ねぇ 覚えていますか
出会ったあの日を
目で 伝えあえるだけで
分かりあえていた
出典: Break up/作詞:向井太一 作曲:向井太一,CELSIOR COUPE
おそらく、2人が惹かれ合ったタイミングは同時だったのでしょう。
双方の一目惚れ、「この人と付き合うことになるな」と直感したのだと感じる歌詞です。
言葉がなくてもお互いに気持ちが伝わるぐらいに心が通じていました。
しかし今は、会話もままならない。会話がないから心も見えないのです。
出会った頃とは真逆の状況だといえますね。
ねぇ いつからかふたりは
すれ違い始め
まるで見えない崖のように
真っ逆さまに
出典: Break up/作詞:向井太一 作曲:向井太一,CELSIOR COUPE
実は2人の別れの兆候は、今ではなくもっと前にあったのかもしれません。
しかし主人公はそれに気づかないままここまで歩いてきました。
いつから2人が別の方を向き始めたのか分かりません。
ただひとつ分かるのは、お互いが別の道を歩き始めてから今までがあっという間だったということです。
崖ではなく坂を下っていく速度であれば、その途中で「あれ?」と気づいたのではないでしょうか。
崖から落ちていく速度では気づくことができなかったのです。
傷ついてもそのままに
狭い部屋でも 喧嘩をしても
ふたりでなら乗り越えていけた
だけど今は It just hurts a little...
出典: Break up/作詞:向井太一 作曲:向井太一,CELSIOR COUPE
いくら恋人同士とはいえ、狭い部屋で暮らすとなるとストレスは必ず生まれます。
でも今までは相手の気持ちが見えていたからこそ、お互いを気遣いながら生活できました。
信頼し合う2人だからこそ可能なことです。
諍いが起きて傷つけあったとしても、相手の痛みを自分のものとして感じることができる関係性だったのではないでしょうか。
ですから、付けてしまった傷を愛で癒やし合うことで乗り越えてきました。
そして今、主人公は少しだけ痛みを感じています。
傷つけあったわけでもないのになぜか傷がついていて、その傷は癒やされないまま空気にさらされているのでしょう。
癒やしてくれる人がいないことを実感した瞬間です。
このときに、break upを決意したのだと感じます。
このあと冒頭のサビが繰り返され、改めてbreak upへの流れが歌われます。
心に気づいてほしかった
あっさりと別れを決めたような描写の主人公。
しかし実際は、相手に対する強い想いを抱えていたのです。
好きな人を好きなままでいたい
ずっとこういうものだと
思っていたけど
自分を騙し続けるなんて
出来ないよね
出典: Break up/作詞:向井太一 作曲:向井太一,CELSIOR COUPE
恋人という関係は、常に順風満帆とはいきません。
恋人といえど他人同士、ほんの些細な考え方の違いから背中を向けることもあるでしょう。
そんな時期を「倦怠期」と呼んだりします。
こうした浮き沈みはどんな2人の間にも訪れるものなのだと、主人公は自分を納得させようとしていたのでしょう。
初めは自分に「言い聞かせていた」だけだったはずです。
しかし徐々に無理が生じ、自分に「嘘をついている」ことに気づいてしまいました。
自分につく嘘は、自分にバレないはずがありません。
まるでひとり芝居のような状況に嫌気が差したのでしょう。
好きだった人を嫌いになっていく
そんなのは嫌だ
だから勇気を出して今
切り出すから
出典: Break up/作詞:向井太一 作曲:向井太一,CELSIOR COUPE
主人公は、どんなふうに嘘をついていたのでしょうか。
相手がそっけないのは忙しいからだ。会話がないのは疲れているからだ。
でも昨日は仕事が休みだったはずだ。休みだったのに一体どこに行っていたの?
もしかして自分ではない誰かのところに……。
嘘をついて自分を納得させていく中で、相手に対する疑念が膨れていくのでしょう。
相手を疑いつつ好きでいること。これは非常に難しいことです。
このまま自分に嘘をつき続けていれば、相手を嫌いになるのは目に見えています。
できれば相手を好きなまま、幸せなままで終わりにしたいと考えている主人公。
まだ愛している今、break upするのです。
気づかれない痛み
「ただいま」の声が 部屋に響いた
目と目を合わせ 口を開けば
なんだかまた It just hurts a little...
出典: Break up/作詞:向井太一 作曲:向井太一,CELSIOR COUPE