それでも愛されたい
外の景色に憧れる
ひとり繭の中 学びつづけても
水晶の星空は 遠すぎるの
出典: 聖少女領域/作詞:宝野アリカ 作曲:片倉三起也
張り巡らされた外の世界の間にあるバリア。
それを「繭(まゆ)」として表現しています。
繭の中で育ち続けるうちは、外の美しい景色を知ることもできないでしょう。
ここでは外の世界に焦がれる気持ちを読み取ることができます。
最後まで愛し抜いてほしい
まだ触れないで その慄える指先は
花盗人の甘い躊躇い
触れてもいい この深い胸の奥にまで
届く自信があるのならば
出典: 聖少女領域/作詞:宝野アリカ 作曲:片倉三起也
好意を向けてくれる男性との距離感が少し縮まった気がしますね。
男性に「触れないで」という言葉を発するのは、触れたら壊れてしまうのではないかという「恐怖」から。
「花盗人」は文字通り花を盗む人のこと。
時に花の部分だけへし折って強引に奪ってしまいます。
つまり、男性が少女の心に咲く美しい花を盗もうとしている…心を奪われてしまうという意味。
後半では少女が条件付きで触れることを許可します。
それは「手を出したからには最後まで愛し抜くこと」です。
中途半端に花をむしり取るように立ち去るのではなく、しっかりと向き合ってほしい。
花だけではなく葉、茎、根付いた大地…。
少女の心の奥深くまで入り込んで支えてほしい。
そんな願いが込められているのです。
「王子様」なんていない
白馬の王子様なんか
信じてるわけじゃない
出典: 聖少女領域/作詞:宝野アリカ 作曲:片倉三起也
外の世界に対して固く扉を閉ざしてしまった少女。
おそらく今までに何人もの男性が好意を向けるも、恋が実らなかったのでしょう。
決して「少女の理想が高い」というわけではありません。
特別なものなど欲していないのです。
ただ、心の底まで愛し抜いてほしい。
中途半端に触れて傷つけないでほしい。
そんな気持ちが男性を遠ざけているだけなのです。
想像ですが、この少女はとても美しいのではないでしょうか?
男性の衝動的な興味に「自分が求める愛」がないことを見抜いている気がしました。
一人消耗していく少女
孤独に耐える
罅割れた硝子匣に 飾られた純潔は
滅びゆく天使たちの心臓
また明日も目覚めるたびに 百年の刻を知る
眠れない魂の荊姫
出典: 聖少女領域/作詞:宝野アリカ 作曲:片倉三起也
「百年」という表現は「ローゼンメイデン」の物語に基づいたものです。
登場する人形たちは何百年という時を経て存在してきました。
死ぬこともできずに出会いと別れを繰り返す…。
自分よりも寿命の短い人間は先に死んでしまいます。
そんな中で次第に心が凍り付き、誰かと親しくなることに違和感を感じるようになったのかもしれません。
身体は何度も寝て起きてを繰り返しているのに、朽ちて死ぬことはできない。
それを「眠れない」と表現しているのでしょう。
この表現には「孤独」を一人で耐えている印象を受けます。
痛々しい描写
くい込む冠 一雫の血に
ああ現実が真実と 思い知るの
出典: 聖少女領域/作詞:宝野アリカ 作曲:片倉三起也
とても印象的な表現ですね。
「冠」とは高貴な女性が頭に被っているものですね。
それが食い込む…。
これは「聖域」のバリアがさらに強力になるという意味ではないでしょうか。
つまり、人を遠ざけようという心情がさらに深まっているということ。
食い込んだ「冠」から滴る血は、心が限界を迎えて傷を負っているという描写。
強がってみせる表面とは裏腹に心はズタズタに傷ついているのです。