ここは劇場街 いくつもの映画を
只ひたすら映しだす 退屈な街 光ばかり目立つ
壁一面の広告の中で
僕はそのひとつを 選びきれず 突っ立ったままいる
繰り返し思い耽けて やっと何か見つけて 辿り着いたところで
それは子供のころに観たものの 只の再上映
出典: 再上映/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
「劇場街」に重なり合う「人生」
いくつもの映画が淡々と上映される劇場街。それは、他人のことに無関心な都会を思わせます。
毎分、毎秒、誰かの人生が始まったり終わったりしながら、それでも自分以外のことには無関心な日々。
情報は溢れているのに、どれを選ぶか決めかねているというのは、心惹かれるものがこれと言ってない、情報過多の現代を揶揄しているようにも聞こえます。
だから「退屈な街」なのではないでしょうか。やっと選び取ったものは、子供のころ観た映画の再上映=自分の中に昔から変わらずあるものでした。
それは、懐かしく大切なものなのか、今となっては色褪せて価値のなくなったものなのか、ここでは定かではありません。どちらの意味にも取れるような気がします。
「そんな歌でも僕は歌うさ 何度でも繰り返し その答えを
たとえ世界が変わらなくとも いつまでも叫ぶよ その答えを」
出典: 再上映/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
サビ部分では、映画の主人公が声高らかに歌っています。「そんな歌」というのは、価値のないもの、世界や時の流れの中にうもれてしまう儚いものでしょうか。
それでも、いつまでも叫ぶというのは、それだけ熱い想いが込められているということですよね。
ここで、子供のころの再上映(子供のころの自分)が「僕」の中で大きくなったように思えます。
ここは劇場街 観客もまばら
それでも狂いなく 演者は歌う 光の向こうで
懐かしいような つまらないような
只ひたすらそれを 薄ぼんやりと観て 時は過ぎていく
ここで生きてる僕は 彼とどう違うのだろう?
何もできないままで やる気も無くただ口を開いて 日々を潰す僕と
出典: 再上映/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
自分への問いかけ
観客がまばらでも構わず上映される映画はつまり、「僕」とは関係なく、機械的に過ぎていく他人行儀な日常のことでしょう。
自分とは関係のないところで世界は回る。そんな世界で漠然と生きている自分だから、毎日が薄ぼんやりと過ぎていくのです。
自分の思いを声高らかに自分の思いを歌い続ける主人公と、漠然と日々を送る「僕」。
一体そこにどんな違いがあるのかという問いは、夢に向かっていた過去の自分と、今の無気力の自分の差を嘆いているようにも聞こえます。
「こんな僕でも風に押されて 何度となく未来へ運ばれてきた
きっといつしか僕に続いて 歌う人へ言葉を引き継ぐため」
出典: 再上映/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
それがどれほどちっぽけなものでも、他人からくだらないと笑われても、未来へ引き継ぐために歌い続ける主人公には、信念があります。
1番よりも力強いメッセージとなって響いてきますね。
やっと映画は終わって 席を立ってなお僕は
彼の台詞がずっと 頭で響く
明日は多分こんな 今日に似ている毎日
悲しくなるくらいに 忘れていく日々で
そうだ僕は生きているんだ
手垢にまみれていようと
出典: 再上映/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
再生の物語
そんな力強いメッセージを放った主人公の声は、映画が終わっても「僕」の頭に響き続けます。明らかにぼんやりと毎日を過ごしていた「僕」とは意識が違います。
今日と代わり映えしない明日が来て、嬉しいことも悲しいことも忘れ去られていく毎日。
そんな世界でも、自分は映画の主人公のように、熱い想いを捨てずに生きていくんだという決意が感じられる歌詞です。
「手垢にまみれていようと」という歌詞は、それがどんなにありきたりなものでもいい、自分の信じた道を進んでいこうという覚悟の現れではないでしょうか。
「再上映」とは、「僕」が自分自身を取り戻していく、再生の物語として読み解くことができますね。
「再上映」のコード譜を紹介
では、「再上映」のコード譜をご紹介します。基本的にコード進行はそれほど変わらないので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
Bbm7/Bbm7/DbonF/DbonF/GbM7/GbM7/Ab7/Ab7
Bbm7/Bbm7/DbonF/DbonF/GbM7/GbM7/Ab7/Ab7
出典: 再上映/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
まずはイントロ部分です。同じコード進行を繰り返すだけなので、比較的シンプルです。
Bbm7 DbonF
ここは劇場街 いくつもの映画を
GbM7 Ab7
只ひたすら映しだす 退屈な街 光ばかり目立つ
Bbm7 DbonF
壁一面の広告の中で
GbM7 Ab7 Db
僕はそのひとつを 選びきれず 突っ立ったままいる
出典: 再上映/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
Aメロ部分も、基本的にはコード進行はほぼ同じです。最後だけ少し違うのがポイントですね。