いまや世代を代表するバンドに
10~20代のBLUE ENCOUNTファンのみなさんへ
BLUE ENCOUNT、いいバンドに成長してくれました。
彼らはポップでメロディアス、でもハードコアでエモな一面もある。
どんな気分の時でも聴けるし、一人で聴くのもいいけど、みんなで唄ってもいい。
オタクなくらい色んなロックを知っていて、その影響が垣間見えるのに、格好つけたところはなくて、どんなリスナーも遠ざけることなく開かれている。
メッセージはどっちかと言えばシリアスなのに飄々としていて、ライブでは「パーティーバンドかよ?」って言いたくなるくらい、貪欲に盛り上げる!
本当に「みんなのバンド」になったんだなあ、と思うのです。
みんなのバンドって? 例えて言えば…
今から10年後、あなたが大人になって「10代の頃、BLUE ENCOUNT好きだったんだよね」と言った時、「俺も俺も!」と言ってくれるヤツに超高確率で出会えそう。「あ~、そんなバンドいたね~…」じゃなくて。
そんな妄想さえ「あるかも!」と思わせてくれる、ファンだったことが一人一人の幸せな思い出になるような、そんなバンドに成長してくれた気がします。
(「いや10年後もバリバリ現役に決まってるし!失礼な事言うな!」ってツッコミは無しで、お願いします(笑)。)
そして、伝説と肩を並べるバンドに
この記事をご覧の30代以上の皆様へ
「コンパス」のイントロ、タイトでソリッドに疾走するリズムセクションと、偏執狂的に反復する16分の単音ギターフレーズを聴いて「あっ、Buzzcocks」と思ってしまったあなた。
なにやら今、中~高生に大変な人気らしいバンドのBLUE ENCOUNTが少し気になっている、という皆様。
私が全力でオススメします。
80年代以降のパンク~NW、ミクスチャー、オルタナ、エモ等を聴いてきたあなたなら、今度の「VECTOR」というアルバムを聴けば終始ニヤニヤしっ放しになる事請け合いです。
そのサウンドにハイスタ、モンパチ、アジカンにEllegardenといった偉大な先輩バンドの陰がちらつくのは勿論のこと。 BuzzcocksやWeezer、Fountains of Waine等のパンク/パワーポップバンドの影響や、The FeeliesやPixies、RHCP(レッチリ)の熱やエモーションが隔世遺伝している事も、きっと感じて頂けるかと思います。
引用と消化がうまいだけのバンドなら、今まで掃いて捨てる程いたかも知れません。過去の優れたバンド達と比較して、似ているからBLUE ENCOUNTはいいぜ、と言いたい訳ではないのです。
彼らは年間に150本ものライブをこなしてきた、叩き上げの強者。演奏力、サウンドの強度、説得力がそんじょそこらのバンドとは違います。
ここ(3rdアルバム)にきて、いよいよそれがスタジオレコーディングにも反映されて来ているな、と強く感じます。
スタイルが似ているから、ではなく、唯一無二の個性を獲得したことで伝説のバンド達との距離が縮まったから。 だからBLUE ENCOUNTは、伝説と並べて語りたい気持ちにさせるのです。
New Album「VECTOR」を聴く
開放感にあふれた新境地
3月21日にリリースされたばかりの「VECTOR」。その収録曲を順番に聴いていきます。
オープニングM-1は「灯せ」。歯切れの良いカッティングに絡む田邊の声。いつもと変わらぬ声とギターですが、「≒」の頃と比べてずいぶんと安定感を増した印象です。
ギリギリまで追い詰められながら、それでも「僕ら」と「あなた」の為に必死で叫んでいるようだったあの頃。 田邊の声は今も昔も太く強く、バンドアンサンブルが鉄壁なのも昔から変わらないのに、何故今はこんなに安心して聴けるようになったんだろう(良い意味で)。
それは彼らが、その活動を通して獲得してきた自信のせいではないでしょうか。 言い換えれば、自分達の音楽への絶対的信頼と、誰かから必要とされる安心感と責任感。それが音像に現れるようになった、と思えるのです。
続くM-2「Waaaake!!!!」はアッパーなポップ・チューン。 今までにない程明るく、ポジティブなメッセージが響き渡ります。 ライブでシンガロングするキッズの姿が目に浮かぶよう。
ただしポジティブなメッセージと言っても、彼らの根底にあるのは厳しい現実への認識と、それに抗う意志だという事をお忘れなく。
次のM-3「コンパス」はBuzzcocksの1stをさらにビルドアップしたような、超タイト&ヘヴィなパワーポップ! もともとドラムの手数もギター&ベースの音数も滅茶苦茶多いバンドですが、この手の曲をやらせれば本気で右に出る者なし。
この無敵感、全能感。これを聴いて興奮しないヤツなんているのか?
頭3曲を聴いたところでもう、今回も傑作!という結論は確定。
「あとはこの良さが最後まで続けば100点満点だね」なんて余裕カマしていた私は、聴き進むにつれ、自分を思いっきり恥じることになります。
驚きと興奮の連続!
M-4「VS」、みんな知ってるパーティ・チューン。
祝祭感と幸福感。だけど唄っている人の目、全然笑ってません(笑)って感じのハイテンション。偏見や無力感と戦う為の、彼ららしいレベルソング(反抗の歌)でもある。
ライブでは再現不可能なエフェクトもバンドのテンションを後押しし、怒涛の勢いのまま次の曲へ。
M-5「RUN」、M-6「…FEEL?」と旧来の彼ららしくストレートでヘヴィなパンク/パワーポップチューンが続きます。
だけど…BLUE ENCOUNTって、こんなにメロディアスだったっけ? 今回、曲が粒揃いじゃね? ヴォーカルの上達も目覚ましく、「…FEEL?」のサビのファルセットボイスも、堂々とした歌いっぷり。 ノイズの壁に埋もれることなく、メロディーが耳に馴染む…。
ここまでアッパーでラウドな曲が6曲も続いてるのに、全く聴き疲れた感じがしない。 一糸乱れぬバンドサウンドと強く通る声に、一瞬も気を抜くことができません。
続くM-7「ハンプティダンプティ」は、Mother's Milk期のレッチリを思わせるファンク・チューン。 M-8「resistance」もファンキー、でもヘヴィ・ロックなイントロから「レッチリの次はLimbomaniacsかよ?」と思ったらいきなりMinor Threatを思わせるカオスな展開へ。 一寸先が全く読めない、しかし整然とした構築感と混沌が同居しているとしか言い様のない、圧倒的なWall of Sound。 間奏はまるでTelevisionのThe Blow-upのよう。初期NYパンクの興奮が蘇る…!
このテンションはアルバム最後まで続き、「次はこう来るか!」という驚きの連続でした。
本当に、よくここまで成長してくれた。 ここは彼らのキャリアの頂点であるばかりでなく、日本のロック全体の、一つの到達点と言えるかも知れません。
時代にその名を刻み付けた。次の一手は
文句なしの傑作、でも…?
前のアルバムの方が好きだった、という声も当然あるでしょう。しかし。ことバンドサウンドと歌の強度/普遍性に限って言えば、今作「VECTOR」が最高傑作で間違いないでしょう!
ここまでやってくれたとなると、「次の一手はどうするの?」と心配になってくる程です(まだリリースされたばかりなのにね)。
WireにBuzzcocksにNirvana。優れたパンク・スピリットを持ち、アルバム3枚でいなくなってしまったバンドのなんと多いことか。
「やり尽くしたとか、思ってない?」、「まさか解散しちゃわない?」そんな不安すら頭をもたげてくるのです(縁起でもねえ)。
…でも、BLUE ENCOUNTならきっと大丈夫! バンド公式サイトには「VECTOR」リリースに向けた特設ページがあるのですが、その「VOICE」欄に掲載されたメンバーのインタビューをぜひ読んでみてください!
(インタビューは公式ムック本「BLUE ENCOUNTぴあ」からの抜粋となっていて、メンバーが新作に感じている確かな手応えや将来への展望を語ってくれています。)