愛の両面
楽曲「それを愛と呼ぶだけ」は、2020年2月21日にリリースされました。
ドコモの公式YouTubeチャンネルでは、Web動画つきで曲を楽しむことができます。
一見温かそうですが、この曲はただ愛の素晴らしさを歌うだけではありません。
愛には切なさも含まれているのです。
曲を通して、歌の主人公は「貴方」への想いを歌っています。
どうやら現在、主人公と「貴方」は一緒にはいないようです。
破局してしまったか、あるいは「貴方」と死別してしまったのかもしれません。
離れることは寂しいものですが、主人公が抱く愛情は変わらずそこにあります。
穏やかな回想
大切な「貴方」
貴方の言葉が 貴方の記憶が
わずかな世界を満たして
映画の終わりに数分あるような
心地良い今日だ
出典: それを愛と呼ぶだけ/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
曲は、主人公の回想から始まります。
「貴方」のことを思い出しているようです。
主人公は、自分が生きている範囲を狭く感じていることがうかがえます。
主人公の意識が及ぶ範囲の世界は、広い地球の中のほんの一角。
そこに「貴方」との思い出が満ちているのです。
主人公は、この場に「貴方」がいないことを悲しんでいる様子はありません。
思い出すだけで幸せになれる。
2人の幸せな過去を察することができそうです。
物事の両面
手に取る運命は 手放す運命が
増えていくだけ
そんな小さな綻びに 気づいていたのに
出典: それを愛と呼ぶだけ/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
この世は、大きな2極性を持っています。
寒暖、左右、上下、明暗など。
例を挙げればキリがないほどです。
感情や行動もまた、相反する可能性から逃れることはできません。
すべてのものは変化していきます。
形あるものはいつか壊れ、永遠にそのままであることはありません。
何らかのモノ、人を「素敵だ」と感じられるのは、素晴らしいことです。
ですが、それと一緒に過ごすことを決めた時、1つの可能性が生まれてしまいます。
いつか別れなければならないということです。
お気に入りのモノを、落として壊すかもしれません。
人間関係にひびが入って、離れることを選ぶ可能性もあります。
逆に自分の心持ちや考え方が変化して、相手に魅力を感じなくなるかもしれません。
出会った瞬間は、相手が完璧に思えるものです。
ですが同時に、「相手と別れる」可能性が生まれてしまいます。
別れの瞬間がいつ訪れるかは分かりません。
ですが何らかの形で、必ず関係が変化してしまうことは避けられないのです。
「愛」とは何か
心が身体を見落とすまで
明日のない世界へ行くまで
失うひとつを数えること
それを愛と呼ぶだけ
愛と呼ぶだけ
出典: それを愛と呼ぶだけ/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
では、歌の主人公にとって、「愛」とはどういうものをさすのでしょうか。
主人公なりの愛の定義が、上にある歌詞に示されています。
自分が死んでしまうまで、人生の中で変化することに気づくこと。
簡単な言葉で言い換えれば、このようになるでしょうか。
世間一般的に、長生きするのが良いことだとされています。
長寿の人が表彰されているニュースが流れることが良い例です。
しかし、実際に長寿の方々に話を聞くと、必ずしも幸せばかりではないと分かります。
家族、知り合い、友人が、次々に亡くなっていくからです。
自分が長生きすればするほど、身近な人が自分より先に亡くなる可能性が上がります。
誰かの死を看取る確率が上がるのです。
人生の中で、変化は避けることができません。
変化し続けることこそが自然な姿だからです。
成長、老い、出会いと別れ、死の全てを変化だと表現することができます。
変化は時に嬉しく、時に寂しいものです。
同時に、別の意味も持っています。
自分が大切に思っているものに気づかせてくれることです。
そもそも興味のないものならば、変化しようが、なくなろうが、感情が動かないでしょう。
気にかけ、大切に思っているものだからこそ、感情が起こるのです。
それが「嬉しい」でも「寂しい」「悲しい」でも変わりません。
自分が何かを失ったと感じる、周りが変わってしまったと感じる。
それは、自分がそれらを愛していたことを知るきっかけになります。
愛は出会いと別れの両方を含んでいるのかもしれません。
悲しみを避けたくて
己の未熟さを思う
貴方の笑顔も瞬きひとつで
見えなくなるくらい未熟だ
出典: それを愛と呼ぶだけ/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ