Janne Da Arc「Z-HARD」
1991年に活動を開始したビジュアル系バンド、Janne Da Arc。
ハイレベルな演奏や、ボーカルyasuさんの唯一無二の歌声が非常に魅力的でした。
多くのファンに惜しまれつつ2019年に解散を発表した彼ら。
今回はJanne Da Arcにとってメジャー2枚目のアルバムとなった「Z-HARD」から、この曲を紹介します。
バンド名と同じ、フランスの英雄が主人公
Janne Da Arcというバンド名。
これを聞いて、かつてフランスで大活躍した偉人を思い浮かべる人は多いでしょう。
そう。若くしてフランス軍を率い、イングランド軍に見事勝利をおさめたことで有名な女性です。
まさにフランスの英雄的存在だともいえますね。
(誤解を招かぬよう記しておきますが、Janne Da Arcのバンド名は彼女の名前から取られたわけではありません。)
彼女の存在は当時のフランスにとって、楽曲のタイトル通りまさに「救世主」。
そんな彼女は、若くしてその生涯を終えることになりました。
その生きた軌跡を追いながら楽しめるのがこの楽曲でもあります。
今回はフランスの英雄の生涯に触れながら、歌詞の世界をたっぷりと解説していきましょう。
舞台は1400年代のフランス
戦争真っただ中
咲き乱れる汚れた治安 略奪にただ犯された
血に染まるこの国は神に見放された?
民は飢え病いに倒れ 抗う術さえ失われ
終わらない戦争の戦火に消えるだけ
出典: -救世主 メシア-/作詞:yasu 作曲:yasu
ジャンヌダルクが生まれたのは、1412年。
この時代の彼女の故郷は、現代からは想像もつかない状態に陥っていました。
1行目で表現されているとおり、フランスはイングランドの支配下に置かれる寸前だったのです。
激化する争いの中で、政治や戦争に関係のない多くの人々の命も奪われてしまいました。
2行目にある通り、誰もが孤独で絶望的な気持ちを味わっていたに違いありません。
また3行目にもありますが、争いが激しくなればなるほど民の暮らしも厳しくなっていきました。
ジャンヌダルクの生家も同様で、貧しい生活を強いられていたと伝えられています。
激しい争いに巻き込まれ、さらにフランスという国自体が他国に支配されそうになっている。
生活も苦しくなる一方で…と、当時の人々にとっては絶望的な状態が続いていたことがわかります。
1人の少女が立ち上がる
風が吹き荒れる荒野に立ち 空を見上げる少女が一人
小さな胸に十字を切り
大地に跪きながら くちづけをして呟いた
「私は今、ここに誓う。あの神の名において…」
出典: -救世主 メシア-/作詞:yasu 作曲:yasu
ここでとうとう、この楽曲の主人公が登場します。
1行目で空を見上げている少女。彼女こそ、のちにフランスを救うことになったジャンヌダルクなのです。
2~4行目で彼女が神に祈るような様子を見せているのは、ジャンヌダルクが神の声を聞いたとされているから。
ジャンヌダルクはは12歳の頃、神からのお告げを聞きました。
そこで彼女は神から、フランスの救世主になるように告げられたといわれています。
ここの歌詞は、そのときの様子を表現しているのです。
戦地へと駆け出す少女
ジャンヌダルクが向かった先は…
少女の中に女神を見て 集いし兵が得た希望
友の死を乗り越え目指したオルレアン
出典: -救世主 メシア-/作詞:yasu 作曲:yasu
例えばあなたがもし、10代の少女からこんなことを言われたらどうでしょうか。
「神様のお告げを聞いた。このわたしが国を救う。」と…。
笑い飛ばす人もいるでしょうし、くだらないと適当にあしらう人もいるでしょう。
いずれにせよ、本気で信じる人などほとんどいません。それは遠い昔のフランスでも同じでした。
神からのお告げを聞いたというジャンヌダルクの言葉を、最初は誰も信じようとはしなかったのです。
しかし当時のフランスは戦争真っ最中。世の中は非常に不安定でした。
そんな不安も影響したのか、大きな権威を誇っていた神学者たちがこぞって彼女の言葉を後押しし始めたのです。
それによってジャンヌダルクは、国を守るための兵力を手にすることができました。
2行目最後の「オルレアン」とは、ジャンヌダルクが活躍した包囲戦の舞台となった土地の名前です。
王の命を受けて戦争の第一線に躍り出た彼女は、オルレアンの軍隊に加わりそこで奮闘したのです。
その戦いの様子は、この後の歌詞でも登場しています。