そもそも「蝉時雨」ってどういう意味?
「蝉(せみ)」+「時雨(しぐれ)」で「蝉時雨」という言葉があります。
時雨とは、秋の終わり頃から冬の初め頃にかけての、降ったり止んだりと通り雨のように降る雨のことです。
「時雨」という言葉が冬の季語なのに対して、「蝉時雨」という言葉は夏の季語です。
皆さんは「夏」といわれると、どのような音を思い浮かべますか?
ミンミン、ジリジリ、シャアシャアなどと元気に鳴くセミの声を想像なさる方も多いのではないでしょうか。
「蝉時雨」は、そんな非常に多くの数の蝉が一斉に鳴く声を、時雨の降る音に見立てた言葉です。
この意味から、今回ご紹介する楽曲が「夏」をテーマにしたものであることが分かります。
蝉についての歌なの?
この曲名で「え?蝉についての歌なの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしこれはあくまでも比喩表現であり、蝉について熱く語り尽くす昆虫ソングというわけではありません。
それでは、これからこの歌詞の解説と考察を始めていきます。
この「蝉時雨」の音の正体を知れば、夏の甘酸っぱく切ない、大切な想いが伝わってくることでしょう。
また、この曲にはココロオークションの哲学のようなものも強く含まれており、そちらも紹介しております。
この記事によって、その断片を感じていただけると幸いでございます。
夢と現実を行き来してまどろむ
前半の歌詞では、何気ない日常と、そんな中でふと浮かぶ理想や夢が語られます。
皆さんもこれまでに、何も考えていないときに「もし〇〇だったら…」と想像したことはありませんか?
そのような場面を思い浮かべながら、解説をご覧ください。
今作品の主人公も、空を見上げることで視界に入る空間によって、夢の世界へ誘われます。
雲、風
雨降りそうな空を見上げては 浮かべた夢
僕らは今、風を待っている あの雲揺らせ
出典: 蝉時雨 /作詞:粟子真行 作曲:粟子真行
夕立などの通り雨が多い夏。
そんな夏の雲の代名詞ともいえる入道雲は、立体的で面白い形をしていることがあります。
空を見上げると、広大な青い空と荘厳な白い雲のコントラスト。
雲は上昇気流に支えられ、季節風で流されていきます。
このように雲からは、空気の流れ、すなわち風や気流が連想されます。
風があるならば、飛べるならば
誰もがみんな空を飛びたいと
思ったこと 一度はあるだろう
そんな事ふと思い出して 時間は止まって
気付けば雨、雨
出典: 蝉時雨 /作詞:粟子真行 作曲:粟子真行
鳥の中には、季節に応じて渡りを行い、生活場所を変える種類もいます。
鳥は風を利用して自由に大空を羽ばたき、飛びます。
「風が吹いている今、もしも自分が飛べるならば一度飛んでみたい。」
「遥か上空から見える光景は、どのような刺激を与えてくれるだろう?」
「もし飛んだとして、目的地も決めていないのに何処へ向かって行くのだろう?」
時間が止まったような感覚の中、主人公は夢を想い描きます。
しかし実際に時間は進んでおり、気付けば雲は自分の真上にやってきています。
そしてそのまま雨に打たれ、濡れている自分自身。
濡れた感覚やその雨の音で、現実に引き戻されます。
違和感
退屈と夢を転がして過ぎた時間で
誰かの声 微かに聴こえた 気がした午後
出典: 蝉時雨 /作詞:粟子真行 作曲:粟子真行