大きく狂う「マハーバラタ」

まさかの九番目

嗚呼、漠然と運命星
重度に負った喘鳴に
優劣等無いさ回れ踊れ
もう、漠然と九番目が龍を薙ぐ
パッパラ・ラル・ラリ、ブリキノダンス

出典: ブリキノダンス/作詞:日向電工 作曲:日向電工

「運命星」とは自分の定められた運命のようなものです。

幸運な星の元に生まれたとか言いますね。

「喘鳴」はここではブリキのおもちゃが動くときに出る音のことでしょう。

「漠然」とは先ほども紹介しましたが、九番目のアヴァターラは正確には決まっていません

そのことを「漠然」と言い表しています。

「龍」この部分の解釈は、正直かなり難しいです。

「マハーバラタ」では九番目のアヴァターラが竜を倒す場面はありません。

それどころか、物語の原典では九番目は戦いに参加していません。

よってここは完全オリジナルの脚本か、ブリキ人形自体のことだと考えるのが自然です。

後々出てくる歌詞を考えると、龍はパーンダヴァのアルジュナとも考えられます

また、ブリキのことを考えると腕時計などのねじを巻く部分の竜頭も候補です。

今回はこの二つを中心に考えていきます。

「ああ、演者の役割が未だに決まっていない。

ブリキのねじの巻き具合に優劣はない。

さあ、踊れ、戦え。

まさかの九番目がアルジュナを倒した。

しかも自身のねじを巻く部分も切り落とした。」

配役が決まっていなければ物語を正しく演じることはできません。

もしかしたら重要な人物がすでに退場してしまっている可能性もあります。

アルジュナは最後、カウラヴァ側の強敵、カルナを倒す役割のある人物です。

そんな重要人物が倒されてしまっては物語の展開が全く違うものになってしまいます。

過去を捨てよう

さあ、微笑んで急展開 ナラシンハ流体系
積もった信仰 惜別劣等
怨恨 霊堂 脳震盪

出典: ブリキノダンス/作詞:日向電工 作曲:日向電工

「ナラシンハ」は4番目のアヴァターラで、原作の「マハーバラタ」では登場しません。

アルジュナが死んでしまったことで、ブリキたちは焦ります。

なぜなら、アルジュナがいないと物語が成立しません。

ここからブリキたちの「マハーバラタ」は大きく狂っていきます。

「起きてしまったことは、笑って受け入れよう。

ナラシンハの系譜を継ぐものが勝者になった。

今まで崇めてきた神に別れを告げよう。

恨みを忘れ、霊堂を建て、過去を忘れよう。」

アルジュナがいなくなったことで本来の「マハーバラタ」とは全く異なる展開にしなければならなくなりました。

そのため、代役として不死身の存在を倒すアヴァターラのナラシンハが登場しているのです。

アルジュナも不死の鎧をまとうカルナと対峙するため、代役として適任だったのでしょう。

酔って、踊って、崇めて

パラパラ狂え アヴァターラ半酩酊
次第に昏倒 劣悪情動
崇めろバララーマ

出典: ブリキノダンス/作詞:日向電工 作曲:日向電工

「パラパラ」は今までのことを考えると、踊りのパラパラで意味が通じそうです。

「さあ新しい王を祝して踊れ、飲め。

ブリキの人形たちは段々酔って倒れていく。

酔って気分は最悪だ。

バララーマを崇めようではないか。」

再び戦いへ

龍が息を吹き返す

死んでる龍が吼える バガヴァッド・ギーターで
張り詰め心臓 押し引け問答
無に帰す桃源郷

出典: ブリキノダンス/作詞:日向電工 作曲:日向電工

また「マハーバラタ」の内容に戻っていきます。

アルジュナは最終決戦で意気消沈していました。

それは敵側に友と師がいるからです。

しかし、同じく友のクリシュナが説得して、アルジュナは戦う決意を固めます

このときの二人の問答が「バガヴァッド・ギータ―」と呼ばれます。

桃源郷は「クルクシェートラ」のことで、ヒンドゥー教の聖地です。

彼らの最終決戦はここで行われました。

「ここで死んでいたアルジュナが急に息を吹き返した。

彼は友を倒すことを思うと胸が張り裂けそうだ。

クリシュナは彼を何とか説得する。

かくして戦いは始まり、かつての聖地はなくなった。」

アルジュナが生き返ったことで、「マハーバラタ」の物語に戻ることができました。

しかし、アルジュナには心を引き裂かれるほど辛い苦悩の道が待ち受けています。

さらに、最終決戦の地となった聖地は、戦いで荒れ果ててしまいました。

戦いによる別れと破壊を彷彿とさせる歌詞です。

クルクシェートラの決戦

ドウドウ唸れ アヴァターラ封筒へ
クリシュナ誘導 アルジュナ引導
ドグ・ラグ・祝えや

出典: ブリキノダンス/作詞:日向電工 作曲:日向電工

「ドグ・ラグ」と呼ばれる踊りがあるそうです。

「戦争の音が轟轟と唸っている。

ブリキの人形たちは倒れていく。

クリシュナはアルジュナを説得し、かつての友に引導を渡しに行く。

戦えることを踊って祝おう。」

いよいよ戦いが始まり、アルジュナはクリシュナの説得通りに戦い続けます。

アルジュナの活躍なくして、この戦いには勝てません。

彼が戦いを決意したことにより、パーンダヴァが勝利にまた一歩近づいたのです。