言霊は形を成し映し出す篝火(かがりび)
咲き誇れ、永久(とこしえ)に響かせよう
出典: Ignite/作詞:町屋 作曲:町屋
「言霊」という、音楽表現の一部である歌詞に言及されます。
次の「篝火」は、「灯火」と対になった表現で、言い換えでもあります。
どちらも人間が何らかの意図を持って灯す火のことであり、自然界の火(火山など)ではありません。
音楽という音を「響かせ」、自分たちの奏でるそれを誰かの「灯火」にするという意志が伺えます。
灯すのも、また灯されるのも人なのです。
ここで間奏が入り尺八や三味線、和太鼓が大活躍します。
自分の「中」から「外」へ
そうさ、まだまだ止まらない
好奇心が描く音の地図
想像するほど高まっていく
鼓動は走り出し熱を帯びる
脳細胞から放たれる
パルスのまま走れ
果てるまで
想像の域を超えて行く
駆け抜けた景色さえ抱き締めて
出典: Ignite/作詞:町屋 作曲:町屋
ここまでは音楽に関する自らの火(熱意)を確かめ、それを「響かせる」。
いわば主体的な意思表明でした。
燃える火は自らの内部にあったわけです。
ここにきてその意志が高ぶっていくと、さらに発展するプロセスに移行しています。
自己の内部の燃える意志を、外に放出する段階です。
それが6行目と9行目の歌詞に表れています。
しかもそれは、限界まで続くフルスロットルの勢いです。
アクセスを吹かせたまま、曲はクライマックスへと向かいます。
ミッションの正体が明らかに
抵抗を打ち破る
Hey. I can’t hear you.
ここまで来たら
Keep on fighting.
灰になるまで
そう、しなやかな鋼の様に
束ねた絆と意志だ
出典: Ignite/作詞:町屋 作曲:町屋
1行目は「おい、聞こえないぜ」という台詞です。
相手の言い分なんか聞かない、ということでしょうか。
「他人の話を聞かないなんて」と思うかもしれませんが、相手の言っていることが的を射ているとは限りません。
自分たちに対する心無い誹謗中傷の可能性すらあるのです。
賛成があれば、必ずといって良いほど反対もあります。
強かな意志で物事を進めようとすれば異論はつきもので、抵抗勢力が登場するのが常です。
しかし「お前の声なんか聞こえない」と抵抗勢力を一蹴し、すべて倒すその時まで戦うと宣言します。
もっともここでいう抵抗勢力は、特定の他人ではないかもしれません。
人間は誰でも弱さを抱えるもの。
「無理をするなよ」という心の中の声でもあるのではないでしょうか。
そのような弱さは、怠慢を生み出します。
それを克服して自らを前進させるものは、「絆」そして「意志」です。
ミッションは複数の人々、つまりグループに課せられたものでした。
メンバーが互いを繋ぐ思いがあって、初めて達成されるものなのです。
仲間たちのためにも、弱い心に打ち勝たなければなりません。
「クビ覚悟」のミッションだった
天変地異轟かす雷鳴
狙うは天辺起こすハリケーン
列島から炎上して前方から遠方ヘ
ローラー掛けてオーダーキメる
ミュージシャンシップに則り Just do it.
怠けたらクビ飛ばされる覚悟だ
プリンプリンの未来が待っている
さあ持ってる才能フル回転ハイペース
出典: Ignite/作詞:町屋 作曲:町屋
ここも町屋さんのシャウトで歌われます。
「天変」と「天辺」、「前方」と「遠方」、「ローラー」と「オーダー」…。
このあたりも語呂合わせです。
そして5行目以降、ついにミッションの全貌が明らかになります。
炎がたぎる心で臨む決意を固めた集団は、「クビ」にされる覚悟を持ったミュージシャンだというわけです。
サボれば「モブ」の中にいる1アーティストに成り下がってしまいます。
そのような存在では、世界には羽ばたけないでしょう。
クビにならないよう、できる限り自分の持ちうる能力・技能で頑張らなくてはなりません。
これは音楽や絵、小説などといったクリエイティブ系のものに共通するものでしょう。
いわゆる「才能」の世界です。
ここでは「自分たちのできることを精一杯やる」という、「熱」を宿し続けるという決意が表明されています。
「Ignite」は「和楽器バンド宣言」である!
和楽器バンドの「使命」とは
天界からのミッションを背負っているのは、和楽器バンド自身です。
そもそも映画等でも度々使われるミッションとは、「任務」という意味。
この言葉は元々キリスト教(聖書)における宣教や伝道、とくに外国で行うものを指しています。
転じて、キリスト教徒にとっての「使命」という意味でもあるようです。
つまり和楽器バンドが負ったミッションの内容は、自らの歌を世界に届けることといえます。
ロック界の「灯火」となることにほかなりません。