…なんというか、m.c.A.T節全開です。
「ごきげんだぜっ!~Nothing But Something~」は1998年にリリースされた、DA PUMPにとって4枚目のシングルです。
まあ当時の流れを知っている人ならわかるように、DA PUMPのヒット曲の中でもひときわ異彩を放つというか、独自性ここに極まれりというか…。
J-POPシーン全体を見渡してみても、非常にめずらしい歌詞というか…。
(その前のシングル「Stay Together」は思春期の女子なら感動必至!の、バラードの名曲でしたし…そう!
DA PUMPの音楽って、この後もどんどん洗練され進化していき、アイドルポップの枠をはみ出していくのですが…。
終始一貫して、ダンスミュージックが何だか知らない+クラブなんて行ったことないような人も、決して置き去りにしないとこが良かったんですよね。)
ひょっとしてm.c.A.T本人自体、「ちょっと他の人とは違う歌詞を書いてみよう」とか全く思ってないんじゃなかろうか。
「m.c.A.Tさん、すいませんがもう少し普通の歌詞でお願いします」とか言われても、何を言っているのか全くわからないんじゃないだろうか。
だったら面白いのにな。
ラップのパートはこんな感じです↓
なんてこった かなりはまってる 朝と帰りのラッシュが死ぬほどきらいな俺
そのくせこんな風に ひしめきあうクラブでリズムに泳ぐのがグーッ
もう今週だって月曜以外は通いづめ
汗が気持ちいいってのも本音だけど いっこだけ気になることがある
それがあいつ ほらまたこっち見てる いつもいるんだ必ず目が合うし
ちょっとやばいじゃん チラリ胸にTatto
なのに無視する素振りなんて ごきげんだぜっ!
出典: ごきげんだぜっ!~Nothing But Something~/作詞:m.c.A.T 作曲:富樫明生
「いっこだけ気になることがある」のところ、完全に字余りなんですがもう、そんなんどうでもいいです。
フロウとかライムとかいう言葉で解説するのも馬鹿馬鹿しくなるようなラップ、なのになんだこの畳み掛けるような勢いと説得力は。
思うに、この他では聴いたことのない独自性を、最初は誰もうまく受け止める事ができないのではないでしょうか。
しかし、その圧倒的な説得力というか、ポップミュージックが本来持つ筈の普遍性みたいなものがある事は、嫌というほど感じられる。
誰も、認めないわけには行かない。
だから、思わず笑ってしまうのではないでしょうか?
もちろん面白いだけじゃない。歌もサウンドもクオリティー高く、聴けば楽しくなって、必ずワクワクさせてくれる。
ここには、そんなポップ・ミュージックの理想が詰まっているのです。
音楽面の魅力を解説
J-POPにおけるダンス+ポップのオリジネイター
DA PUMPは、音楽的には1980年代末期から米国音楽シーンのメインストリームとなっていったヒップホップの影響を受けています。
ブレイクビーツ、スクラッチやサンプルの使い方、殆どの曲にラップのパートがあることからも一聴瞭然ですね。
自論になりますが、その他にもNew Jack Swingと呼ばれるブラック・ミュージックの一形態の影響(シングル「C’mon be my girl!」等に顕著)が色濃い。
他にもハウスやテクノ等、クラブミュージック全般の影響を自在に取り入れているようです。
また、ダンスミュージックのスタイルは踏襲していても、あくまでも歌が主役のJ-POPだったということが大きいですね。
曲と詞の独自性においては、2018年の今振り返ってみても、シーンにこんな音楽はないと思えます。
と同時に、現在隆盛を誇っているK-POP勢などアジア産ダンス・ポップユニット全般や、日本では三浦大知さんなどに与えた影響は、じつは計り知れないのでは?とも思えるのです。
意外とバラエティに富んでいる
またハウスやテクノ・リミックスも多くリリースしているし、3rd~4thアルバムでは早くからレゲエに挑戦している曲もありました。
(ケツメイシや湘南の風がメジャーヒットを飛ばすより前の話ですよ!?)
ラップも、KENがメインで担当するようになってからはぐっと精度を増し、さらにカッコ良くなっていきましたね。彼のラップはラガの影響が強いようです。
個人的に興味深かったのは、2001年発売のリミックス・アルバムの事です。
グループは、アルバムの中核を成すはずの名曲「Rhapsody in blue」のリミックスを、なんとあのLee Perryに任せていたのです。
クラブ、ダンス好きの男の子達を体現する存在
収録曲はハウスやトランス風のリミックスが殆どなのに一曲だけ、しかも「Rhapsody in blue」のリミックスをレゲエ・ダブの巨匠に任せるという大英断。
絶対にシラフで作っているとは思えない(すまん、これ以上は言えない)荒唐無稽なダブ・ミックスに、ファンの人は「……なんだこりゃ」と思ったことでしょう。
これ誰得?というか7インチで出さなきゃダメだろ!…Lee Perryを知っている人は大笑いでしたけどね。
つまりは、90年代後半~2000年頃にクラブに通い、どんなスタイルだろうと「面白そう」と思えるものは何でも取り入れる奴ら。
音楽好きの若者達を体現する存在だったのですね。
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