メンソールの煙草持って
小さな荷物で
楽園に行こう
楽園に行こう
大きな船で
僕らは大事な時間を意味もなく削ってた
“なあなあ”のナイフで
出典: 楽園/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
さて、本題へとまいりましょう。
“楽園”というとどのような場所を想像しますか?
南国?無人島?それとも桃源郷?
実はど頭から矛盾しまくりなんですよね。
メンソールの煙草と小さな荷物で行ける“楽園”。
お金さえあればどうにかなるのかもしれませんが、大きな船で行くような場所にしては荷物が少なすぎる。
何かと適当に済ませ時間を無駄にしていたから、ここはいっちょ楽園に行ってみない?…
やはり、私たちが想像する“楽園”とはかけ離れている気がします。
苦しみも憎しみも忘れてしまおうよ
スプーン一杯分の幸せをわかちあおう
君が思うほど僕は弱い男じゃないぜ
愛と勇気と絶望をこの両手いっぱいに
出典: 楽園/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
ここで隠された意味“ドラッグ”へ繋がる決定的キーワードが登場します。
それは“スプーン一杯分の幸せ”。
スプーンで軽量するあたり、飲む薬ではなさそうですね。
ドラッグまでたどり着くと、小さな荷物でも行ける楽園の意味も理解できますが、なかなか歌詞に使用するにはスレスレなキーワード。
ドラッグを使用する男が強い男とも思えませんけれども…
落ちた精神でトリップするのではなく愛も勇気も絶望も、陰の部分も陽の部分もすべて道連れに飛び立とうとするところが吉井和哉なのです。
楽園への誘い
甘い誘惑
赤い夕日を浴びて黒い海を渡ろう
そして遥かなあの自由な聖地へ
ひとりきりもいいだろうふたりだけもいいだろう
猫もつれて行こう好きにやればいい
いつか僕らも大人になり老けてゆく
MAKE YOU FREE 永久に碧く yeah
出典: 楽園/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
赤い夕日と黒い海。
サイケデリックな風景が見えてきます。
そのサイケデリックな幻覚の先には自由がある。
単独なのか複数なのか、ここの歌詞を全てひらがなで流し込んでおり、ラリった様子を意識したのかと勘ぐってしまいます。
猫をつれて行ってしまうのは可哀想ですが、いらないように感じる言葉で楽曲を飾ることが生々しさを醸し出しているのです。
そして、どんな人間でも逃げることのできない老いと死。
それなら自由にやろうぜ!
前向きに感じていたのはこのあたりのフレーズからでしょう。
碧く、青い僕ら
“永久に碧く”、碧いと言ったら地球を連想させますが、“大人”や“老けていく”などの言葉も考えてみると人間的な“青さ”も含まれているのではないでしょうか。
序盤に登場した“僕は弱い男じゃないぜ”。
“ドラッグを使用する=強いこと”と受け取れたことも、人間的な青さ、未熟さからくる表現なのかもしれません。
人間臭すぎる露骨な格好悪さだからこそ、よりリアリティを感じられます。
THE YELLOW MONKEYは少年性が見え隠れしている楽曲が多いのです。
生を実感したい
ボリュームを上げて命の鼓動が
動脈のハイウェイを静かに駆けぬけてゆく
Ah...
Ah...
Ah...
Ah...
Ah...
Ah...
出典: 楽園/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
ドラッグを使用すると脈拍が早くなるのです。
その研ぎ澄まされて全身で感じる鼓動に、生きていることを実感するのです。
“動脈のハイウェイ”というフレーズ。
最初に書かれた歌詞では“静脈”だったようですが、ここはリリース前にアウトとなってしまい書き換えられたそうです。
確かに静脈だと直球すぎるように感じますが、“スプーン一杯分の幸せ”はOKだったとは…
お偉いさんのさじ加減はなかなか難しいものです。
そしてAh...
楽園へとトリップしていきます…
Ah…
現実逃避と本能のままに
エロスなくしてTHE YELLOW MONKEYなし
君が望むのならば淫らな夢もいいだろう
掃いて捨てるほど愛の歌はある
過去は消えないだろう未来もうたがうだろう
それじゃ悲しいだろうやるせないだろう
出典: 楽園/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
THE YELLOW MONKEY、そしてソングライター吉井和哉、もちろんエロスは忘れません。
ドラッグとエロスはセットにも思えますが、ここはドラッグでなくてもエロスは絡めてきただろうとは思います。
ええ、THE YELLOW MONKEYですから。
では締めくくりの歌詞の内容です。
まだまだ青い自分たち。
愛を覚えてしまったら、淫らな連想だって仕方のないことであり悪ではありません。
そして、これまで積み重ねてきた過去たちは一生消えることはない。
両手に抱えた中の絶望、苦しみや憎しみ、そんな経験続きであったら未来に対しても疑心暗着になってしまいます。
そんな暗い部分ばかりの心配をしていたら人生もったいないと思いませんか?