抽象的な歌詞が心地よい世界地図

東京スカパラダイスオーケストラ(以下スカパラ)が2004年に発表した「世界地図」。

心地よいスカのリズムの上で、抽象的な歌詞が躍動しています。

Aメロ、Bメロ、サビといったJ-POPお決まりの構成を意識していないのも楽曲の特徴です。

世界地図とはいったものの、どんな地図なのかは、かなりフワフワと表現されています。

サックスの谷中敦が作詞を担当し、ドラムの茂木欣一(欣ちゃん)がボーカルを担当。

彼のボーカルもどこか夢見心地でフワフワとしており、歌詞の世界観を押し広げているようです。

この記事では、歌詞がどのような心情やシーンを歌っているのか徹底解釈。

スカパラの世界地図を徹底解剖していきます。

この曲の歌詞を、しんみり肌や耳で感じてみましょう。

2人で過ごす色

どんな夜を過ごしている?

唇から唇へと
こぼれてゆく色に
悲しいから冷たくなる
黒い夜の彼方

出典: 世界地図/作詞:谷中敦 作曲:川上つよし

だれが何をしているのかまったく書かれていないので、正解を出すのは難しいでしょう。

ただ、愛し合っている2人がキスを交わしているということはわかります。

でもそれだけでは、色や夜の意味がみえてきません。

1行目の表現だけを切り取って考えてみましょう。

色は口紅の紅色かもしれません。

それが女性の口から、男性の口元へと移っていくのです。

色を付けられてしまったということでしょうか。

しかし2行目の意味を考えると、口紅の色とは思えなくなります。

口から溢れるといった表現が使われているからです。

もしかして、2人は夜のバーかどこかで、色付きのカクテルでも飲んでいるのではないでしょうか。

カクテルを飲んでからキスをする。

そうすれば、色が移っていきます。

そして3行目から4行目。

何が冷たいのか、よくわかりません。

夜が冷たいのでしょうか。

夜の向こう側は果てしなく、凍えるようだけど、2人の関係はアツアツだ。

そんな対比を見せたいのかもしれません。

唐突に出てきた扉

追い詰められて見えた扉は
いつでもいつまででも
開いてる だから

出典: 世界地図/作詞:谷中敦 作曲:川上つよし

具体的に誰が何をしてるかわからない表現は、どんどん続きます。

どんな扉なのでしょうか?

1行目の表現から察するに、逆境や苦境の中ではじめて出現した扉のようです。

そう考えると、新しい道に行くための扉かもしれません。

歌詞の主人公は、なかなかその扉を開けないのでしょう。

扉を開き別の道、新しい道に進む勇気が湧かないのかもしれません。

苦しい状況にいながらも、いつもとまったく違う世界に飛び出すのは怖いのでしょう。

辛くても、なかなか現状を変えられない。

それが人間の常かもしれません。

しかしそこを乗り越えてこそ、世界地図が描ける。

この楽曲はそんなメッセージを送っているのかもしれないですね。

額面通り、世界を航海して回れ!というよりは、心の地図を描け!といっているのです。

そう捉えると、日常のさまざまな場面で、心の世界地図を描くきっかけはありそうです。

例えば、バーで大切な人と過ごす時間に、プロポーズなどを切り出す。

そんな行動で、自分の中の地図が広がるのでしょう。

鳥は何を意味するのか

意味深な鳥が出現

絵の中から逃げ出してく
眠り醒めた鳥は
誰かの夢見つけたいと
あてどもなく飛んだ

出典: 世界地図/作詞:谷中敦 作曲:川上つよし

男女のカップルが想起される場面とは、まったく違うシーンに切り替わったようです。

でも、男女がいるバーかどこかにその絵が掛かっているとも考えられるので、断定はできません。

ひとまず、男女のことは置いておいて、絵について考えてみましょう。

この鳥は、静止画の中に閉じ込められていたと仮定します。

窮屈に感じていたのかもしれません。

退屈な静止した世界

そこから広大な場所へと飛び出していきたい。

そういった考えが積もり積もって、鳥は目を覚ましたのではないでしょうか。

鳥も、絵の外に飛び出して新たな地図を描くわけです。

自分自身の中で新たな世界が広がれば、地図も広がっていく。

曲が進み、歌詞が重なっていくごとに、世界観がどんどん深みを増します。

本当に素敵な楽曲ですね。

なぜ他人の夢

しかし、3行目から少し意味深になっていきます。

なぜなら、自分の夢でなく、他の人の夢を探すといっているからです。

鳥はせっかく静止画から抜け出したのですから、自分の夢を探してもいいはずです。

それにも関わらず、他人の夢といっています。

きっと鳥は、まだ絵の外の世界について何も知らないのでしょう。

知識ゼロの状態なのです。

だから、まずはゆっくりといろんな人の夢を眺めていたい。

いろんな人の世界地図を見つめていたい。

そのような出発点なのかもしれません。

たくさんの人々の夢に触れ、鳥はいつか自分の夢を描けるようになるのかもしれません。