Dear…
誰かに手紙を書く。
友達、家族、恋人、その対象はさまざまです。
授業中に手紙を交換していたのが見つかって怒られた…。
そんな学生時代を送っていた方も多いのではないでしょうか。
今はSNSでのメッセージのやり取りが当たり前になり、手紙を書く機会も少なくなりました。
ですがツールが変わったとしても、相手に思いを伝えるということの本質は変わっていないように感じます。
今回解説していくのはシンガーソングライターmiwaの「Dear days」。
手紙を書くときには多くの場合、文章の冒頭に「◯◯へ」「◯◯様」と宛名を書きます。
この言葉の英語にあたるのが、タイトルである「Dear」なのです。
直訳すると<親愛なる日々へ>。
別れてしまった相手との思い出を、手繰り寄せるように振り返る主人公。
失恋を乗り越えて、一歩進もうとする心情が描かれています。
1stアルバム『guitarissimo』に収録
「Dear days」は1stアルバム『guitarissimo』(2011)に収録されています。
デビュー曲「don't cry anymore」をはじめ、数々の楽曲がドラマ主題歌などのタイアップになっています。
今では日本を代表する女性シンガーソングライターへと成長したmiwa。
初アルバムである『guitarissimo』には、20歳だった当時の等身大の思いが詰まっています。
「Dear days」は代名詞であるアコースティックギターの音色を生かした、懐かしさを感じさせるアレンジです。
一聴して彼女だと分かる声は、あでやかでありながら哀愁が漂っています。
思い出の日々
この曲には主人公である“私”と“あなた”の二人が登場します。
二人は以前、恋仲にありましたが、今は別れてしまったようです。
まだ付き合っていた頃、その思い出を振り返るところから始まります。
変わってしまったもの
駅のCDショップがなくなったよ
ふたりでひとつのアルバム聴いたよね
本屋があった場所はコンビニだし
この町も少しずつ変わっていくんだね
出典: Dear days/作詞:miwa 作曲:miwa
思い出の場所、誰しもがあるのではないでしょうか。
楽しかった思い出、嬉しかった思い出、悲しかった思い出、悔しかった思い出…。
その懐かしさは、過去の記憶へとタイムスリップさせてくれます。
二人にも、思い出の場所がたくさんありました。
注目すべきは最後の一行で「も」と表現している部分です。
町の風景以外にも、変化したものがあったのでしょうか。
切なさを感じさせる歌詞が冒頭にあることから、決してハッピーなテーマではないということを予感させます。
本当の気持ち
話したいことは たくさんあるはずなのに
久しぶりに電話しても そんな事しか思いつかない
出典: Dear days/作詞:miwa 作曲:miwa
これまでの歌詞は、二人の電話での会話だったようです。
自分の本当の気持ちを言い出せずにいる主人公。
当たり障りのない話を選ぼうとしていることが伝わってきます。
その裏には、どんな思いがあるのでしょうか。
本当はずっと側にいたかった
あなたは幸せですか? 私はね 大丈夫
さみしさを隠したいから 少し背伸びして空を見上げた
想い出の数で愛をはかろうとしてたけど
大切な事 今気づいたの それが宝物
出典: Dear days/作詞:miwa 作曲:miwa
二人は別れてから永い間、会っていないようです。
別れてしまったことの淋しさと悲しさを悟らせまいと、必死に強がっているように聞こえます。
付き合っていた頃、主人公は彼に愛を求めすぎていたのではないでしょうか。
主人公もそれは自覚していて、別れた原因は自分にあると考えているようです。
私のためにどれだけ時間を割いてくれるのか、尽くしてくれるのか、それが愛だと考えていました。
そして久しぶりに電話をして彼の声を聞き、頭の中で次々と思い出が駆け巡ります。
本当に大切だったのは、あなたという存在そのものだったのです。
一方で気になるのは、二人が電話をしているということ。
もう別れているのにも関わらずです。
「本当はずっと側にいたかった…」、そんな思いが伝わってきます。
別れざるを得なかった特別な事情があったのでしょうか。