Nirvana【Downer】

収録されているのは

強烈なワードであふれかえる、Nirvana楽曲群のなかでも極めて異質な1曲。

それが今回とりあげる【Downer】です。

収録されているアルバムは『BLEACH』と『Incesticide』の2枚。

どちらもNirvanaにとっては意味深い名盤となっています。

『BLEACH』は彼らの初リリースアルバムとして。

『Incesticide』は貴重なデモ盤としてです。

Downerとは

Nirvana【Downer】歌詞和訳&意味を考察!歌う理由とは?世の中の何を例えているのかを深読みの画像

タイトルのDownerとはどういった意味なのでしょうか?

英単語の“down”は「下がる、下に」などの意味がありますね。

これに“er”が付くことで、「下がる人」という意味になります。

その意味はつまり「落ち込んでいる人」。

身体的な原因、精神的な原因を問わず、何かにさいなまれている人を指すでしょう。

フロントマンのカート・コバーンもさまざまな病気に、生涯を通して苦しめられていたそう。

つらいけれどもどうしようもない、そんな鬱屈した思いを音楽として表現したのです。

生前、彼が体験した、苦しく孤独ないくつもの夜。

その夜の闇のなかに見出した、さらに濃い心象風景の闇がいったいどのような景色だったか?

【Downer】の歌詞をもとに紐解いていきます。

第1パラグラフの解説

痛みを避けて

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Portray sincerity
Act out of loyalty
Defend your free country
Wish away pain

俺は誠実さを表明する
忠誠心によって行動を起こす
お前の自由な国を守る
痛みを避けて

出典: Downer/作詞:Kurt Cobain 作曲:Kurt Cobain

それでは歌詞を初めから見ていきましょう。

ここまでだと、まだどのような意味の曲なのか判断できません。

誠実」や「忠誠」などの普段はあまり見かけない単語が並びます。

“country”がどの国を指しているのかは定かではありませんが、おそらくはアメリカのこと。

Nirvanaがアメリカのバンドで、カートの出身地でもあるからです。

また“pain(痛み)”はある意味で彼の生涯のテーマだったキーワードでしょう。

悪魔の手術

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Hand out lobotomies
To save little families
Surrealistic fantasy
Bland boring plain

ロボトミー手術を施されるのさ
小さな家族を守るために
シュールレアリスムなファンタジーみたいだ
みんな無表情でつまらない奴らばかりだ

出典: Downer/作詞:Kurt Cobain 作曲:Kurt Cobain

ロボトミー手術」はもしかしたら聞きなれない方が多いのではないでしょうか?

これはかつて精神病者におこなわれていた手術のことです。

それは、脳の前頭葉と呼ばれる非常に大切な部分を切り取ってしまうというもの。

前頭葉を失った人間は、感情や情緒などの人間らしさをそのまま根こそぎ失います。

ロボトミー手術を受けた患者は、生涯に渡って無表情のまま、怒ることも笑うことも二度とありません。

この手術はおそろしい手術ですが、非常に西洋人らしい考え方です。

人が変わってしまったかのように突然暴れだすような精神疾患には、特に有効とされました。

犬の散歩でうつ病を治すような現代においては、遠い昔の出来事のように思えます。

しかしながら、残念なことにこの手術がおこなわれていたのは最近のこと。

20世紀に誕生したこの悪魔のような手術は、驚くことに日本では1975年までおこなわれていたのです。

カートが影響を受けたであろう映画

スラングとしての意味

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Holy now in restitution
Living out your date with fusion

今は神聖なる返還のときだ
お前と融合するための会合へ通っているんだ

出典: Downer/作詞:Kurt Cobain 作曲:Kurt Cobain