呼吸の⾳がする 柔かい匂いもある
全てこの⼿のひらに 集めて閉じ込めるよ
出典: embrace/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
この「温もり」は相手の体温だけでなく、五感を通じて感じ取ろうとしているのでしょう。
ちなみに相手の真偽を見極めるのに「メラビアンの法則」という有名な研究があります。
この研究は好意・反感などの態度や感情のコミュニケーションについてを扱う実験である。感情や態度について矛盾したメッセージが発せられたときの人の受けとめ方について、人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかというと、話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合であった。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/メラビアンの法則
この引用では「聴き手が相手を判断するときに何を重視するか」という結果を述べています。
しかし「embrace」の曲では「肌感覚というアンテナを張って相手と向き合いたい」と考えたのでしょう。
いつか答え合わせをしたい
腕の中へおいで 隠した痛みの
その傷⼝に 触れてみるよ
時間の無い部屋で 理由も忘れて
確かなものを 探しただけ ⾒つけただけ
出典: embrace/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
ここで「後悔という傷口」の手当てをしようと言っているのではないでしょうか?
体の傷も早めに治さないと回復に時間がかかってしまいます。
同じように心の中に負った傷も放っておくと悪化してしまうでしょう。
そして体の傷とは違って心の傷は傍から見えにくいのが厄介だといえます。
だから「そろそろだと思ったときにくればいい」と思っているのでしょう。
相手は寒さと闘いながら答えを出すために自問自答していたはずです。
この宿題に期限はなく「自分が納得いくまでが納期」ともいえるでしょう。
2人の答え合わせはいつになるのかわからないけれど、いつかその時は来るだろうと予感させます。
お互いの痛い部分に触れるように
腕の中へおいで 醜い本⾳を
紡いだ場所に キスをするよ
命の無い世界で 僕と同じ様に
⽣きてるものを 探しただけ
出典: embrace/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
筆者の解釈では「キス」は比喩として考えます。
つまり「あのとき受け入れられなかった価値観に触れてもいいかな」と心境が変わったのではないでしょうか?
そしてここで出てくる「命」とは「この世に正解なんてない」という気付きともいえるでしょう。
「命=正解」があるかないかを考えるより、相手の体温を感じるかどうかを考えたいということかもしれません。
この歌詞から「相手の価値観に体温はあるのかどうか」をこれから確かめようと一歩踏み出したのでしょう。
俺たちだけの答え
腕の中へおいで 怖がらないでおいで
⽣きてるものを ⾒つけただけ
確かなものは 温もりだけ
出典: embrace/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
相手が考えている間に主人公自身もいろんなことを考えたのかもしれません。
そこで出した正解が「温もり」だったのでしょう。
最後に
藤原さんはインタビューで「この曲は残酷だ」と語っています。
それはある視点で見たら「助けられるのにあえて助けない冷たい人を歌った曲」と捉えられるでしょう。
しかし「相手を尊重していつまでも待っているという優しさ」と考えることもできます。
このように聴き手や相手に「答えをゆだねること」を曲にしたのが残酷だと表現したのかもしれません。