androp『For you』の歌詞を皆様にお届け!
水面に落ちる水滴みたいに透明な歌声と、広がる波紋のような優しい響き。
andropの『For you』を初めて耳にした方はきっとこんなイメージを抱くでしょう。
サウンドだけではありません。この曲の歌詞もまた澄み渡っていて、リスナーの心を優しく包み込んでくれます。
作り込まれていないからこそ胸を打つMV
For you
日本郵便「ゆうパック」タイアップソング。
2019年2月5日、J-WAVE「SONAR MUSIC」にて初オンエアされた。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Koi_(andropの曲)
長崎県の離島で暮らす高校生をクローズアップしている『For you』のMV。
シナリオのないリアルなドラマが観る者の胸を打ちます。
実はこの曲、「ゆうパック」のタイアップ曲なのです。
ゆうパックといえば、全国どこにでも荷物を配達してくれるイメージがありますが……。
この曲の歌詞とはどのような繋がりがあるのでしょうか。
『For you』の歌詞を紐解いてみましょう。
ありがたみを知るのは離れてから
新しい暮らしへの期待と、置き去りにした暮らしを求める寂しさ。
後者に気づくには、少しだけ時間が必要なようです。
後悔の涙はもういらない
涙は誘う 今も
新しい気持ちやその言葉
出典: For you/作詞:Takahito Uchisawa 作曲:Takahito Uchisawa
冒頭の歌詞に違和感を感じた方が少なくないでしょう。主語が「涙」なのです。
「涙を〜」であれば聞き慣れた言葉ですが、この曲では違います。
卒業や就職、転勤によって住み慣れた町を離れることを余儀なくされた人々。
この曲のMVでは、高校を卒業して島の外に出ていく若者たちです。
家族や友人と離れて暮らし始め、新しい環境にすぐに適応して毎日を楽しく過ごす人もいるかもしれません。
しかし、楽しんでいる素振りを見せているだけで、家の中でひとりきりになると寂しさがこみ上げてくる人もいるでしょう。
そんなとき、涙とともに思い浮かぶものがあります。
それは、夢を叶えるのだと決意したときの前向きな感情。あるいは「またね」と普段どおりに交わした別れの言葉。
夢を語る明るい声は、夢のために生じる別れを思った途端に暗く沈むはずです。
すぐに会えるからと素っ気なく手を振っても、もう二度と会えないような不安に襲われたのかもしれません。
あの時素直に泣いていたら、何かが伝わったのではないか。そんなことを考えてしまいます。
重なる地平線の向こうに
空と鳴き交わす鳥のよう
出典: For you/作詞:Takahito Uchisawa 作曲:Takahito Uchisawa
随分な距離を感じる表現ですね。そんなにも遠い場所にいる鳥の声は、はたして聞こえるのでしょうか。
もしかしたら聞こえるかもしれません。しかし気のせいなのでは?と感じるほど小さな音です。
その鳥の話し相手は別の鳥ではありません。返事を求めても返ってくる相手ではありません。
つまり鳥の行為には何の意味もない、ということでしょう。
故郷を離れた今、涙することも後悔することも何ら意味を持たないのです。
得たものの多さに気づく
気づけば もらったのは
数え切れないほど大切なもの
出典: For you/作詞:Takahito Uchisawa 作曲:Takahito Uchisawa
様々なものを手放さなければならないのが「別れ」です。
友人との大切な時間や海が見える部屋も、新居に入り切らないベッドも手放して別れの支度をしたのでしょう。
しかし手放すばかりではありません。
例えば母親は、新生活で困らないようにと得意料理のレシピを教えてくれたかもしれません。
友人は「向こうに行ってから読んでね」と口にするのが恥ずかしい感謝を綴った手紙をくれたかもしれません。
港の漁師さんは美味しい魚の見分け方を教えてくれたかもしれません。
これらは無くても生きていけるものです。しかし失くしたくない、かけがえのないものでもあります。
役に立つかどうかは関係ありません。
ただただ自分を思ってくれる人が沢山いたということに気づきました。