歌詞意外にも文字の羅列
多くのボカロ曲は、イラストや動画とともに歌詞もおしゃれな感じで乗っています。
リズムに合わせて出したり、書体で物語ったり、爆発的に一文字ずつ叩きつけるようにする手法もあります。
そこにも作り手のセンスやこだわりが現れるのですが、この楽曲は歌詞以外の文字の羅列が非常に多いです。
実際には歌ってはいないようですが、心の声で歌っているのかも知れません。
楽曲だけでなく、動画のイラストや動きを見るのも、ボカロ曲ならではの楽しみ方だと思います。
しかし早くて多すぎますよね……。
止めながら気長に見ていくと、あっという間に時間が過ぎました(汗)。
SNSの恐ろしさを知る
140文字に何を込めるか
先述の通り、「ディストピア」は「ユートピア」の反対語。
つまり、良い意味ではありません。
決して素晴らしい世界ではないのです。
それなのに敢えて、タイトルを「ハローディストピア」にしたのは、前作の「メリーバッドエンド」の続きだからでしょうか?
どちらにも「140文字」というキーワードが出てきますが、多くの人はこれがTwitterの最長投稿可能文字数であることを知っているでしょう。
たった140文字、されど140文字。
これだけあれば、誰かに愛をささやくこともできますが、当然誰かを傷付けることも容易です。
動画投稿サイトでの活動のみならず、プロのミュージシャンとしてアニメやゲームの主題歌を歌ったり作ったりもしているまふまふ。
もちろんSNSのアカウントも持っています。
しかし、過去に炎上したこともあり、また相方のそらるも含めてかなり叩かれたりもしました。
人気があればあるほど、アンチがいたり、過激に好き過ぎてファンの域を越えてしまう人もいます。
そういう人たちがSNSというお手軽な世界で暴走し、都合が悪くなると投稿やアカウントそのものを削除してしまったりします。
つまり「逃げ」ですよね。
さんざん罪のない人を傷付けておきながら、冤罪だとわかると自分が責められる前に消える。
ディストピアに「ハロー!」
心から言えますか?
決して理想郷とは言えない世界に「ハロー」と言ってしまうまふまふ。
「来るなら来い!」という強い気持ちと、「なるようになれ!」という投げやりな感情が入り乱れているようにも感じます。
そんな歌詞を見ていきましょう。
ぱっぱらぱーで唱えましょう どんな願いも叶えましょう
よいこはきっと皆勤賞 冤罪人の解体ショー
雲外蒼天ユートピア 指先ひとつのヒステリア
更生 転生 お手の物 140字の吹き溜まり
出典: ハローディストピア/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
早速出ました「140字の吹き溜まり」。
確かにもう、冤罪の人の悪事の噂を、まるで自分で見てきたかのように語る連中が集まるその場所は、「吹き溜まり」と言って差し支えないでしょう。
何なら「肥溜め」でもいいくらいだと思いますね。
指先ひとつでするするっと投稿できてしまう、考える余裕も入り込まない恐ろしさも含まれていそうです。
かごめかごめで大騒ぎ 火の無いところに火をつけりゃ
積み木くずしの罪作り セカイ系 オーライ 上々 斎場
大概 人生ログアウト
出典: ハローディストピア/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
ここで「大概」という部分を歌っているのが、鏡音レンです。
かごめかごめと言えば、「後ろの正面だーれ?」ですよね。
これはまるで犯人探しのようです。
「火のないところに煙は立たない」と言いますが、まふまふの場合は立ってしまったのでしょう。
いえ、火を付けられた、と言えるのかも知れません。
火がついて燃える……それが人なら斎場ですよね。
「人生ログアウト」とは、まぁ、「人生バイバイ」ってことでしょうか。
さあ退場退場消えて頂戴
掃いて捨てるような夢ごと
穴空いたぽっけと 感情はゴミに出してしまえ
ここらで問題問題
傷つけあって作ったものは何
御名答ディストピア
出典: ハローディストピア/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
パンパンと手を叩いて、「はいはーい!消えてくださーい!」と言えたらどんなに爽快でしょうか。
「穴空いたぽっけ」と可愛らしい表現なのにもかかわらず、くだらない感情はゴミに出してしまえと歌います。
さてここで問題。
最初に火を付けた人、それに同調した人、批判した人、真実を暴こうとした人、被害者となったまふまふやそらる……傷付け合って、結局どうなったのでしょうか?
そこにできたのが「ディストピア」だったのですね。
そう、「暗黒郷」「地獄郷」と呼ばれる世界です。
この後、「センキューメリーバッドエンド」という歌詞も出てきますので、何やら意味深で、何度でも聴きたくなります。
やぶれかぶれの神気触れ
頭のネジは左巻き
今更期待はずれだろう 命乞い
すんなよ
一緒に 地獄へ 落ちようぜ
出典: ハローディストピア/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
最後の「地獄へ」も鏡音レンのパートです。
ネジは一般的に右に回すと閉まりますから、「頭のネジは左巻き」とはつまり、「おつむのネジが緩んでる」ということ。
だから「今更」になって命乞いなんていう、恥ずかしく卑しい真似ができるのでしょう。
「地獄に落ちろ!」ではなく、「一緒に落ちようぜ」というのが、どこかまふまふの慈悲を感じてしまいます。
さあ炎上炎上 誰の惨状
沸いて遊びたいバカばかり
手の空いたヤツから順番に 処刑台に上がれ
ここらで問題問題
ボクら手を取って守ったものは何
御名答ディストピア
出典: ハローディストピア/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ