millennium paradeの【Trepanation】は『ホムンクルス』の世界観を見事に表現しています。
曲は「ドリル音」で幕を開け、曲中も「ドリル音」がリズムを構成する印象的なパーツとなっていきます。
これは映画の冒頭、ドリルで頭蓋骨に穴を開けるトレパネーション手術のシーンとシンクロしたアレンジです。
サイケデリックなサウンドと多様なボーカルエフェクトは映画の持つ奇妙さを引き立てます。
物語に寄り添った歌詞
サウンド同様、Friday Night Plansによる歌詞も『ホムンクルス』に寄り添った内容となっています。
millennium paradeの楽曲はほとんどが英詞であり、【Trepanation】も英詞です。
語り手は誰?
冒頭の歌詞
Take it or leave it
We can’t be too slow
Make a deal
You’ll see what’s in you
出典: Trepanation/作詞:Friday Night Plans 作曲:Daiki Tsuneta
dealは「取引」を意味します。
what's in youは直訳すると「あなたの中にあるもの」ですが、ここでは「あなたの正体」と訳してみます。
応じるのか去るのか のんびりはしてられない
取引をしようよ あなたの正体がわかるよ
出典: Trepanation/作詞:Friday Night Plans 作曲:Daiki Tsuneta
この冒頭の歌詞にはどのような意味があるのでしょうか。
医学生「伊藤学」
『ホムンクルス』には綾野剛演じる主人公「名越進」の他にもう1人重要な登場人物がいます。
それは成田凌演じる奇抜な装いをした医学生「伊藤学」です。
伊藤はトレパネーション手術を施す相手を探していました。
そして見つけたのが記憶を失い車上生活をするホームレス、名越です。
伊藤は70万円の報酬と引き換えにトレパネーション手術をさせてほしいと取引を持ちかけます。
名越は取引に応じ、他人の深層心理を見る能力と生きる目的を得るのです。
冒頭の歌詞は「伊藤が名越に取引を持ちかける場面」を歌っていると考えられます。
記憶を失った名越に「自分の正体がわかるかも」と誘っているのです。
つまりこの【Trepanation】の歌詞の語り手は伊藤ということになります。
伊藤の深層心理
トレパネーションにより名越は「他人の深層心理やトラウマが具現化したイメージ」を見る能力を得ます。
その能力を持って心に闇を抱える人達と関わっていくわけですが、実は伊藤もまた心に闇を抱える1人です。
伊藤目線で歌われたこの【Trepanation】では伊藤の抱えるトラウマや苦悩について多く歌われています。
Can’t call your name without crying
I’m wading through this river
出典: Trepanation/作詞:Friday Night Plans 作曲:Daiki Tsuneta
wadingは「水の中を歩く」という意味であるwadeの現在分詞形です。
涙なしであなたの名前を呼べない
僕はこの川を歩いている
出典: Trepanation/作詞:Friday Night Plans 作曲:Daiki Tsuneta
「あなた」との間に何かしらの問題があるようです。
歩きづらい川の中を歩くという表現は苦悩の道の最中であることを表しています。
I can’t let go of my pain, away
My dear, my pain
出典: Trepanation/作詞:Friday Night Plans 作曲:Daiki Tsuneta