、この戒めを胸に刻んでいるのかもしれません。
何度もリフレインされると今、自分は人生のどの辺りにいるのかと確認したくなります。
「紋切り型」にはうんざり
少し嫌なヤツに成長する少年
「常に誰かと一緒 似たような恰好 無駄に声がでかい」
「話題は繰り返し ジョークはテレビで見た」
「語り合い 励まし合い ケンカする 仲間が大事」
そういうのを見下している 腹の底
出典: ディアマン/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
早くから自我が覚醒めてアイデンティティが確立されると、クラスメイトなどが幼く見えます。
「ディアマン」の主人公の少年も同様でした。
周囲の友だちが「紋切り型」の会話を繰り返すような人間に思えてきます。
周囲の人がどこまでもメデイアの情報に汚染されているのではないかと思い始めるのです。
こうした心象の底には自分を特権化している側面があります。
早くに自我が芽生えることは大事なことですが、そのことによって鼻持ちならないヤツになっては駄目。
いい塩梅というものがあるはずですが、自分をコントロールするには未熟です。
仲間というものを疎ましく思い始めた先には社会的な孤立しか待っていません。
自分が少しずつ嫌なヤツになってゆくことに、この少年が気付いていられればいいのですが。
もう少し先を見てみましょう。
成長してみて変わったことは
強くなりたい想い
怖がりな少年 どんどん自分を強くした
キラキラしたものの 裏側を疑った
変わってしまったシンガー 昔のようには歌わない
がっかりした そのうちなくした 興味を
出典: ディアマン/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
少年がたくましく育つ過程です。
ただしまっすぐ素直に育ったとはいえません。
すでに周囲を冷ややかな目で見始めていた彼です。
今度はあれほど輝いているように思えた音楽の裏側へ疑惑の視線を投げかけます。
最初に好きになったボーカリストの音楽性が少し変化したのかもしれません。
歌い方に棘がなく丸くなってしまうこと。
ボーカリストは音楽市場で抜きん出るためにやり方を変えたのかもと思われます。
尖ったものに惹かれていた少年は、丸くなってしまったボーカリストを残念に思うのです。
いつの間にか彼を追いかけることも忘れて、次第にどうでもいいと見下してしまうものの中に加えました。
時の流れは誰にとっても平等に均等に移ろっているはずです。
しかし少年から成長する過程と、大人になってから歳を重ねるのとでは、時間の性質が違います。
純粋なものに夢中になれる時間はわずかなものでした。
少年はたくましく成長しますが、キラキラした宝物をどこかで惜しげもなく捨てます。