震えてるのはきっと 寒さのせいだけじゃないな
どんな台詞もきっと 役に⽴たないな
出典: embrace/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
ここでは「寒さ」と歌われていて、言葉通りに捉えても一つのストーリーとして楽しめます。
しかし今回解釈しているテーマに当てはめると、非常に深い考察ができるでしょう。
まず「寒さ」は「後悔」と考えることができます。
言葉を飲み込むことができなかったことで、相手を傷つけてしまった自責の念があるのでしょう。
または謝っても失言は覆らないという失望もあるのかもしれません。
この後悔をひっくるめて「寒さで震えている」と例えているのではないでしょうか?
2行目の歌詞からも同様のことが連想できます。
もう一度話し合えるまで
腕の中へおいで 抱えた孤独の
その輪郭を 撫でてやるよ
明かりの無い部屋で ⾔葉もくたびれて
確かなものは 温もりだけ
出典: embrace/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
ペットが飼い主に抱かれて気持ちよさそうにしているシーンがイメージできるでしょう。
しかし今回の考察では全く違う視点から見ていきます。
このサビで伝えたいことは「俺はいつでも受け入れる準備ができている」ということではないでしょうか?
こうして曲全体を見ていくと「embrace」という曲名の意味がわかりやすいはずです。
顔を撫でるというのは「そういう考え方もあったのか」と相手を尊重することといえるでしょう。
孤独を抱えているということからも「相手は誰からも理解されなかった」はずです。
だから主人公は「もう一度聞いてやる」と手を広げているのでしょう。
温もりの意味とは?
「温もり」と聞くと何をイメージしますか?
優しさや安心感などが思い浮かぶはずです。
または「相手が存在していること」を確認できるという人もいるでしょう。
このように相手の体温から伝わってくる情報は膨大だということを意味しているのではないでしょうか?
「だからこそ信憑性がある」とここで歌っています。
明るい場所で相手のことが見えても本心は見えてきません。
そして言葉を積み上げていっても、積み上げた下の層にある言葉たちに価値はなくなるのでしょう。
だから相手を確かめるための相互通貨を「温もり」と表現しているのだと思います。
相手なしでは温もりは感じられない
君が そこに居ないと気付いたら とにかく探すだろう
「そこに居る」のに「居ない」と 気付く時もあるだろう
出典: embrace/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
この「温もり」という相互通貨が厄介なのは「好きなときに換金できない」ことです。
まず相手がいないことには温もりを感じることはできません。
または一緒にいるのに体温を感じられないときもあります。
「心ここにあらず」という状態のように需要と供給のミスマッチが起こりやすいともいえるでしょう。
唯一信用できるもの
この眼が視⼒を失くしても 僕は君を⾒るだろう
体中の細胞 フル動員で 君を⾒るだろう
出典: embrace/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
ここに「温もり以外信じられない」という心境に至った経緯が詰まっているのではないでしょうか?
Wikipediaからの引用でも、藤原さんの視力低下があったと記載がありました。
この歌詞を文字通りに捉えることもできます。
一方で「見えるものを信用することに疲れた」と言い換えることもできるでしょう。
その結果「温もり」だけで相手を判断しようと決めたと考えることができます。