1人の犠牲も許さない
誰かが貧乏くじ引いて
一人きり泣いているのなら
夜が明けたって I don't give up
眠らないで踊るよ
気が済むまで付き合おう
犠牲はしょうがないなんて
部外者に言わせるものか 私が許さない
出典: ダンスの理由/作詞:秋元康 作曲:平手友梨奈・辻村有記・伊藤賢
ここにも彼女の優しさが現れています。
私たちの生きる社会では、集団が優先され、個人がその犠牲になることがあるでしょう。
学校でのいじめや、社会的弱者の存在など、枚挙にいとまがありません。
そんな存在を、集団や社会はしばしば見て見ぬふりをします。
しかし、彼女は強い意志を持って彼らを守ろうとします。
「集団の幸せのしわ寄せを食らう人があってはならない」という彼女の強い思いが現れています。
過去の自分を救う
もしも同じような 境遇ならば
同じ目に遭わせない
いつかの自分 死なせない この腕で守る
出典: ダンスの理由/作詞:秋元康 作曲:平手友梨奈・辻村有記・伊藤賢
ここでも、苦しんでいる者を自分の過去と重ね合わせています。
結局 あの娘を見てると 一番辛かった頃の私を思い出すの
誰かがいてくれたら普通でいられた
誰もいなかったから 仕方なく
踊るしかなかったんだ
出典: ダンスの理由/作詞:秋元康 作曲:平手友梨奈・辻村有記・伊藤賢
ここでは自身が経験した辛い孤独な過去を明かしています。
自分も辛かったからお前も我慢しろ、と彼女は決して言いません。
彼女は自身も経験した苦しみが理解できるからこそ、彼らを救ってあげようとしています。
ここにも彼女の利他心が強く現れています。
「獣」との和解、そして信頼
自分を殺してでも他人を救う
MVのラストでは、彼女は天を仰いで地面に倒れこみます。
自身を犠牲にしてでも他人を救うことを選んだ彼女。
思えば彼女は欅坂46の時代から、ずっと同じことをしてきたのではないでしょうか。
彼女のパフォーマンスは「現代の尾崎豊」とも言われ、若者の苦しみを代弁してきました。
欅坂の楽曲には若者の生きづらさにフォーカスした曲が数多くあります。
そんな楽曲たちは、孤独や生きづらさを感じる人々の大きな救いとなったことでしょう。
しかし、そうした活動の中で自身が苦しい思いをすることが多々あったと思います。
にも関わらず、彼女は表現することを諦めませんでした。
結果として、こうして現在も私たちの胸を打つようなパフォーマンスを披露してくれているのです。
タイトル「ダンスの理由」とは
ズバリ、ダンスを踊る理由は、「苦しんでいる者を救うため」でしょう。
MVに登場する獣の面を被った男は、最初は彼女と戦う姿勢を見せました。
しかし最終的には彼女と心を通わせ、彼女たちと一緒に踊ることを選びます。
一見部族の「敵」に思える者にも救いの手を差し伸べる。
そして彼を救う為に、自分は踊り続ける。彼を絶望から救い出すために。
この曲はそんな彼女の優しさ、そして今後の活動への強い意志が現れた楽曲なのではないでしょうか。
さいごに
平手友梨奈さんの「ダンスの理由」を、MVを中心に解説していきました。
今作は紛れもなく彼女のこれまでの人生経験が基になっています。
この曲を聞いて、これまでの彼女への関心が高まった方へ。
ぜひ平手友梨奈さんが4年半にわたり所属した欅坂46の楽曲をチェックしてみてください。
グループを飛び出す前から、彼女の存在感・表現力はすさまじいものがありました。
楽曲も彼女の思いを代弁したような歌詞になっています。
「黒い羊」はまさに今作の「獣」とも重なる部分があります。
集団のスケープゴートとなった「獣」側の苦しみを表した曲といえるでしょう。