ついに別れのときが来ます。

序盤で「僕」が「君」のことをずっと見ていたのもこのときのために目に焼き付けておきたかったから。

別れは残念ですが人には旅に出る理由があります。

いずれまた再会することもあるでしょうがかつての季節のように分かりあえることはもうないです。

「美しさ」の根拠は一回性の中に根源があります

一回しか訪れないからこそ「美しさ」が秀でるのです。

幸せな日々はやはり貴重なものですから今まさに幸福を噛み締めている方は記憶の中に焼き付けてください。

「みんな」は別れの悲しみを悟られないように相変わらず他愛もないことを喋り続けます。

別れを過剰に湿っぽくする必要はないです。

また何よりもまだこの日々が終わりを告げることを認めたくないのでしょう。

盛んに大丈夫と強がっていたのはこの別れを意識してのことです

いつの日も「さよならなんて云えないよ」

優れた青春群像劇

いつの日か oh baby 長い時間の記憶は消えて
優しさを oh baby 僕らはただ抱きしめるのか?と
高い山まであっというま吹き上がる
北風の中 僕は何度も何度も考えてみる

出典: さよならなんて云えないよ/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二

楽しかった季節の記憶のすべてが後の追想の中で生き残れるわけではないです。

他愛もない記憶や事件性の低い出来事の想い出はやがて忘却の海の中に沈みます

ひとつ大人になれば分かることです。

優しさを捧げあった日々は終わります。

後は手元に残った優しさを拾い上げて大事に抱きすくめるだけの季節が来るのです。

先ほどまで南風が到来して旅立てる一瞬を待ち望んでいた「僕」。

いまは北風の吹きすさぶ中でひとり物思いに耽ります。

楽しかった季節ともうひとつ大人になる新しい季節との間で「僕」は考え続けるのです。

美しい季節はこうして静かに終わります

季節の境目ははっきりとしたものではないです。

大人になったと気付いた瞬間に旧い季節の終わりを確信します。

「さよならなんて云えないよ」はこれほどに切なく愛おしい世界観の歌なのです。

優れた青春群像劇の映画を観たような気分になります。

そして別れって何だろうと自分の人生を振り返るのです。

あるいは美しい時代の記憶がまざまざと甦って「生命の最大の肯定」を見出すひともいるでしょう。

前半は美しい季節のことで後半はその季節との別離が歌われます。

「さよならなんて云えないよ」の歌詞は人生そのものの構造になっているのです。

今まさに青春期を謳歌している人にはあまりピンとこないかもしれません。

それでもいつかこの歌の価値に気づく日が誰にでも訪れます。

私たちが生きることを諦めない限り喜びと悲しみとの交錯にずっと耳を傾け続けたい日が来るのです。

「さよならなんて云えないよ」は人生と青春の日々の縮図

何度も何度もリピートして考え続けてみたい事柄が生まれるはず。

二度と戻らない美しい季節にいる、あるいはかつてその季節の中にいたことの幸運。

その追憶が永遠に心の中を占めることの記憶のメカニズムの不思議さに目を啓くような一瞬の喜びと切なさ。

「さよならなんて云えないよ」を聴いているととても得難い経験をできます。

「オザケン世代じゃないから」といいこの曲を聴かずにいることは不幸です

「さよならなんて云えないよ」は世代を超えて忘れることなく何度でも思い出したい名曲

素敵な曲をご紹介できたことを幸福に想います。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

OTOKAKEで振り返る小沢健二

小沢健二の究極の名作

小沢健二【さよならなんて云えないよ】歌詞解説!あなたも“美しい日”の真っ最中?戻らない“今”を大切にの画像

OTOKAKEには小沢健二の関連記事がたくさんあります。

中でも彼の究極の名作「天使たちのシーン」を解説した記事をご紹介

難しい内容ですが可能な限り真摯に解説いたしました。

ぜひご覧ください。

小沢健二ソロ・デビュー・アルバム「犬は吠えるがキャラバンは進む」に収録された「天使たちのシーン」は13分37秒の大作です。この世界で生きてゆくこととはどういうことなのかを考え抜いた真摯な祈りにも似た曲と歌詞でファンの心を鷲掴みにしました。この曲の歌詞の意味を丹念に紐解いてみます。

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