冒頭から見直してみる

本当に亡くなったのは誰?

冒頭、告別式へ参加していたシーン。

先程は、亡くなったあいつの告別式だと解説しました。

しかし、もしこれが僕と君の告別式だったのだとしたら…?

僕と君が、告別式を終えて外に出てきたあいつの様子を見降ろしているのではないしょうか。

僕と君を失ったあいつは、想像以上にケロッとしているように見えています。

そんなあいつがどこに向かって歩き出したのか、僕と君にはわかっていました。

それが3行目にある場所。

きっと生前、3人で大冒険の計画を立てていたのでしょう。

次に虹が出たら、その両端を見に行こう!と。

10代らしい好奇心と行動力から生み出された計画は、もう叶わないように思えました。

しかしあいつは違った。たとえ1人になろうとも、その計画を達成すべく歩き始めていたのです。

そんなあいつの様子を、僕と君は遠くから見守っています。

大人になれない理由

このまま僕等は大人になれないまま
しがみついて忘れないんだ

出典: 漂流教室/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸

先ほど紹介したサビの歌詞では、こんなことを訴えかけていましたね。

10代で死んでしまった僕と君。2人の時間はそこから進むことがありません。

毎年誕生日がきたとしても、もう年齢を重ねることはできないのです。

大人になっていく同世代の仲間たち。

彼らと同じように記憶を積み重ねられないからこそ、生きていた10数年の記憶にすがるしかありません。

そう。一生忘れたくないものとは、3人で一緒に過ごした10代の日々の思い出

その事実を理解した君は、自分が生きていた世界をなつかしんで涙をこぼしているようです。

はやく はやく こっちにおいでよ
君と僕は一生の友達なのさ

出典: 漂流教室/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸

君が笑っていた頃と決定的に違うこと。

それはもう3人で遊ぶ事ができないという残酷な事実があることです。

僕は理想と現実のはざまで苦しんでいるのかもしれません。

あいつには生きてほしい。そう強く願っています。

でも君にも笑顔でいてほしい。同じくらい望んでいることでしょう。

だからこそ迷いながらも、歌詞に綴られているような気持ちを訴えているのです。

懐かしい日々

校舎の窓からUFOを見た
リレーのバトンを落としても走った
あの娘の横顔を何度も何度も授業中ぬすんでみたかった

あの夕焼けが沈むまえに自転車で競走さ
この坂道を登りきれなかったら百円な
今まで出会えた全ての人々に もう一度いつか会えたらどんなに素敵なことだろう

出典: 漂流教室/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸

僕と君がすがっている、10数年間の思い出が並べられています。

ただ見てわかる通り、めったに経験する事ができないような貴重な経験、というわけではなさそうですね。

どれもが何気ない日常の1コマでしかありません。

しかし僕と君、そしてあいつにとっては、この何気ない日々こそが宝物でした。

その事実に気が付けたのも、僕と君があいつを残して命を落としたから

死んでしまって初めて気が付く、日々の大切さ…。なんとも皮肉なものですね。

新しい思い出を積み重ねられない天国で、僕はただ過去の思い出やそこに登場する人たちのことを想っているのです。

この楽曲が教えてくれたこと

このまま僕等は大人になれないまま
しがみついて忘れないんだ
君の涙をいつか笑顔に変えてくれ
光る星に約束してくれ
はやく はやく こっちにおいでよ
君と僕は一生の友達なのさ

はやく はやく こっちにおいでよ
君と僕は一生の友達なのさ

出典: 漂流教室/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸

この楽曲が訴えかけていたこと。

それは、この先も永遠に楽しい時間が続くと信じてやまないのような人たちへ向けた、死の身近さでした。

ほとんどの人々は、普段死から切り離されて生きています。

それ故に、人生の大半を何気なく過ごしてしまうことが多いのではないでしょうか。

もう戻ってくることのないかけがえのない時間を、無意識のうちに浪費している人だって多いことでしょう。

そんな人たちはきっと「時間を大切に」なんていわれても、急に意識を変えることなんてできません。

だからこそこの楽曲を作詞した峯田さんはあえて、「人の死」というショッキングな出来事を用いた。

そうすることで時間の大切さを訴えかけたのではないでしょうか。

自分が好きな人たちと楽しく過ごしていた日々。

自分にとって大切な人たちと笑いあっていた時間。

それらは永遠に続くものではありません。遅かれ早かれ終わりがきてしまうものです。

だからこそ当たり前のように思えるその一瞬一瞬を、もっと大切にしてほしい。

この先の人生にとって大切なことを教えてくれる、そんな楽曲漂流教室』をご紹介しました。

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