主人公がもう忘れたと思っていた別れた恋人の記憶。

ふと、座っている時に、彼に膝まくらしていた時の重さを思い出します。

付き合いがずいぶん長かったせいで、恋人の頭の重さも覚えてしまっているのです。

頭では忘れているはずなのに、身体がまだ覚えている状態なのでしょう。

それをきっかけに彼の煙草を吸っていた姿まで思い出してしまいます。

思い出さないようにしていたのに、こんなことで簡単に思い出してしまう。

まだ、自分がこんなにも彼を愛しているということに、気づいてしまいました。

憎い 恋しい 憎い 恋しい
めぐりめぐって 今は恋しい

出典: 雨の慕情/作詞:阿久悠 作曲:浜圭介

未だに自分を苦しめる彼を憎いと思ったり、恋しいと思ったり忙しい。

主人公は、もう何周も想い苦しんだ末に、今は会いたい気持ちでいっぱいです。

こんなにも心をかき乱す彼を憎いと思うけれど、結局会いたくなってしまう。

人の感情のままならない様子が良く表現されています。

雨々ふれふれ もっとふれ
私のいい人つれて来い
雨々ふれふれ もっとふれ
私のいい人つれて来い

出典: 雨の慕情/作詞:阿久悠 作曲:浜圭介

雨が降ると内向的な気持ちになりませんか?

寂しくなったり、不安になったり。

雨が好きだという方もいるでしょうが、どちらかというとネガティブなイメージがあります。

雨の際は外出も控え、家でゆっくり過ごす方も多いのではないでしょうか。

主人公もそんなタイプのようです。

家で一人過ごすと、つい色んなことを考えてしまう。

いつもは「あのひと」を思い出さないように、外出して気を紛らわしていたのかもしれません。

主人公は雨によって、自分の気持ちに向き合うこととなってしまいます。

恋しい「あのひと」への気持ちがどっとあふれ出て、胸がいっぱいになってしまうのです。

「あのひと」も雨が降って同じように自分のことを思い出していればいいのに。

そして、自分のことを思い出して、戻ってきて欲しい。

そう、主人公は願っているのかもしれません。

寂しさを埋めようとする主人公

生活の中にも、まだ「あのひと」の存在が消えていない

一人で覚えた手料理を
なぜか味見がさせたくて
すきまだらけのテーブルを
皿でうずめている私

出典: 雨の慕情/作詞:阿久悠 作曲:浜圭介

別れてから覚えた手料理を、食べる人ももういないというのにもう一人分作ってしまう。

「すきまだらけのテーブル」は主人公の心の例えでもあります。

寂しい気持ちをなぐさめるために「皿でうずめている」わけです。

長年染みついた2人暮らしの習慣が未だに抜けないのかもしれません。

座ったり、料理を作ったり…

そんな何気ない生活の中でも「あのひと」をつい思い出してしまう。

切ないですね。 

きらい 逢いたい きらい 逢いたい
くもり空なら いつも逢いたい

出典: 雨の慕情/作詞:阿久悠 作曲:浜圭介

「憎い 恋しい」よりも表現が軽くなっているところに注目してみてください。

「きらい」とひらがなで表現しているところが、女心のいじらしさを表している気がします。

憎らしいよりは心を許しています。かわいらしい印象もありますね。

本当は好きでたまらないのに、「きらい」と口では言っている……

今風に言うと、「ツンデレ」でしょうか。

雨の日の「あのひと」との思い出

もしかして「雨」が降るかもしれない「くもり空」の時でさえ、逢えるのを期待してしまう。

雨が降れば自分の心の中に「あのひと」との思い出が蘇るからでしょう。

ここまで「雨」と「あのひと」を結び付けて考えている理由は一体何でしょうか。

主人公と「あのひと」は雨の日に一緒に過ごした思い出があるようにも受け取れます。

「急に雨が降ってきたから、雨宿りさせてよ」

ただ会いたいだけなのに、そんな言い訳をしながら部屋を訪れたのかもしれませんね。

主人公もそれに気づいていながらも……

「仕方ないわね」

なんて言いながら部屋に通したんじゃないでしょうか。

膝まくらしているくらいなので、「あのひと」は主人公に甘えているような関係だったのかも。

雨々ふれふれ もっとふれ
私のいい人つれて来い
雨々ふれふれ もっとふれ
私のいい人つれて来い
雨々ふれふれ もっとふれ
私のいい人つれて来い
雨々ふれふれ もっとふれ
私のいい人つれて来い

出典: 雨の慕情/作詞:阿久悠 作曲:浜圭介

雨が降れば自分の心の中に、「あのひと」を思い出すことができる。

だから、「もっとふれ」とけしかけているんです。

そして、もしかしたらまた「急に雨に降られてしまった」と本物の「あのひと」も来るかもしれない。

そんな期待を雨に込めているのではないでしょうか。

雨が降ると、失恋の古傷は痛みますが、同時に甘い思い出も蘇る。

失恋の痛さを思い出すこともあり、「憎い」と思うこともありました。

でも、甘い思い出の方が勝るほど、「あのひと」のことを主人公はまだ、愛しているのです。

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