Momが魅せる新しい世界観

音楽には様々なジャンルがあるけれど、Momの世界は秀逸です。

独特のリリックと、サウンド。

一度耳にすると、多くの人がその魅力に惹きつけられます。

初めて耳にするのに、耳馴染みもある。

そんな、新しい音楽の世界を開くMomには、業界以外にも多くの人が注目しているところです。

とくに2020年に発売された3thアルバムは魅力的な楽曲が満載。

今回ご紹介する「あかるいみらい」もこちらのアルバムに収められています。

そんな「あかるいみらい」では、彼が生み出す「クラフトヒップホップ」が味わえます。

クラフトヒップホップの魅力

リリックもサウンドもまさに「クラフト」

Momの楽曲は「クラフトヒップホップ」に属するといわれています。

軽快で肩の力が抜けていつつも、新しいサウンドを取り入れるクラフトヒップホップ。

自身で手掛けるところから「クラフト」という名称で呼ばれるジャンルです。

Momの楽曲は、とくに愛らしさや人懐っこさを感じるサウンドが特徴的。

しかしサウンドと違い、そこに込められたリリックは、かなり斬新なのです。

誰かに何かを叫ぶロックのようで、そうではなく。

言葉の羅列で攻撃するヒップホップのようで、そうでもない。

緩やかに、穏やかに、そしてシニカルに聴こえてきます。

唯一無二のジャンルといえるのです。

Momという名の個性を感じる

Momの音楽では、唯一無二の個性を感じる一方、我の強さはありません。

心の叫び、魂を音に乗せるアーティストの多くは、我の強さが魅力であることも多いもの。

しかし、MomはそうしたMomの我というものはありません。

「あかるいみらい」でも、一人称視点で描かれているようで、そうではない。

誰のための「あかるいみらい」なのかを考えさせられます。

そんな風に、Momの我の強さが見えないにもかかわらず、その世界観は個性的です。

選ばれたリリックには、単に韻を踏むだけに留まらない彼ならではの個性が詰まっています。

タイトル「あかるいみらい」とは何を指すのか

アイスクリームが溶けるって

アイスクリームが溶けるその前に
電光石火で切り込んで 

出典: あかるいみらい/作詞:Mom 作曲:Mom

楽曲冒頭に登場するこちらのフレーズ。

アイスクリームが溶ける前というのは、比較的短時間を指す表現です。

アイスクリームは、室内に置いておくと、じわりと溶け始めます。

ここで表現されているのは、割と早い時間というのが表現されているのです。

ぼやぼやしていられない位、比較的早いタイミングということでしょう。

そして、それは次のフレーズである電光石火にもかかります。

電光石火とは、あっという間のこと。

ゆっくりとではなく、気が付いたらそうなっていたと感じるほど、短いタイミングです。

ここでは、そんな時間的表現が連なっているということになります。

何故、連なるように表現されているのか、想像してみてください。

アイスクリームがゆっくりと溶けていくその間に、電光石火的な動きをする。

アイスクリームの溶ける姿は、まるでスローモーションのよう。

そしてその傍らでは、その対比となるような素早い動きをするものがあります。

つまり、これはそうした映像的なイメージを明確にさせるための効果ということでしょう。

敢えてアイスクリームという表現にしたのは、さらに次のフレーズが影響しているからです。

滑らかに頭を撃ち抜く

滑らかに頭を撃ち抜いて
首を頂いて さっと帰ろう

出典: あかるいみらい/作詞:Mom 作曲:Mom

かなりハードな表現ですが、言い換えれば少年漫画のワンシーンのようです。

そしてこのハードな表現は、その前段のアイスクリームの愛らしさとの対比ともなっています。

まるで有能なスナイパーのように。

電光石火のような動きをするスナイパーが現れます。

彼がためらうことなく、滑らかに頭を撃ち抜く。

そして、きっちり仕事をこなした後は、その首を頂くのです。

後を残さず、さっと帰ろうとします。

そんなハードな仕事を、アイスクリームが溶ける前にこなす。

ハードな印象のお仕事をアイスクリームという愛らしい表現と対比させているのです。

そこに、ただハードな印象を残さないMomなりの表現法が隠されています。

無駄を排除したようで欲しいのは「あかるいみらい」