これほどまでに彼のことを愛している主人公。しかしここは少々不吉な展開ですね。
主人公は彼のことが好きだけれど、もう報われないだろうと察しています。
身を引こうというそぶりを見せたのは、やはり自身が抱く嫉妬心の醜さ故なのでしょうか。
毒=嫉妬
毒の花のように咲いてみせるわ
そして返り咲く花となる
出典: JEALOUS/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
主人公はその嫉妬を「毒」に例えました。
そんな毒を孕んだ花はきっと美しくも、どこか危なっかしい雰囲気をまとっているのでしょう。
美しい女性を花に例えることは多いですが、ここでも花は主人公の姿を意味しています。
嫉妬にのまれてもなお抱き続ける、彼への愛の大きさが花になったのでしょう。
しかしその愛には彼女への嫉妬がつきまといますから、「毒」を持っているというわけですね。
しかし気になるのはその表現よりも2行目に続く「返り咲く」というフレーズ。
主人公と彼はかつて何かしら関係を持っていたのでしょうか。非常に意味深ですね。
愛に勝る嫉妬心
もう昔のように笑えなくなった
彼を愛した私ではない
出典: JEALOUS/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
ここへきて主人公はとうとう自分自身が抱く嫉妬心にのみこまれてしまいました。
うまく想いを伝えられなくとも、彼の前では常に最高の自分でいたい。
そんな気持ちで過ごしてきた主人公でしたが、彼への想い以上に本命彼女への嫉妬が募ってしまったのでしょう。
彼のことを考えても、浮かんでくるのはその横で幸せそうに笑う本命彼女の姿。
彼のことを見かけても、探してしまうのは常にピッタリ寄り添う本命彼女の姿。
もはや気になる彼の姿を追いかけているのではなく、彼の横にいる本命彼女の姿を追いかけています。
愛という美しい感情よりも、嫉妬という醜い感情が勝ってしまったのです。
そうなると、主人公はもう彼に近づくことはできません。嫉妬まみれの醜い自分の姿なんて見せられるはずがないのです。
彼目線
彼が忘れられないのは誰?
一度だけ二月のアノ夜に
乱れる人を抱いていた
愛する「貴女」忘れられず
出典: JEALOUS/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
ここの歌詞はこれまでと異なり、主人公が愛した彼の目線が含まれています。
それは3行目にある「貴女」という言葉からも明らかですね。
これは女性のことを指しますから、普通に考えれば彼の本命彼女のことだと考えられます。
しかし彼はずっと本命彼女と一緒にいたはずですから、この表現だと違和感がありませんか?
となると「貴女」とはいったい誰なのでしょう。
貴女=主人公?
冒頭にこんなフレーズがありました。
彼に迷いだしたアノ日から
何故か心が拒絶していた
出典: JEALOUS/作詞:京 作曲:DIR EN GREY
最初は「彼に惹かれつつも、本命彼女がいるからアプローチできない主人公」という解釈をしましたね。
しかしここで「貴女」=主人公だと考えれば、ここの解釈も変わってくるのです。
彼に惹かれはじめた「アノ日」に、彼と主人公はたった1度きりの関係を持ったのではないでしょうか。
つまり彼が思い返していた「アノ夜」が主人公にとっての「アノ日」で、さらに2人が関係を持った日だということです。
そうなると全ての話が繋がってくるでしょう。
主人公は彼と身体を重ねてしまったが故に心惹かれ、想いを断ち切れず、最後には醜い嫉妬心に支配されてしまいました。
一方の彼もたった1度だけの関係が忘れられずにいたのでしょう。
本命彼女がいながら、心のどこかではずっと主人公のことを想い続け、その存在を探していたのです。
つまり彼は主人公と身体を重ねたあの日、大きな愛を感じました。
その愛の大きさ故に、隣に自分を想ってくれる彼女がいてもなお「貴女」を忘れられなくなっているのです。
主人公も彼も心の奥底では相手を想いあっているのに、そこに別の彼女がいるために近づくことができずにいました。
互いの本心に気がつけないまま、すれ違い続けていたのです。