バーやレストラン、車の中など、撮影されている場所に注目してみてください。

どこか「無音」に近い雰囲気が想像できませんか?

実際に、音を切ってMVをご覧いただくとより共感していただけると思います。

また、彼らの目線の動きにも注目してみてください。

ほとんど一点をじっと見つめ、静止しています。

MVを通して、「静」が土台となったスタイルになっています。

さて、彼はどうして静かに物思いにふけるのでしょう。

悩みの原因は、仕事絡みのものでしょうか?

その答えは「NO」、禁じられた恋絡みのものです。

この「静」は、未練や虚無感

人生の多くは、「動」と「静」の起伏の連続で成り立っています。

その「動」のときと「静」のときとでは、感情に違いがあります。

感情が変わるときには、その狭間で何かできごとなどがあったということです。

今回の「静」の空間は、女性との禁断の恋という「動」の後の姿。

彼のもとを離れていった彼女。

禁じられた関係ではありながら、彼女のことを忘れられない彼。

彼女への未練や、彼女を失ったことに対する虚無感が「静」をつくりあげているのです。

絶妙なマッチング

役者、曲、撮影場所などに加え、この未練や虚無感が生み出す「静」の空間。

哀愁感やノスタルジックなオーラは、どこか昭和の良き時代を彷彿とさせます。

ちょうどこの曲のリリースは平成最後の秋の終わり。

人肌恋しくなってくるこの時期に、驚くほどにマッチングしています。

多くの人は、孤独に静かに過ごすとどこかマイナスな思考に陥っていきます。

しかしこのMVは、静かな孤独をかけ合わせ融合していくことで、美しいものへと昇華させています。

これを芸術といわずして何と表現いたしましょうか。

ここで、曲名の意味を考察してみましょう

ここで「突然」を意味する曲名「Suddenly」の意味を考えてみましょう。

これまでは秘密ながらも、確かに育まれていっていたはずの愛。

禁じられた「オトナ」の恋愛は、突如として終わりを迎えます。

それは、彼女の既婚者と逢瀬を重ねる背徳感からでしょうか。

それとも、他により好きな相手ができたのでしょうか。

いずれにせよ、別れの言葉は突然に彼女の口から紡がれます。

そして、彼の目の前から彼女が消えるのもあまりに突然のことでした。

心の整理がつかぬまま、のように去っていく彼女に、彼はエネルギーを奪われます。

曲名は、そのような愛しい彼女そのものを指しているのではないでしょうか。

散りばめられた、彼女との時間や空間

MV全体をみていると、激しく描写が変わるシーンがところどころにあります。

それらのシーンにはある「共通点」があります。

それは、彼1人でいる描写と、彼女と2人でいる描写が連続するということです。

そうです。MVに映っている場所はそのほとんどが、彼女と過ごしてきた思い出の場所なのです。

しかし、今彼女は彼のもとにいません。

1人孤独に、その空間で彼女のことを思い出し、恋い焦がれているのでしょう。

「どうして離れていったのか」という彼の疑問と、高まる現実逃避の欲求。

彼女がいたはずの方向を向けず、どこか上の空なATSUSHIの表情がすべてを物語っています。

バー【始まりの場所】

MV冒頭に出てくるバーは、彼と彼女が出会った場所でしょうか。

時としてお酒や空間の魔力は脳を麻痺させ、異性の魅力を最大限に引き上げます。

2人でいたときは「じゃあ明日の〇〇時、いつものカウンターで」と、待ち合わせ場所にしていたかもしれません。

そんな彼は今は1人。マスターとの距離感も切なさを増幅されます。

送迎車【胸の高まりが加速した時間】

レディーファーストで彼女を奥の座席に誘導し、2人で乗り込む送迎車。

彼らはバーから車に乗るこのルーティンで、どこかに向かっていたのでしょう。

そんな彼は今は1人。遠目で外を眺める彼には何が映っているのでしょうか。

レストラン【紡がれ、繋がる場所】