ALI PROJECTの代表作の一つ
狂気じみた世界感がクセになる
今回ご紹介するのはALI PROJECTの「亡國覚醒カタルシス」。
2006年5月24日にリリースされたこの楽曲は、「聖少女領域」に続く彼らのヒット作品です。
オリコンチャートでは9位を記録。
決して王道的とはいえない独特な音楽性でランキング上位を記録するのは、素晴らしい快挙といえます。
「亡國覚醒カタルシス」はALI PROJECTの中でも特にパワフルなメロディラインが特徴。
神秘性の裏には、狂気じみた闇が垣間見えるのです。
また、歌詞では難しい熟語が多く使われており、意味の解釈は困難でしょう。
しかし、それがベールに包まれたような神秘性と重厚感を生み出しているのだと思います。
何度でも聴きたくなる中毒性を孕んでいるのではないでしょうか。
時折思わず耳を傾けてしまう「インパクトのある言葉」が散りばめられているのも聴きどころですよ!
ALI PROJECT初のMV
なんと、「亡國覚醒カタルシス」はALI PROJECTが初めてMVを制作した作品です。
ALI PROJECTが独特なのは音楽性に留まりません。
CDのジャケット、ライブの衣装、ステージング…そしてMVの映像。
その全てにALI PROJECTワールドが展開されているのです。
そんな彼らの記念すべき1作目のMVを、どうぞご覧ください♪
ダンサーの個性を生かした演出
いかがですか?
「狂気じみた」空気を纏った映像が楽曲の雰囲気と見事にマッチしていますね。
ボーカルの宝野アリカさんの個性、世界感が十分に発揮されています。
ところがそれ以外にも、ダンサーの姿や動きに心を奪われる人も多いのではないでしょうか?
特にスキンヘッドで歪んだ姿勢をした男性。
特殊メイクをしているように見えますね。
悲しみや絶望に満ちた表情を浮かべ、全身の動きで感情を伝えようとしている印象です。
全身白塗りで所々皮膚が「やけど」のようになっている…。
「人間離れしている」という表現がふさわしい気がします。
通常ダンサーは、メインのアーティストを引き立てる役割を担うが多いでしょう。
しかし、この楽曲ではむしろダンサーを前面に出しているのが面白いと思いました。
固定概念に囚われない芸術性を持っているといえます。
十字架の意味
このMVの中では十字架が何度も登場します。
十字架に貼り付けにされる人物は次第に衰弱していき、最後に息を引き取るのです。
これは「罪」や「裁き」を象徴していることが推測できます。
罪を犯した人を十字架に貼り付け、槍などで突いたり、衰弱させたり…。
こうした残酷な処刑は、日本や海外を問わず、古くから多くの地域で行われてきました。
十字架の前で歌い続ける宝野アリカさんは、その現状について訴えかけているかのよう。
特に歌詞では「生死」にまつわる言葉が多く登場するので、印象的ですね。
単純に、ゴシックロリータの衣装に十字架が似合う…という理由もあるかもしれません。
衣装が素敵
MVでは宝野アリカさんが2種類の衣装を身に着けています。
1つ目は西洋の軍服のような、クールなデザイン。
手には「西洋風の剣」を持ち、メイクも血色を抑えた白肌とアイラインの黒が際立っています。
そして2つ目は、それと対比するかのように色鮮やかな和装姿。
インパクトのある赤い生地。
そして、白いカラコンとピエロのような頬の赤いマーク。
こちらは「人形」のような印象を放っているのではないでしょうか。
そして手には「日本刀」を握っています。
西洋、和…いずれの宝野アリカさんも、「凶器」を手に持っているという共通点があるのです。
対極的なファッションの中でも統一感を持たせるのがまた面白いですね。
絶望と苦痛に満ちた今
限界を迎えた心
嘆キノ壁ハ 積ミ上ゲラレテ
愚カノ神ハ 奉ラレル
出典: 亡國覚醒カタルシス/作詞:宝野アリカ 作曲:片倉三起也
この楽曲のなかでも特にインパクトのあるフレーズから始まります。
多くの悲しみや絶望が積み重なり、大きな壁として立ちはだかっている。
その「壁」がこの楽曲ではとある変化を起こします。
そして、「神」を「愚か」といっていますね。
これは「絶対的な地位」を持つ者へ対する不満の表れと解釈できるでしょう。
つまり、民が権力に対して不満を抱え、限界点を迎えた状態という意味です。