メロウなチルアウト曲
「NIGHT POOL」といえば…。
バラエティに富んだKing Gnu(キングヌー、以下ヌー)のなかでもひと際メロウな楽曲です。
そのタイトルどおり(?)ナイトプールに浮かんでチルアウト(まったり)したくなるでしょう。
サウンド面
聴こえてくる順番にサウンドを確認してみます。
まずは井口理(いぐち さとる)さんのボーカルと勢喜遊(せき ゆう)さんのドラムです。
ファルセット混じりの繊細な歌声に寄り添って、ゆったりとしたテンポのビートが刻まれます。
そのうち常田大希(つねた だいき)さんによる不思議な音色の電子音が増えていき…。
重く響きわたるのが新井和輝(あらい かずき)さんのシンセベースです。
このシンベの音色をライブで聴くとド迫力。ずし~んとお腹に響きます。
サウンドはミニマルな現代音楽のようですが、かろうじて歌モノ楽曲になっている感じです。
「1番・2番」とか「Aメロ・Bメロ…」といったJ-POP的な曲構成にはなっていません。
詩的な歌詞
歌詞には、誰かが朗読しそうな短い詩の雰囲気もただよいます。
中身が「●」だけという、草野心平さんの「冬眠」という詩ほど短くはありませんが…。
そんな「NIGHT POOL」に描かれているポエティックな世界観に深く沈み込んでみましょう。
指輪と夢の表す意味
ヌーというバンドは井口さんと常田さんのツインボーカルになっています。
曲によってどちらかがメインだったり、セクションごとに歌い分けたり、ハモったり、様々です。
「NIGHT POOL」は井口さんがメイン、常田さんが少々ハモっているパターンになります。
渋い声の常田さんはどちらかというとロック調の曲でメインボーカルを担当することが多いです。
実は言いにくい話?
指輪を投げて!
遥か遠くへ
出典: NIGHT POOL/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
井口さんのボーカルは美しく、本来、言葉もはっきり聴き取りやすいです。
ところが出だしの一言はあまり明瞭ではありません。
初めて聴くと一瞬「何て言ったの?」と思うのではないでしょうか。
答えは、指輪。
実はこれがこの歌物語の世界観を決定づけるキーワードになっています。
主人公の男性が、誰かに向かって言った台詞のような始まり方です。
その言葉は大きな声ではっきり語るべきことではなく、少し言い出しづらい理由があります。
それでも言葉にした…という流れなので、言いよどむような歌声になっているのでしょう。
ここで「どうして最初の一言から歌詞の状況がわかるの?」と疑問に思うかもしれません。
ランデブー三部作
1. Tokyo Rendez-Vous
2. McDonald Romance
3. あなたは蜃気楼
4. Vinyl
5. 破裂
6. ロウラヴ
7. NIGHT POOL
8. サマーレイン・ダイバー
出典: Tokyo Rendez-Vous/King Gnu
「Tokyo Rendez-Vous」(以下ランデブー)は全8曲入り、ヌー1枚目のアルバムです。
「NIGHT POOL」は7曲目に収録されています。
実はこの最後の3曲が非常につながりの深い歌詞になっているのです。
とくに指輪は6曲目の「ロウラヴ」でも歌物語の世界観を決定づけるキーワードになります。
さらに「NIGHT POOL」に登場する言葉が「サマーレイン・ダイバー」にも出てくるのです。
登場人物も、主人公の男性と指輪をつけた女性の2人という共通点アリ。
「ロウラヴ」もラブソングですが(珍しく?)常田さんがメインボーカルを担当されています。
そして「NIGHT POOL」で井口さんの歌声に変わっても、登場人物の設定は引き継がれているのです。
この3曲をランデブー三部作と名づけてもいいかもしれません。
描かれているのは指輪をつけた女性との恋です。
もしかしたら男性も結婚している可能性があります。
お互いに問題を抱える間柄のラブストーリーです。
こうした「ロウラヴ」という伏線があったうえで、言いよどみながらも放ったのが最初の一言でした。
すでに一線を越えている2人ですが、さらに深みに沈もうとしていることがわかります。
井上陽水をリスペクト
“夢の中へ
飛び込んで”
出典: NIGHT POOL/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta