泣いてはダメと 胸にきかせて
白いハンカチを 握りしめたの

出典: 池上線/作詞:佐藤順英 作曲:西島三重子

一転してこの歌詞に出てくるのは私だけです。

すでに2人の関係は終わってしまったようです。

悲しいに決まっているけれど「泣かない」と自分で自分に言ったのでしょう。

ここでの「きかせて」は「言い聞かせる」と言い換えることもできますね。

それを「胸」に直接聞かせる歌詞は、強く訴えて自分への命令にも聴こえます。

涙をこらえるために手にしたのはハンカチ。

柄物ではなく「白」いそれは、もしかしたら相手が使っていたものかもしれません。

涙をふくためには使いたくないのでしょう。手にしているのは過去にあったことです。

思い出だけは手の中に残ることを願っているのでしょう。

もう戻らない

西島三重子【池上線】歌詞の意味を解釈!あなたが謝った真意とは?待っている私の街に戻らないのはなぜの画像

池上線が走る町に
あなたは二度と来ないのね
池上線に揺られながら
今日も帰る私なの

出典: 池上線/作詞:佐藤順英 作曲:西島三重子

独り街を縫うように走る列車に乗っている私。

ぼんやりと見ている車窓はあの日2人で見た景色と同じでしょう。

そして2人の関係に対して決定的なフレーズが出てきてしまったのです。

心の中でつぶやくように口にした、もうあなたは「来ない」。

「二度」とはないことがそれがもう既成事実であることをうかがわせます。

風の冷たさに耐えながら2人で乗っていた路線でした。

それでも2人一緒ならどこか守られていることも感じられたでしょう。

でももう独りになってしまったことで身体も心も「揺れ」ているのです。

独りで帰ることにまだ慣れてい、それよりも慣れることはないのでしょう。

「今日も」独りと自分をなだめながら、2人で揺られたあの日を思い出すのです。

あの夜のこと

不安はあったけれど

西島三重子【池上線】歌詞の意味を解釈!あなたが謝った真意とは?待っている私の街に戻らないのはなぜの画像

終電時刻を確かめて
あなたは私と駅を出た
角のフルーツショップだけが
灯りをともす夜更けに

出典: 池上線/作詞:佐藤順英 作曲:西島三重子

歌詞は私にとっては忘れられない出来事を綴ります。

2人一緒に最寄り駅に降りた時、まず取った行動は「終電」の確認でした。

あなたは私の家に泊まることは無いのです。

今日中に帰らなけらばいけないと同時に、帰るべき家があることを表していますね。

決して公にはできない2人の関係だけど、家までは一緒に行こうと言ってくれたのでしょう。

改札を出るとすぐに小さなお店がある街を、なぞるように歌詞にしていますね。

今とは違って駅前にコンビニは無い時代です。そこにあったのは果物だけを売る店の「灯り」。

店先の電球の光が心を照らしてくれました。

あなたを独り占めできる家に着くまでの時間。不安もあったけど幸せな瞬間でもあったのでしょう。

一緒に歩いた道

商店街を通り抜け
踏切渡った時だわね
待っていますとつぶやいたら
突然抱いてくれたわ

出典: 池上線/作詞:佐藤順英 作曲:西島三重子

だんだんと私が住む家に近づいているようです。

商店街が途切れて次に渡る「踏切」、そして住宅街へと入って行くのでしょう。

私の家が見えてきたのでしょうか。

終電に間に合うように駅に戻るためにはあまり時間が無いのかもしれません。

だからここで告げたのでしょうか、「待っている」と。

それに対しての答えとして、反射的に相手は腕を回してくれたのです。

2人とって最後の夜だったのでしょうか。部屋に入ってゆっくり話せば余計に別れが辛くなるでしょう

別れられなくなる前に、断ち切らなければいけない関係です。

心の中では分かろうとしている、このまま腕の中にいてはいけないということ。

それでも今夜の2人を、記憶の中から消すことはできないのです。

独りで

西島三重子【池上線】歌詞の意味を解釈!あなたが謝った真意とは?待っている私の街に戻らないのはなぜの画像

あとからあとから 涙あふれて
後ろ姿さえ 見えなかったの
池上線が走る町に
あなたは二度と来ないのね
池上線に揺られながら
今日も帰る私なの

出典: 池上線/作詞:佐藤順英 作曲:西島三重子

関係を終わらせることをかろうじて受け入れた夜。

あなたは終電に間に合うように駅へ戻って行くのでしょう。

家から最寄り駅までの距離は長くはないけれど、駅まで見送ることはしませんでした。

帰り道が危ないからと気遣ってくれたことも想像できますね。

だから「後ろ姿」を見送りました。その背中が見えないくらいに泣いた夜です。

別れたばかりですから、涙をこらえる必要はありません。

今なら涙と一緒に、もう終わった2人の日々を流せるでしょう。

あなたはいないけれど走り続ける列車。明日もまた私はその列車に乗って出かけます。

この街で独り生きていく日常は始まったばかりです。