須田景凪「MOIL」は映画「二ノ国」主題歌
幻想的な歌詞になっている
須田景凪さんはMVの映像も歌詞の言葉選びも、独特の美学で貫かれているところが魅力です。
とくに「MOIL」のMVで目を引くのは、子ども用プールに足先だけ浸かる須田さんの姿でしょう。
しかも何やら謎めいたパスタを食べようとされています。
もちろん歌詞の内容を反映させるために、このような摩訶不思議な光景になっているはずです。
つまりこの歌詞こそが、やはり須田さんならではの幻想的な世界観になっていると考えられます。
映画版MVも見てみよう
「MOIL」は2枚目のEP「porte」(ポルテ)に収録されています。
さらに人気アニメ映画「二ノ国」の主題歌としても起用されました。
そのためこの曲には通常のMVとは別に、映画版MVが存在します。
もともと「二ノ国」はRPGとしてスタートしていて、ゲームがアニメ映画化されたかたちです。
ゲームやアニメ好きの方がこの映画を観て、主題歌の良さに気がついたパターンもあるでしょう。
逆に、須田さんのファンで「MOIL」がお気に入りでも、まだこの映画を観ていない方もいるかもしれません。
この映画版MVを観るだけでも何となく「二ノ国」の雰囲気はつかめるのではないでしょうか。
ただ「MOIL」の歌詞を深く理解するためには、「二ノ国」についても押さえておきたいところです。
アニメ映画「二ノ国」とは
こちらが「二ノ国」の予告映像です。
監督、原作、脚本、音楽、声優陣、すべてが豪華な超大作になっています。
須田さんファンの方ならやはり実際に観るべき映画という話ですね。
念の為「MOIL」の歌詞解釈に役立つ映画のポイントをまとめました。
- 高校生3人が現実「一ノ国」から異世界「二ノ国」へと迷い込む。
- ヒロインの名前はコトナ。
- 命に関する残酷な決まりがある。
これからこの映画を観る方も、こうした点を踏まえて「MOIL」の歌詞を見ていきましょう。
歌詞の解釈をチェックしよう!
タイトルとパスタの答え
思い出すのは砂を噛む様な
茹だった焦燥と幼い白昼夢の続き
出典: MOIL/作詞:須田景凪 作曲:須田景凪
いきなり須田節全開です。
日本語の美しさに惚れ惚れしているうちに「二ノ国」を彷彿とさせる異世界へと誘われます。
どの言葉にも深みがあるのでそれぞれ酔いしれていくことにしますが、先に要点をまとめましょう。
歌物語の主人公は「焦燥と続きを思い出す」と言っています。
その「焦燥」と「続き」に色々形容する言葉がくっついているわけですね。
異世界にまぎれ込んだかのような今、昔の現実を思い出している。
そんな話でしょう。
ここからは言葉それぞれの確認です。
焦燥は焦り(アセり)、「砂を~」はつまらない状態を意味します。
砂を噛んでも味がしないので無味乾燥、味気ない、味わいがない、おもしろくない、といったつながりです。
「うだる」と発音されているところの意味は「茹(ゆ)で上がったような」で伝わるでしょうか。
実はここでもう、「MOIL」というタイトルの意味とMVのパスタの謎が解き明かされているのです。
「MOIL」は動詞で「あくせく働く・沸く・茹だる」、名詞で「骨折り仕事・混乱・騒ぎ」を意味します。
「つまらないのに大騒ぎしてアセっていた感じ」と「子どもの頃の空想の続き」を思い出しているのでしょう。
現実から異世界へワープ(瞬間移動)したかのよう、というのは「思い出す」がヒント。
主題歌として「二ノ国」の世界観も意識されているのでしょう。
映画でも描かれる混乱状態を、まるでパスタが茹で上がるような大騒ぎ=モイルに見立てたのかもしれません。
しかもMVで須田さんが食べようとしていたパスタは「砂を~」の部分も関係あるのでは?とも解釈できそうです。
砂混じりのパスタを抽象的なオブジェで表現されたのかもしれません。
過去と現在を対比している
今となっては
あの感触も笑えるほど
するり 手からこぼれてしまった
出典: MOIL/作詞:須田景凪 作曲:須田景凪
この部分の歌詞では「現実と異世界」というより「過去と現在」の対比のほうがクローズアップされています。
ドタバタした過去も、今では冷静に感じられるようになったわけですね。
ただ、その過去と現在の心境の違いを成長と捉えて喜んでいるかというと、そうでもないかもしれません。