こんな気持ちだけ 名前があるだけ
手を握るたび プログラムだってこと?
誰にも当てはまることない 基準なんていらないよ

出典: ヒューマノイド/作詞:ACAね 作曲:ACAね

感情を持っていることや名前があることが「人間」の証、という考えに疑問を抱いています。

ヒューマノイドに触れ、何らかの反応が返ってきたとしても、それは主人公自らが設計したものです。

しかし、設計の範囲を超えた感情をヒューマノイド自身が獲得していたら、主人公はそれに気づくでしょうか。

人間とヒューマノイドの境界線は、思いのほか曖昧なのかもしれません。

思いを理解して欲しい

主人公は自身の感情を相手に刻むことができずにいます。

そこで思いついた方法は、自分に刻むことでした。

奇跡を知るための感情

浮かんでいるだけの あの泡に 名前がある
この世界には
再現困難の 表情が 意味を持つ
言葉も要らぬほど

出典: ヒューマノイド/作詞:ACAね 作曲:ACAね

世の中に存在する「物」には大抵名前があります。そのため、名前がある=人間とはいえません。

人間を人間足らしめている特徴の一つが、感情によって変わる複雑な表情ではないでしょうか。

嬉し涙と悲しい涙は、涙の色ではなく泣いている人の微妙な表情の差で見分けられます。

嬉しい、悲しいと説明する必要はないのです。

生まれて死ぬまでを 人間は
一度しか 辿れないのなら
何度も壊しては 組み立てて
奇跡だとか 確かめていたいだけ

出典: ヒューマノイド/作詞:ACAね 作曲:ACAね

人間は生まれた瞬間から死に向かって歩き出し、後戻りはできません。

時間を巻き戻すような奇跡は起こりえないのです。

しかし、人間が最も叶えたい奇跡なのかもしれません。

人間が持つ感情は常に揺れ動き、怒りや悲しみで傷ついてどん底に落ちることがあります。

しかし大どんでん返しが待っていたり、ありえない幸福が訪れたりしたら、それを「奇跡」と呼ぶのではないでしょうか。

一番の奇跡は叶えられないけれど、奇跡がどんなものなのか知りたい人間たちは、感情を揺らしながら奇跡を理解していきます

名前の有無は関係ない

桃味の 炭酸水に2人潜り込んで
少し泣いても わかんない具合に 晦ましあえた

出典: ヒューマノイド/作詞:ACAね 作曲:ACAね

桃味ということは甘い味ですね。そこにいる二人は一見幸せそうに思えます。

彼らの足元からふつふつと小さな泡が立ち昇り続けていますが、きっといつか終わるはずです。

「泡」という名前を持った物体もまた、永遠ではないのです。

しかし泡が立ち上っている間は涙をカモフラージュしやすかったのではないでしょうか。

また、炭酸水=サイダー、サイダ=生、命=泡(泡沫)とも考えられます。

「思っている自分」を残したい

きっと震えさえ この重ささえ
届かないのなら ボタン押して消去しよう
揃わない記憶を全部 解答したって不安を増すんだ

出典: ヒューマノイド/作詞:ACAね 作曲:ACAね

理想には程遠い中途半端なヒューマノイドの状態が続いていることに、責任を感じているのではないでしょうか。

少しずつ減っていく残り時間の中で、恋愛感情を正しく植え込むことができるのかも分かりません。

こんなにも悩んでいるけれど、ヒューマノイドはそれを感じ取ってはくれないようです。

今までヒューマノイドが獲得してきた記憶が歯抜け状態で、プログラムがうまく実行されていないのかもしれません。

抜け落ちた部分を補完してもそれを保持できるとは限りませんし、補完すればうまくいくという保証もないのです。

だったら思い悩まずに済むよう、ゼロに戻してしまおうと主人公は考えます。

そんなメモリだけ 名前があるだけ
目を逸らしたら 錆びてしまうけれど
遮る無駄な思考回路も 傷になって触れたくて
言えるかな

出典: ヒューマノイド/作詞:ACAね 作曲:ACAね

記憶領域を持っているのはヒューマノイドも人間も同じです。名前だってつけられます。

しかし主人公がヒューマノイドを見放したら、時間とともに劣化が進んでしまうかもしれません。

劣化しても故障しても死なないのがヒューマノイドです。

ですから、特定のプログラムを消したところでその機能が欠落したヒューマノイドが残るだけなのです。

それを分かっている主人公は、プログラム消去を実行する気なんてありません

思い通りにヒューマノイドを動かせないし、ヒューマノイドは自分の努力や苦労に気づいてくれない。

だからヒューマノイドをまるで「モノ」であるかのように扱おうとする悪い自分を、頭の中で作り出したということです。

そんな自分は最低だ、と傷つくでしょう。でもそれは、ヒューマノイドを思うからこその思考です。

自分の思いが相手に伝わらないのなら、思っていた事実を傷として残しておきたいのでしょう。

実行する気はないけれど、ヒューマノイドに伝えてみようかなと考えています。