それまでは 心の中
小さなロウソク 大事に灯し
夢で手をつなぎ 一緒に眠ろう
出典: 夜の淵/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
日が昇るときの感動的な景色を幾度となく見てきた人々は、必ずまたその光景に出会えると信じています。
それこそが希望です。
人ひとりの希望なんてちっぽけなものかもしれません。
誕生日ケーキに立てる細いロウソクの炎にも満たないかもしれませんが、大きくても小さくても希望です。
燃えている花火から別の花火に火を移すように、誰かの希望は誰かの心に火を灯す力を持っています。
「一緒に朝を待とう」「隣にいるよ、大丈夫だよ」と誰かを思いやった瞬間、希望の炎が相手の心に移るのでしょう。
人は誰もが希望を抱き、希望を与える力を持っているのではないでしょうか。
天体に勝っている
あんなに近くで光る 隣同士の星よりも
僕らは ずっと近くで 息をする
出典: 夜の淵/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
暗い町で唯一明るい星。ふたつ並んでいる星はお互いを照らし合うように輝いています。
お互いの光がしっかり届いているように見える星たちですが、実は気が遠くなるほどの距離を隔てています。
人間は、星のように輝いて見えることはありません。すぐ隣の誰かを照らすことはできないでしょう。
しかし、すぐそばにいることでお互いの希望の光を見ることができます。与えることもできます。
運命めいて結ばれた あの美しい星座よりも
僕らは ずっと近くで 想いあう
出典: 夜の淵/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
夏の大三角形には七夕の逸話が投影されています。
ベガとアルタイルは1年に1度の逢瀬を待って思い合っている、というストーリーですね。
「一年に一度だけ、七月七日の夜だけ、彦星と会ってもよろしい」 それから、一年に一度会える日だけを楽しみにして、織姫は毎日、一生懸命に機を織りました。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/七夕
確かにふたりはお互いを強く思っているのでしょう。しかし会えるのは年1回。
暗い空の下にいる人々は、隣りにいる人の目を見て、声を聞いて、手を握って思いを伝えられます。
星のように強い光を放つことができなくても、すぐ隣にいる人の心に小さな火を灯すことはできるのです。
泣き止んで顔を上げて
度重なる災害によって生きる意味を見失った方も少なくないでしょう。
野田洋次郎の曲が被災者の心に響くのは、分からないことを「分からない」と歌うから。
確実なことを「確実だ」と素直に歌うからではないでしょうか。
何度も崩れる日常
何のため 生まれたのか
わからない 僕たちだけど
出典: 夜の淵/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
豪雪、豪雨、地震などの災害は1度で終わりません。
長い歴史を振り返れば、同じ場所で同じような災害が何度も繰り返されているはずです。
野田洋次郎が一連の曲を作る切っ掛けとなった2011年の震災以降にも、こうしたケースが存在します。
やっと生活を立て直したのに、再びの災害。何のために生きているのだろうかと疑問を抱いた方もいるのでしょう。
大きな災害に遭ったことがない方の中には、生きる目的なんて考えもしないという方もいるかもしれません。
生まれた瞬間から目的に向かっている
涙を流すためじゃ
ないことだけは たしかさ
それだけは たしかだ
出典: 夜の淵/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎