死によってもたらされる消化しきれない気持ち

パチンと弾けて 泡のように消えた
呆気のない運命が心を抉った
確かに感じた 仄かに歯痒い
過ぎ去った運命に囚われたままで

出典: 泡/作詞:常田大希 作曲:常田大希

死に際、自分がこれまで歩んできた人生に、少しの後悔もなく大満足という人はどのくらいいるでしょうか?

人の死は、多くの場合突然やってきます。

それまでどのような人生を生き、精いっぱいの成果を残したとしても、終わるのは一瞬

そのあっけなさや、やるせなさが歌詞に込められているようです。

どうして。

まだやりたいことがあったのに。

なぜここで死ななければならないのか。

その気持ちは心を抉るように、つらさをもたらし歯がゆさを感じるもの。

 ここで死ぬという運命を、とても恨めしく感じているような気持ちが伝わってきます。

過ぎ去った運命とは

この歌詞の中にある「過ぎ去った運命」とは、歩んできた人生そのものです。

人は毎日をどれだけ必死に生きていても、死ねばその人生が一瞬で過去のものになる。

いつ生まれ、どのように成長し、どのように生き、死んだのか。

死を迎えることによって、その人が生きた一生がどのようなものだったのかが決まるのです。

もし死ぬタイミングが違えば、その人の一生はまた違ったものに。

ここで終わるか、もう少し先で終わるかによって死を迎える人からすれば抱く感情は違うでしょう。

この歌詞に出てくる人物の一生は、後悔するものだったのか、大成功だったのかはわかりません。

けれど、その人生に死後も囚われているのは事実。

後悔するものだったなら、ああすればよかった、まだ挽回できたのにといった意味で囚われているのでしょう。

大成功なら、もっとその成功に浸っていたかった、もっと結果を残したかったと思っているかもしれません。

どちらにせよ、突如訪れる死は、誰にとってやるせなく受け入れ難いものであると伝えたいのでしょう。

人の死によってもたらされる後悔の念

大切な人の死

パチンと弾けて 泡のように消えた
あなたは今もどこかで 元気ですか
あの夏の匂い 仄かに歯痒い
いつしか夢中で 追いかけてたのは影

出典: 泡/作詞:常田大希 作曲:常田大希

この曲の中で消えた命は、主人公にとって大切な人だったのでしょう。

生き方や考え方などに共感し、尊敬するような存在の人だったようです。

しかし頻繁には会わないような人。

誰しもそのような人は一人くらい存在するのではないでしょうか。

主人公は、その人に近づきたくて、時には思い出しながら日々を過ごしていたのでしょう。

しかし、自分が追いかけていたその人は、知らないうちにんでしまっていたのです。

もしかすると、その人と最後に会ったのが夏の日だったのでしょう。

もし、そのときその人が死ぬとわかっていたなら、その夏の思い出はもっと違うものになったはず。

伝えたかったことはしっかり伝えて、夏以降も頻繁に会うなどしていたかもしれません。

そう思うと、主人公からすると最後に会った夏の日が悔やまれるのです。

どうしようもないことだとわかっていても、歯がゆいのでしょう。

生きていると思っていた人が死んでいたという命の儚さ

主人公が追いかけていたは、もうこの世にはいない人の人生です。

その人が死んでしまったと知らずに、追いつこうと頑張っていた自分がいたのでしょう。

生きている人の人生に憧れて日々励んでいたのに、気づけばその人はいなくなっていたのです。

その事実を知ったときの主人公を襲う、後悔の念は計り知れません。

最後に会った夏の日をやり直したいと思う、やるせない気持ちが沸き起こったでしょう。

死んでしまったとわかっていても、これまで通り時々その人のことを思い出す自分。

頻繁に会っていたわけじゃない自分にとって、その人は変わらず今も心の中にいるのでしょう。

ねぇ、本当にあなたは死んでしまったのですか?

そう聞かずにはいられない、処理しきれない気持ちを抱いています。

「人の死」とは、死ぬ側にとっても残される側にとってもとても歯がゆいものでしょう。

どうしても消化しきれないものや、やりきれなさが残るものだと伝えたいのです。

泡のような人生だからこそ、1分1秒を大切に生きる

いつ死ぬかわからない人生。

それは明日かもしれないし、1週間後かもしれないし、1年後、数十年後かもしれません。

あるいはもしくは、数分後の可能性もあります。

そのように思うと、この曲の主題歌となった「太陽は動かない」の二人が生きる人生は特別なことではありません。

ただ、いつどうすれば死んでしまうのかを知っているだけ。

死のリミットと、どうすれば生き延びられるのかを知っているのは、逆に幸せなことのようにさえ感じられます。

人の多くは、自分の人生がいつ終わるのかさえわかりません。

死を身近に感じない分、ついのんびり過ごしてしまいがち。

それが決して悪いということではありません。

ただ、いつ死が来ても後悔しないように、日々をもっと大切に生きていきたい。

切なくも前向きな気持ちになる曲でしょう。

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