サカナクション「目が明く藍色」
アルバム「kikUUiki」に収録
「kikUUiki」という独特のタイトルがつけられたのは、サカナクション4枚目のアルバム。
「キクウイキ」と読むのですが、漢字にするとわかりやすいかもしれません。
これは「汽水域」という言葉を基に作られた、「汽空域」という造語です。
交わることがないもの同士が相容れていくという意味からこのタイトルになりました。
このアルバム収録曲の中でシングルカットされているのは「アルクアラウンド」のみ。
圧倒的に新曲が多いため、より色濃くサカナクションの世界観が表現されています。
またオリコン週間チャートでは3位、iTunes Storeのランキングでは1位を獲得しました。
彼らの独創性が深く感じられる作品でありながら、ポップさも忘れないそのバランス感覚が絶妙です。
新しくサカナクションのファンとなった人にも是非聴いていただきたい作品となっています。
アルバムリード曲として最後に収録された「目が明く藍色」
「目が明く藍色」はシングル化はされていませんが、アルバムリード曲として非常にプッシュされました。
ボーカルである山口一郎が9年という歳月をかけて構想を練り、完成に漕ぎ着けた楽曲で、彼にとってひとつのゴールを見出した1曲になりました。
元々は彼が高校生の時に見た夢がきっかけになっているそうです。
夢に出てきた女性が発していた「目が明く藍色」という言葉をもとに、この曲は仕上がっていきました。
ロックともポップスともクラシックとも言えない、何とも不思議に耳に残るこの楽曲ができたことで、山口一郎はこれで一生音楽で食べていけると自信を持って断言したそうです。
しかし、その分、制作は難航を極め、それに伴ってレコーディングも長引いたことで、アルバムの完成はリリースの1ヶ月前というギリギリのタイミングとなりました。
またリミックスは山口一郎が尊敬するレイ・ハラカミに依頼していましたが、スケジュールの都合で断られたものの、諦めることなくオファーを続ける予定でしたが、結局はハラカミ自身が亡くなってしまったことで叶わなくなってしまいました。
ファン投票第1位に選出
2007年にデビューしたサカナクション。2017年にはデビュー10周年を迎え、それを記念した様々なイベントが行なわれました。
その一環として、2017年5月9日に新木場のSTUDIO COASTで記念イベントが行われ、その中の企画でファン投票によるサカナクションの人気曲ランキングが発表されました。
その中で栄えある1位に選出されたのが「目が明く藍色」です。
山口一郎のこの楽曲に対する思い入れの強さがしっかりと比例した結果になりました。
またこの10周年記念イベントの模様はAbemaTVでも生配信され、多くのファンの目に届きました。
それでは次のセクションで、そんな「目が明く藍色」の歌詞を紐解いていきます。
「目が明く藍色」の歌詞を紐解く
どこか懐かしい歌詞
制服のほつれた糸 引きちぎっては泣いた
変われない僕は目を閉じたまま また泣いた
藍色になりかけた空で 確かに君を感じて
出典: https://twitter.com/senjyodaikon/status/415084706539913216
制服の染みみたいな 嘘をついて泣いた
知りたいけど知りたくないことを知って 泣いた
藍色いや青い色した ずれて重なる光 探して 探して
出典: http://j-lyric.net/artist/a04d6c9/l01f90e.html
まずは誰もが共感できそうな歌詞から始まっていきます。
「制服」という言葉からは誰もが通る学生時代を想像できるのではないでしょうか。
思春期特有の心の葛藤が「ほつれた糸」や「染み」という言葉で表現されています。
「自分」とは何なのかを追い求め、しかし、何者にもなれなかった時の挫折感や、大人に近付いていくことで理解していく世間の不条理に対して、どうにもできないもどかしさが描かれた歌詞になっています。
またそこに「藍色」という色を重ねることで独特の悲しさや寂しさが心の中に広がってきます。
他にも、歌詞の中で特徴的な点として「泣いた」という言葉が繰り返し現れています。
主人公の幼さとそこからもう一歩大人になろうとしている姿勢が伝わってくる歌詞です。
この歌詞パートでは、思春期である青年の姿が描かれていると考えられるのではないでしょうか。
「藍色」というのも悲しさや切なさといった感情を表現するもの以外にも意味が隠されているのでしょう。
これは、学校の制服の色や青春という季節を表した表現としても使われているとは考えられないでしょうか。
「藍色」には多層的な意味が込められているのだと考えられます。
ゾッとする展開
そして、ここからフォーキーなメロディーから一転して、クイーンを想像させるようなクラシックともオペラともつかないメロディーに展開を見せていきます。