4.「記念撮影」
静謐でありながらヘヴィ
2017年7月5日発表、BUMP OF CHICKENの通算9作目の配信シングル「記念撮影」。
静謐な歌い出しが印象的でしょう。
かなり抑制された演奏とよく練られたアレンジになっています。
途中からビートが鳴り響くのですがこの音が非常にヘヴィです。
静謐でありながらヘヴィというのは彼らの新しい一面かもしれません。
重いサウンドの中で歌っているのは道に迷うふたりの心境というものです。
ここで爆発するのかと想像する箇所でも弾けません。
静謐な印象は最後まで持続するのです。
彼らもベテランの域に達して、抑制という表現方法を骨の髄まで浸透させたことに驚きます。
道に迷うのは普通のことだから
迷子のままでも大丈夫 僕らはどこへでもいけると思う
君は笑っていた 僕だってそうだった 終わる魔法の外に向けて
今僕がいる未来に向けて
出典: 記念撮影/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
クライマックスの歌詞から抜粋しました。
道に迷っていてもふたりに慌てている様子はありません。
むしろ迷子であることがスタンダードじゃないかという開き直りさえ感じられるのです。
何よりも大切な価値というものは僕と君が笑っていられる幸福感にあります。
多少、道に迷っても笑顔があれば心配することはないねという思いを歌うのです。
ミラクルのような季節はいつか終わるかもしれません。
しかしふたりの未来はそもそも終わるミラクルの向こう側にあるといいます。
ずっと迷っているかもしれない。
しかし笑顔があるうちはふたりに心配など要らないのです。
5.「ジャングルジム」
誠実な弾き語りに酔う
既発表曲が多いアルバム「aurora arc」ですが、この曲はアルバム・オリジナルの楽曲です。
先ほどの「記念撮影」の静謐な余韻を受け継ぐような弾き語りになります。
藤原基央がギター一本だけで表現しながら歌うとき、他のメンバーは沈黙という演奏をすると彼らはいうのです。
幼い子どもの頃、ジャングルジムで遊んだ記憶を大人になってから回想するという設定の歌詞になっています。
子どもの頃の記憶への回帰
ここまでおいでって言ったのが 遠い昔の事になって
あの日遊んだ友達の 名前も怪しくなってきて
どんな時でも笑えるし やるべき事もこなすけど
未だに心の本当は ジャングルジムの中にいる
出典: ジャングルジム/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
子どもの頃の思い出の回想なのですが、一方でいまの僕の孤独や切なさも同時に滲んでくるのです。
生活が本当に充実しているのならば子ども時代の遊具の中に自分を探したりはしません。
また僕は子どもの頃からすでに孤独を深く愛していたと思わしき描写もあるのです。
ロックスターの藤原基央にもこうした側面というのがあるのでしょう。
望むものは手に入れたように見えるのですが、どんなに頑張ろうとも子どもには戻れません。
いまもそれなりに愉しくはあっても、無邪気に遊べていた時代に戻りたい。
プレッシャーのもとで生きる現代社会の大人の心情も似たようなものがあるはずです。
6.「リボン」
徐々に熱を帯びてゆく
2017年5月1日発表、BUMP OF CHICKENの通算8作目の配信シングル「リボン」。
2曲ほどかなり静謐な楽曲が続きました。
この「リボン」も最初のうちは似たようなテンションというものを感じるでしょう。
しかし楽曲が進むうちに熱のようなものが湧き出てくるようになっています。
こうした楽曲の並べ方には相当に慎重なディスカッションをしたのかもしれません。
アルバム全体が見事な構成になっています。
何ともいえない温かい気持ちになれる名曲といっていいでしょう。
自覚してつないだ絆
意地や恥ずかしさに負けないで
心で正面から向き合えるよ
僕らを結ぶリボンは
解けないわけじゃない 結んできたんだ
出典: リボン/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央