どうせこれは 現実ではないわけですから
あんな事やこんな事をしても? あれ動けない

出典: ゆめなのであれば/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏

どうやら「理性」という偉大な力によって、その行動は阻止されたようです。

欲望に正直になれる夢の中でさえも、理性を保てる主人公

この辺りからも純粋さを感じることができて、卑猥さを感じないのかもしれません。

しかし、「あんなことやこんなこと」は具体的にどのようなことだったのか気になるところですが…

今回は、諸事情により割愛させていただきます。

脳内補完された「君」

主人公が補完した「君」のイメージ

夢と気づいてから、主人公と「君」はいろいろなことをしていました。

その中で、主人公が知らない「君」を脳内で補完しています。

主人公が補完した「君」のイメージを列挙すると下記の通りです。

  • 笑顔
  • 手の感触
  • 歌声

気付きましたか?

そうなんです!ほぼ「君」の全てを補完しています!

それぞれがどのようなシーンで補完されたのかご説明します。

 

まずは「笑顔」

海へと続く坂道を 君と手を繋いで
そんな顔で笑うのか
見た事もないくせに 恐ろしい才能だな

出典: ゆめなのであれば/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏

普通にしている表情から笑顔を想像して再生するという力を「才能」と自負する主人公

これまで「君」の顔をしっかりと目視し、記憶していたことが伺えます。

一歩間違うと犯罪者になる、常識的にはスレスレというかギリギリアウトというか…

しかし主人公はこれまでずっと、ただ見ていただけなのです。

それが良いか悪いかは、この際置いておきましょう。

 

そして次に「手の感触」

月へと続く坂道を 君と手を繋いで
やっぱり柔らかいんですね
触った事ないくせに 凄まじい才能だな

出典: ゆめなのであれば/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏

柔らかかったようです。

しかしここで注目すべきは、2行目で敬語になっているということ。

これは緊張感と罪悪感と背徳感の表れだと思われます。

「才能」による感触の保管はできたとしても、自制心がしっかり働いている主人公。

やはりこの物語の主人公は悪いヤツではないようです。

草原に続く坂道を 君と手を繋いで
そんな声で歌うんだね
聴いた事ないくせに まさに真骨頂だな

出典: ゆめなのであれば/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏

ここまでの流れで、決定的な違和感にお気付きでしょうか。

そのことについて、説明していきます。

現実世界における「君」との距離感

主人公は「君」とどこで出逢ったのか

違和感の正体。

それは主人公と「君」の間にある、とてつもない距離感です。

歌声を補完できるほどには声を聞いたことがあるものの、笑った顔は見たことがない。

しかし、話しかけられることまでは現実にあり得る可能性を感じているような描写もあります…

ということはこの距離感はどういう状況で、主人公は一体どこで「君」に出逢ったのでしょうか。

 

話をすることも顔を確認することもできて声までは聞けるけれども「君」が笑顔になることがない状況。

まず考えられるのは、「君」が何かの店員さんか、何かの受付をしていた場合です。

しかし、いずれにしても「君」は迎える側に位置するので、笑顔にならないのは不自然です。

ここまで主人公が陶酔するのだから、きっと微笑みかけてくれていてもおかしくありません。

無愛想にされているのにここまで陶酔するとは考えにくいですからね。

 

次に考えられるのは、「君」が講師など、前に立って一方的に話す立場だった場合です。

これもつっけんどんに話していたのでは、主人公が惹かれる理由になりにくいと思います。

そうなってくると、残る可能性はふたつあります。

 

まずひとつ目。主人公は「君」に実際会った事がない場合

つまり、仕事の関係で電話やメールで連絡し合うことがあるものの、実際に会うことがない相手なのです。

「君」の顔については、写真で確認していたのだと思います。

同じ会社内なら社内報などの広報誌の写真だったり、他社ならホームページなどに掲載された写真だったり。

そういった場面で写真を確認する機会はあるのではと考えます。

 

ふたつ目。主人公は「君」に実際会っているものの、素顔を見たことがない場合

マスクで常に顔が隠れているなどの理由で、「君」の顔の全貌が見えない状況である可能性です。

これは相手が医療関係者か何かだと考えられます。

常に目元だけは見えているので、そこから隠れた部分を補完していたのではないでしょうか。

歌詞の中でも、主人公が補完したのは笑顔であって、笑い声ではありませんでした。

ということは、楽しそうに話す「君」は確認できる状況なのです。

この点については、ひとつ目の可能性の場合も同様のことが言えます。

 

この歌詞から想像できる「君」との出逢いは、上記のふたつのどちらかだと思われます。

このあと主人公は…

この歌詞において、夢から覚めた主人公が現実にどういう行動を取ったのか描かれていません。

ですので、このあと主人公がどうしたのか考察するとするなら…

おそらく何も行動しないと思います。

それはなぜか。

その理由は、これまでも見ているだけだった存在である「君」は憧れに近い存在だからです。

欲望が丸出しになったとしても一線を越えていかないところからもその心情が伺えます。

これからも主人公は、今後も憧れの存在として「君」との関係を継続していくことでしょう。

しかしそれは切ないことではありません。

今の主人公にとってはそれでいいのだと思います。

そういう一方的な片思いを楽しんでいる時期なのですから。

 

これで、この歌詞の解説を終わります。

まとめ