ずっと遠くの斜陽から
君の姿を見つけたよ

出典: トイパトリオット/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

斜めにさす陽射しに君が照らされて、美しく浮かび上がっているイメージです。

しかし、あえてここを深読みしてみましょう。

「斜陽」は西に沈もうとしている夕陽のこと。

しかし「斜陽」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、太宰治の文学作品という方もいるのではないでしょうか。

【米津玄師/トイパトリオット】最後には涙があふれる歌詞を解釈!誰もがかつての自分を重ねてしまう名曲の画像

繁栄を極めていた者たちが没落していく様を「斜陽」と表現するようになったきっかけが、この作品です。

米津玄師は宮沢賢治や三島由紀夫などの文学作品から影響を受けていると公言しています。

「トイパトリオット」で使われている「斜陽」という表現は太宰作品を意識したのかもしれません。

遠くから君を見ていたら、少しずつ陰りが見えてきた。幸せそうに見えた君が、段々苦しそうに見えてきます。

「パトリオット」に隠されたもうひとつの意味

もしも君の心を
傷つけるものがあるなら
僕の灼けた体で
それをすぐ殺してしまおう

出典: トイパトリオット/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

愛を抱えて幸せそうだった君の、ネガティブな変化に気づいた僕。

もしそれが他者の手によるものであれば、愛国者である僕は黙っていません。

相手を殺してまでも君を守ると言います。

「パトリオット」はミサイルの名前としても使用されているのをご存知ですか?

他国の弾道ミサイルから自国の領土を守る迎撃ミサイルです。

摩擦熱で灼けたミサイルが、国を攻撃しようとする弾道弾に向かっていき、撃ち落とす。

僕は愛国者であり、愛国者の名前をとったミサイルでもあるのでしょう。

僕は身を挺して君を守るよ、という宣言をしています。

玩具のミサイルでできること

遊びに行こうよ 急いで行こう
君が大人になるそれまでに

出典: トイパトリオット/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

この曲のタイトルは「トイパトリオット」です。「トイ」とは『玩具』を意味します。

それだけではなく『くだらないもの』という意味もあります。

相手を殺すことも辞さないという過激な歌詞から一転、「遊びに行こうよ」。

僕がやろうとしていることは、子どもの遊びのようなものだと、僕自身が理解しています。

玩具のミサイルで相手を撃ち落とす「ごっこ遊び」だと分かっているのです。

しかし、未熟な君はそのことに気づいていません。

君が大人になってしまうと、僕の行いが遊びだったことがバレてしまうかもしれない。

せめてその時が来るまでは、玩具のミサイルで、くだらない愛国心で君を守っていたいのでしょう。

この落書きみたいな毎日が
年老いたその時も変わらずに
褪せた色に続いていけばいい

出典: トイパトリオット/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

ノートの隅に描いたくだらない落書き、近所の塀に石で刻んだ無意味な文字。

計画性を持った作業ではなく、遊びの一環です。君を守る「ごっこ遊び」も同じこと。

もし君が大人になって僕の行いに気づいてしまっても、君を守った事実は消えません。

しかし君が望めば、落書きは消しゴムで消され、塀の傷は削り落とされるでしょう。

時が経って色褪せたとしても、事実を消さないで欲しい

僕の行動を受け入れ、そんなこともあったねと褪せた色を時々見返して欲しい。

そんな意味だと受け取りました。

守るつもりが奪っていた僕

過激な思想で「君を守る」と言っている僕ですが、君はどう思っているのでしょうか。

守ってほしいと、望んでいるのでしょうか。

悲しい声は僕のせいだった

僕は君の友達
君と声を繋ぐパトリオット
息を吹いて陰るパチオから
君の寂しい声を聞く

出典: トイパトリオット/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師

僕たちの関係は友だちで、僕は一方的に君を守っているだけだ。

これは1番で歌われていました。

しかし守っているうちに独占欲が出たのか、無意識がそうさせたのか。

他者から君に向けられる声を「繋ぐ」存在になりました。

「繋ぐ」ということは、繋ぐか繋がないかは僕の決定次第なのです。支配的な立ち位置といえます。

溜め息に支配されたかのような暗い中庭(パティオ)から聞こえた君の声は寂しい声でした。

君のためを思って、君を傷つける存在を排除してきたのに、君はなぜか沈んでいきます。

ずっと傷つけてきた
それしか出来ないパトリオット
溺れそうに伸びるポプラと
君の哀しい歌が鳴る

ラララ

出典: トイパトリオット/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師